闇の男-第15話 3300文字 バロン椿

闇の男-第15話

日本の夜の世界を支配する男、武藤甚一(じんいち)と、それに立ち向かう元社会部記者、「ハイエナ」こと田村編集長らとの戦いを描く、官能サスペンス長編。

作家名:バロン椿
文字数:約3300文字(第15話)
管理番号:k077

「おお、入れちゃったよ」
「坊主、いいぞ!」
「ヒヒヒ。そうですよ」
男たちが一斉にいやらしい笑い声をあげた。
その笑い声に紛れながらも、「腰を使うのよ」と悦子が囁くと、またもや女が激しく反応した。

「うっ!う、う、うぅぅ、うっ、ゆ、ゆう(雄介)……」と必死に呻き声をあげ、逃れようと体を捩るが、それは逆効果。早漏気味の雄介は体が小刻みに震え出し、「で、出る……あっ!……あっ!……」と射精してしまった。
だが、雄介が心地よい気怠さに浸っていたのはここまでだった。

悦子が約束通りに般若の面を外すと、雄介が体を交えていたのは、口にテープを貼られ、目を真っ赤に泣きはらした世津子だった。
「あ、ああ……あっ、世津子先生……」
「ゆ、ゆう(雄介)……」
それはあまりにも惨い再会だった。

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ようやく届いた訴え。

「必ず連絡する」と言ったまま、世津子の姿が消えてから1週間。
雄介の母親、美幸は不安と苛立ちから、世津子の父、橋本誠之助に、「いったいどうなっているんですか!」と怒りをぶつけたが、彼は「私は何も知らない」とアトリエに逃げ込んでしまった。
(やはり、警察かしら……)
美幸はすがる思いで、警察署を訪ねたが、応対に出た生活安全課の大沼(おおぬま)係長は落ち着かせようと、「まだ1週間でしょう」と宥めたのだが、それは苛立つ彼女には逆効果だった。

「息子の雄介のことを『夏休み明けの家出』と言ったのはあなたね!そんなバカなことを言っているから、橋本世津子さんも行方が分からなくなっちゃったじゃないの!署長を出しなさい、署長を。もうあんたじゃ、ダメ!」
掴みかからんばかりの勢いで、こう捲し立てられると、ベテランの係長でも手に負えない。
他の署員たちも、どうなることかと、聞き耳を立てていたが、そこに「奥さん、その話、詳しく聞かせて下さい」と横田副署長が乗り出してきた。

普段は〝居眠り御前〟と揶揄されている彼だが、こういう状況では「副署長」という肩書が何よりものを言う。
「沼さん、その件は私が引き取るから。さあ、奥さん、こちらへ」
今まで署内に響く声で生活安全課の係長を攻め立てていた雄介の母親、美幸もそう言われると、「えっ、はあ」と、振り上がた拳を下ろさざるを得ない。

さっそく、通された副署長室で、「大変申し訳ございませんが、息子さんが帰らなくなったところから詳しく聞かせて下さい」と聞かれても、嫌な顔をするどころか、「ちょっと待って下さい」と手帳を取り出し、日付を追って、「5月でした。子供の頃から絵を習っていた橋本誠之助先生から画廊を紹介され……」と失踪した当時の状況を詳しく話し出した。

横田副署長はペンを握り、「そんなことがあったのですか」などと、美幸の気持ちを慮り、適宜相槌を打ちながら、要点をノートに書き留めていたが、既に訴えを受理した根岸美智代の件も合わせると、思い当たるものがあった。
それは、先日、付き合いの長いマスコミの一人、週刊スクープ編集長の田村と飲んだ時のことだった。

「横ちゃん、絵のモデルが消えたって話があるんだけど、本当か?」
「いや、そんな話は俺のところには上がってきてないが」
「真偽は分からない未確認情報だけど、武藤甚一が絡んでいるって噂なんだよ」
「武藤?」
「あいつだよ」

惚けたつもりはないが、「武藤甚一」の名前が出たことに思わず聞き返してしまった。
武藤(むとう)甚一(じんいち)、興業界のドンにして、売春組織のドンでもある。
政治家、官僚、財界人が遊ぶ場所は武藤が用意すると言われるくらい、各方面に義理を立てているから、迂闊なことでは手が出せない。
そんな武藤がモデル失踪に絡んでいると田村は言う。
彼はここ数年、美術界の不正を追求しているが、その取材の過程で気になる情報が耳に入ってきたと言う。

「絵のモデルだから、色事は全くの素人。そう言う女や男を集めているらしい」
「男もか?」
「ああ、そうらしい。素人なんて色事の世界にはいない。そこに武藤は目をつけたようだ。横ちゃん、武藤を捕まえるチャンスなんか滅多にないぞ」

