美人ジャーナリストは虜の身がお好きのようで-第3話
大手新聞社を退職した佐藤郁子はヒマと美貌と豊満な肉体を持て余す、フリージャーナリスト。
恋人の猛のツテを頼り、彼の先輩高見から依頼された仕事。
それは政界の性事情をスクープするための潜入取材、いわば密偵だった。
SM嬢に扮し、裏社会の面々と対峙する郁子だが敢え無く捕まってしまい…。
窮地に堕る郁子だが、秘めたるマゾヒスティックな性癖を存分に満たされる淫靡な調教に加え、政界のプリンスとのハードなプレイに酔いしれる羽目に…。
果たして郁子の運命はいかに?
作家名:邪道
文字数:約1590文字(第3話)
管理番号:k140
第三夜:女スパイは潜入取材に秘所を濡らし…
ふと、郁子は自分が危ない世界に足を踏み入れ、その闇の住人たちの魔手に囚われる、そんな錯覚に襲われた。
緊張に痺れる肉体に、不思議とマゾヒスティックな興奮がズンと脳天から秘所へと一直線に走り、火照りすら沸き起こる。
(ヤダ、私ったら。ドラマじゃないんですもの、危険な目になんて遭うわけないでしょ! …少しだけSMのお相手をするだけ、ホントにそうなんだから…)
郁子は否定して見せるが、この妖しげな地下室に囚われた彼女自身がエロティックな折檻を受け、歓喜のアリ地獄へと突き堕とされる、そんな妄想を抱き始めている。
それが現実になろうとは、郁子自身知る由もなかったが――――。
『華屋敷』は大正時代のバーでも模したような煉瓦と、木製の椅子、薄暗い天井から垂れ下がる電球がタイムスリップでもしたような錯覚を覚えるレトロな飲み屋だった。
店主の柴田は小柄な男だが、獲物を魅入るような眼光の鋭さに郁子はたじろいだ。
が、そこはマスコミ女子だ。
気の強さと、はったりだけは一丁前。
上品さを醸し出す美貌と、柔和な態度で、名刺を差し出した。
「元銀座のホステス…佐藤、郁子…さん、ね。ああ、卜部さんから聞いているよ」
卜部とは、高見が雇った情報屋らしい。
猛には内密だが、潜入に当たって郁子も名前以外、素性を隠している。
マスコミの人間などとあからさまに言えば、潜入取材など成り立たないのだ。
話してみて感じたことだが、大江戸TVの高見はかなり海千山千の人間だ。
いわば本格的に郁子をスパイに仕立て上げ、有名人相手のホステス役として送り込み、為政者のアバンチュールの情報を掴まんとしている様子だった。
(猛がお坊ちゃんで助かったわ。自分の彼女がお水系に扮して潜入取材、なんて知ったら動転するでしょうけど)
大手広告代理店に勤務し、殿様商売しか知らない彼が、高見の紹介した取材の実態に気が付かない状況を心底、有難がった郁子は心の中で舌を出す。
「じゃあねえ、郁子さん。早速だけど」
「はい?」
「パンティ一丁の裸になってもらえるかな?」
聞き返す間もなく、店内の暗がりから現れた男らに取り囲まれた瞬間、郁子は血の気が引いた――――。
「さ、歩け、歩け」
グレーのビキニショーツ一枚の郁子は素足のまま、コンクリート製の階段を下らされていく。
「ああん、放してよッ、何をするの、私はアルバイト・ホステスとして派遣されただけでッ!」
彼女は声を荒げたが、男らは郁子を急かし、かつ乱暴ながらエスコートするように連行して行く。
(もう、いや、マジで捕まっちゃったじゃない!? これから何をされるの、私!?)
郁子は狭い階段を2回転ほどして地下に下り、まるで牢獄の入り口を模したような鉄扉が口を開けた10畳ほどの小部屋に入るよう命じられた。
真正面に鎮座ます赤色のT字型磔板を見た瞬間、郁子は気を遠のかせる。
「ヤダ…磔板とか…拷問でもするつもりなの?」
男らはそれには答えず、郁子の背中を拘束台に付ける。
一人の男がまず、郁子の右手をとってベルト式の拘束具できっちりと結わいた。
左手も同様に、繋ぎ止められてしまう。
見悶えても金属製の磔板が微かに軋み、ぎゅうぎゅうと手首に食い込む革ベルトがいやらし気な音を発するばかりだ。
「ご、拷問とかされても、何もお話しすることがありませんからッ!」
遅れて姿を見せた柴田がほくそ笑む。
「随分、拷問されることに拘るじゃあないか、郁子さん。疚しい部分でもあるのかね? 何かを探ろうとしてやってきたとか?」
郁子はシラを切ったが、すでに自分の素性が露見しているわけではないことを知り、微かに安堵もした。
スパイなどという事がバレては、何をされるか分かったものではない。
思いのほか、大冒険になったと郁子は後悔もしたが、生来の勝ち気で負けん気の強い女らしく、スリルに興奮もしている。
同時に、妖しげな男たちの虜になり、肉体に危機が迫っていることにも妖しげな悦びを感じ始めていた。
(続く)
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