母と子の秘密-第1話 2190文字 バロン椿

母と子の秘密-第1話

不治の病を抱え、高校休学を余儀なくされ、入院生活を送る17歳の息子。
その時、私はフッと考えたのです。
この子は「女」も知らずに一生を終えてしまうのではないだろうか。それではあまりに可哀想だ・・・そこで、親の義務として、「女」を教えてあげようと決心したのです。
今でも、このことに、私は間違っていたとは思っていません。

作家名:バロン椿
文字数:約2190文字(第1話)
管理番号:k150

「女」を知らずに死なせない

プロローグ

落ち葉の舞い散る晩秋 、僅か18歳でこの世を去った故唐沢謙一の葬儀が執り行われていた。
唇を噛みしめた詰め襟の学生服姿の男子同級生や、ハンカチを握り締めた赤いセーラー服姿の女子同級生ら長い列を成し、祭壇中央に飾られた遺影を見て、
「何で死んじゃったの」
「謙ちゃん、可哀想」
と、僧侶の低く響く読経の声に混じり、あちらこちらからすすり泣く声が聞こえてきていた。
参列していた親族も「18歳だよ」、「本当。苦しいことばかりで、何も楽しい事を知らずに……」と涙が止まらなかった。
喪主の唐沢義之(よしゆき)は、一人息子を失った悲しみに悄然として、まだ47歳だがすっかり老けてしまったようだったが、隣に座る妻の恵子は泣き腫らして、赤い目をしていたが、「良かったのよ、あれで良かったのよ……」と独り呟き続けていた。

母、恵子の告白

謙一の発病は小学生の時

謙一に心臓の異常が見つかったのは小学2年生の時でした。
学校の定期健康診断で「少し心配な点があります」と言われ、「大きな病院で心臓の検査を受けて下さい」と手紙を頂きましたが、夫の義之は「たいした事は無いよ」と左程気にしてはいませんでした。
でも、私には思い当たることがありました。それは、自分を可愛がってくれていた叔父が30歳の時、心臓の病気で突然死していたことでした。もし、息子の謙一も同じだったら・・・そんな漠然とした不安を抱え、私は謙一を大学病院で心臓超音波検査(心エコー)を受けさせることにしました。
それから2時間後、診察室で見せられた心エコーの映像では、息子の心臓が左右の部屋を隔てる心室中隔という壁だけが別の臓器のように分厚くなっていました。
医師の診断は「肥大型心筋症ですね」。不安がらせないようにとの配慮からでしょう。伝える顔も口調も優しいものでしたが、私には悪魔の宣告と同じでした。
直ぐに内服薬治療が始まり、謙一はサッカーが大好きな子供だったが、当然、そんな激しい運動は禁止、家で過ごす毎日になってしまった。
とはいうものの、その治療のお陰で、小学校は無事に卒業できた。中学入学の日、ピカピカの学生服を着た息子を囲んで、家族揃って記念写真を撮ったのは本当に幸せなことでした。
ところが、中学1年生の秋頃から、突然の発作で倒れるようになり、入退院を繰り返すようになりました。それでも2年生になると落ち着き、常に緊張の連続ではありましたが、何とか卒業し、高校への進学も決まりホッとしていました。

短かったが、楽しかった高校生活

「ハハハ、伊勢物語がさあ」
小学生の時、運動を禁止されてから本ばかり読むようになった謙一は国語が得意で、高校に入ると古文に興味を持ち、夕食時にその日の授業の事を語るのが日課になっていました。
でも、少しでも体を休めて欲しい。
「無理しちゃダメよ」といくら言っても、興味をもったものを止めることは難しい。彼は「大丈夫だよ」と、夕食が終わると部屋に籠もって勉強に励んでいました。
夏休み。家族で白樺湖に出掛けました。
そこで、たっぷり休養を取ったお陰でしょう。暑い夏は乗り切りましたが、2学期が始まると、通学だけでも大変なのに、好きな古典文学を夜遅くまで読みふける毎日。
心配していた通り、10月、再び心臓発作で倒れてしまいました。
「ママ、僕も学校に行きたい」と、教科書を広げて学習に励む息子に、「うん、そうね」と答えてはいましたが、医師の言葉は残酷で、「復学?当面無理ですね」と出口の見えない日々。それは辛いものでした。
入院して半年が過ぎ、謙一は17歳に。同級生は2年生に進級しましたが、息子は当然ながら留年でした。
「みんな、何をしているかな?」
入院当初こそ、「頑張れよ」と見舞いにくる友達もいましたが、この頃は、「川野君から手紙が来たわよ」とたまに手渡すくらいで、病室まで来てくれる友達は殆ど無くなりました。
病室の窓から見える公園では、声こそ聞こえませんが、息子と同年代の若者が野球にサッカーにバレーボールに興じていました。中にはベンチでピッタリと身を寄せて語らう男女のカップルが・・・それを見ていると、何とも切なくて切なくて、涙を堪えるのが大変でした。

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ナースらの会話が・・

そんな時、ナースステーションの脇を通った時、若い看護師たちの何気ない会話が耳に入ってきました。
「ねえ、整形外科に入院してきたあの子、知ってる?」
「右手を骨折している高校生のこと?」
「そうよ。あの子」
「どうしたの?」
「体を拭きに行ったら、勃起しちゃって」
「あらあら」
「可愛いから、抜いてあげたわ」
「ハハハ。やるわね、あなたも」
私はハッとしました。病室では謙一がタオルでナースから体を拭いてもらっている時間。まさか、まさか・・急ぎ病室に戻ると、
「ハハハ、へえ、そうなの」
「ふふふ、そうよ」
と明るい声が聞こえてきました。
恐る恐る中を覗くと、50歳代のベテラン看護師の藤井さんに謙一が体を拭いてもらっていました。ホッとしましたが、逆にこれでいいのか?と思い始めたのです。
実は、3日程前の夕方、謙一がスマホを見ながらオナニーをしていたのを偶然見てしまったのです。年頃ですから性欲があるのは当然ですが、ここのまま入院生活が続けば、元気な男の子がするような恋愛も何一つできずに死んでいくのか、それではあまりに可哀想・・・何とかできないのかと本当に心の底から考えるようになったのです。

(続く)

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