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(二人の話は確かに、田村の言っていたことと符合する)
そう感じた横田副署長は、「川島さん、ご心配、よく分かりました」と美幸の話を受け留め、「この件は私が責任をもって対処します。担当刑事を付けますから、不愉快だと思いますが、その刑事にもう一度詳しく話して下さい」と約束した。
「あの、本当でしょうか?」
これまでの警察の応対に不信感を持つ美幸は、副署長の言葉とはいえ、直ぐには受け入れられない。

だが、きっぱりとした口調で、「ご安心下さい。私が責任を持って捜査にあたらせますから」と言われると、「よろしくお願いします」と返した途端、そのままテーブルに突っ伏し、気を失ってしまった。
すぐさま、副署長が「おーい!救急車だ、救急車を呼べ!」と叫び、駆けつけた婦人警官が「川島さん、川島さん、しっかりして下さい!」と声を掛けると、「雄介、雄介……」とうわ言を繰り返すばかり。

この2週間、眠れぬ夜を過ごし、酷く疲れていたので、ようやく訴えが届いたことで一気に気が緩んだのだろう。
間もなく到着した救急車の担架に乗せられ美幸は副署長室から運び出された。
「沼さん、これは一大事だぞ」
副署長はこう言って大沼係長の肩を叩いたが、彼も初動の過ちを取り返すべく、「はい、全力で取り掛かります」と覚悟を新たにしていた。

徹底的に調査せよ!

2日後、小田島、矢野の両刑事は署に戻ると席を温める間もなく、「小田島、矢野、始めるぞ」と会議室から声がかかった。
彼ら2人は、「相手は武藤甚一だ。うかつに動けば、あらぬところから圧力がかかり、捜査が妨害される。
まずはしっかり情報を固めてくれ」と、横田副署長から特命捜査を命じられていた。

会議室に入ると、署長、副署長の他、刑事課長やベテラン刑事が揃っていた。
「すみません、遅くなりまして」と一礼した二人は関係者等の聴き込みなどで集めた情報を大きく5つに整理し、それをA4で5枚ほどの資料にまとめていた。

①アートギャラリー・マチダ
川島雄介は橋本世津子の絵画教室の生徒だったが、世津子の父、洋画家の橋本誠之助に見込まれ、内弟子となったが、アートギャラリー・マチダ社長の町田公一に誘われ、そこに通うようになった。
根岸美智代は夫の健一が町田から借りた金の返済のため、アートギャラリー・マチダで受付として働き出したのだが、常時お客が来る訳でもなく、他の従業員からは本当に受付が必要だったか疑問だとの声があった。時々、町田から「特別の仕事」を命じられ、外で残業をしていたらしいが、「特別の仕事」が何であったかは誰も知らない。

②携帯電話の通話記録
川島雄介はアートギャラリー・マチダの専属画家、朝岡悦子と失踪当日まで頻繁に連絡を取り合っていた。朝岡悦子も現在は所在が分からない。
根岸美智代は夫の勤務先の校長名義の携帯電話からの受電が多かったが、これは誰かが校長に無断で契約したもの。校長の携帯電話とは違う。
朝岡悦子の履歴を任意で照会したら、川島雄介以外では町田とそれに根岸美智代にも記録がある校長名義の携帯電話との通話記録があった。

③立ち寄り先
川島雄介と朝岡悦子は失踪の1ケ月程前から、頻繁に旅館若松を利用していた。二人に肉体関係があったのは確か。
根岸美智代はアートギャラリー・マチダが法人会員となっているスポーツクラブに毎日通っていた。ただ、根岸美智代以外の従業員は利用したことがない。
尚、朝岡悦子は度々彼女を苛めていたと従業員が証言している。
これらを合わせると、朝岡悦子は町田の手先として動いている考えられる。

④異変
失踪する数日前、川島雄介は朝岡悦子から呼び出され、母親の証言では、帰宅した時の顔色は真っ青だったという。
同じく、根岸美智代も失踪する数日前、預けた娘を引き取りに来た時、真っ青な顔をしていたと、母、和子が証言している。

⑤ベンツの男
橋本世津子を乗せたタクシーの運転手の証言では、町田の後を追って旅館三益の裏木戸付近でタクシーを降りたところ、人相のよくない男たちに囲まれた。そこにベンツが停まり、顔はよく分からないが車内の男から何か指示があり、世津子はそのままベンツに乗せられてそのまま走りさった。

以上、報告が終わると、室内の誰彼となくため息が漏れ、同時に多くの者がタバコに手を伸ばした。

(続く)

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