母と子の秘密-第4話
不治の病を抱え、高校休学を余儀なくされ、入院生活を送る17歳の息子。
その時、私はフッと考えたのです。
この子は「女」も知らずに一生を終えてしまうのではないだろうか。それではあまりに可哀想だ・・・そこで、親の義務として、「女」を教えてあげようと決心したのです。
今でも、このことに、私は間違っていたとは思っていません。
作家名:バロン椿
文字数:約2120文字(第4話)
管理番号:k150
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その日も、夜中にふと目覚めると、隣の勉強部屋から、ガサゴソと何かを探す音に続き、スッスッと衣擦れ、そして、「う、う、うぅぅぅ……」と呻くような音が聞こえてきたので、悪いことだとは思ったものの、襖の隙間から覗くと、下半身裸になった由起夫が白い下着を鼻にあて、一心不乱にペニスを扱いていた。思った通り、オナニーだ。
晶子は胸がドキドキして息苦しくなってきたが、息を潜めて見ていると、「恵美子ちゃん……」と、彼女の名前なのかよくは分からないが、そんな名前を呼びながら、グッと強く扱くと、「うっ!」と言う声とともに、ペニスの先から噴水のように白い液体が噴出し、ピチャピチャと音を立てて畳に飛び散った。晶子は「あっ……」と声が出そうになったが、何とか堪え布団に戻り横たわったが、胸の動悸が収まらずとても眠れない。
30分程して隣の部屋の電気が消え、布団に横たわる音が聞こえ、間もなく、すーすーと由起夫の寝息が聞こえてきたが、晶子は目が冴えて朝まで眠れなかった。
翌朝、由起夫を学校に送り出すと、晶子はいつものように勉強部屋の掃除を始めたが、勉強机の下に20センチ四方のお菓子の缶が置いてあることに気が付いた。蓋には「研究会資料」と紙が貼ってあるが、何だろうと思ってそれを開けてみると、ブラジャーにパンティ、キャミソール・・・取り出してみると、それぞれに「コーポ・ジュリアン2階角」、「アンヌ美容室」など、盗んできたところを書いたタグまでつけてあった。
顔に被っていた白い布切れ、こ、これは・・・晶子は元通りにそれらを収め、蓋を閉めたが、手の震えが止まらなかった。
それ以降、缶の中は見ていないが、もう分かっている。休憩室の話、あれは息子の仕業だと。
母のビンタ
その夜はとても静かだった。冬の澄んだ空気、空には雲一つなく、カーテンの隙間から見える月は青白く輝いていた。
どうして、どうして、あんなことをするの?
見つかったら、高校は退学よ。
いや、それどころかここには住んでいられなくなる……
片付けも終え、お風呂から上がった晶子は先程から自問自答を繰り返していた。由起夫は勉強部屋で勉強している。
由起夫は私の宝物、あの子なしでは私は生きていけない……
その時、ボーン、ボーンと時計の音が午後11時になったことを知らせてきた。晶子は残っていたお茶を飲み干すと戸締りを確かめ、意を決して二階に上がっていった。
「由起夫、いいかしら?」と襖を開けると、由起夫は机に向かって勉強していたが、「どうしたの?」と振り向く彼の顔を見ると、決意は揺らぐ。だが、ここでやめたら、この笑顔も幸せな家庭も壊れてしまう。逃げ出したい気持ちを押さえて、「し、知っているのよ」と由起夫の前に立った。
「えっ、何を?」と教科書を閉じた由起夫の顔には笑顔があったが、「か、缶の中身を」と晶子が迫ると、「あっ、いや、こ、これは」と慌てて両脚を閉じて隠した。もう間違いない。「出しなさい!」とその脚を押し退けると、机の下に潜って足元の缶を腕に抱えた。
しかし、由起夫も必死。「やめてよ、お母さんには関係ないものだよ」と、それを取り返そうと慌てて晶子の肩を掴んだ。だが、それは彼女をより感情的にさせてしまい、「な、何が関係ないのよ!」と缶の蓋を開け、中の物を畳の上にばら撒いた。
色は白、ピンク、ブルー、黒、形はオバサンタイプ、レース、紐、Tバック・・・畳に散らばった物を「あっ、ダメ」と由起夫は畳に這いつくばってかき集めたが、晶子は白い一枚を「ここにもあるわよ」と由起夫の前に差し出した。
もはや、言い訳はできない。由起夫は起き上がったものの母の顔をまともに見れない。が、その時、パーン!と晶子の右手が頬に飛んできた。
「ご、ごめんなさい」
頬を押さえ、ようやく母の顔を見ると、とても怖い顔をしていた。
時刻は午後11時半を過ぎ、表通りを自動車が走り過ぎる音以外、何も聞こえない。由起夫は泣き出したくなったが、晶子は何も言わず、散らばっている下着を一枚一枚拾い上げると、それをハサミで細かく切り刻んだ。
「お、お母さん」と母の顔を恐る恐る仰ぎ見ると、「私は何も知らない」と、次々とそれらを切り刻み、布くずとなった物を黒いビニール袋に詰めると、ガムテープでグルグル巻きにしていた。
母と息子の秘密
これで息子が犯人だという物証は無くなったが、これだけでは由起夫が二度とこんなことをしないという確証はない。万が一、再び下着に手を伸ばし、補導でもされたらこの生活は壊れてしまう。別のことに目を向けさせなくては・・・
「ゆ、由起夫、パ、パンツが欲しいなら、お母さんのをあげるから」と、晶子は頬を引き攣らせながら、由起夫に躙り寄ると、「女が欲しいなら、お母さんがいるじゃない!」と押し倒した。
「ま、待ってよ」
思いもしない母の行動に、由起夫は慌てたが、覚悟を決めていた晶子は「黙って」とその口に唇を重ねて塞ぐと、チュッ、チュッ、チュッ、チュッ……と口付けを繰り返す。しかし、道ならぬ道に嵌まることにたじろぐ由起夫は「だ、ダメだよ……」と体を捩るが、後戻りは出来ない晶子は伸し掛るようにして頭を抱えると、浴衣の襟元をグッと広げて、乳房を由起夫に押し付けた。
(続く)
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