現代春画考~仮面の競作-第16話 2150文字 バロン椿

現代春画考~仮面の競作-第16話

その話は、日本画の巨匠、河合惣之助の別荘に、悪友の洋画家の巨匠、鈴木芳太郎が遊びに来たことから始まった。
本名なら「巨匠が何をやっているんだ!」と世間がうるさいが、仮名を使えば、何を描いても、とやかく言われない。
だったら、プロのモデルじゃなく、夜の町や、それこそ家政婦まで、これはと思った女を集ろ。春画を描こうじゃないか。

作家名:バロン椿
文字数:約2150文字(第16話)
管理番号:k086

処女の歩き方

「あら、先生、お久し振り!」
「ははは、たまにはお前たちの顔を見ないとな」
12月上旬、河合画伯はマネージャーの吉光を連れて「クラブ 茜」に遊びに来ていた。

「先生、いらっしゃい」
「ママ、相変わらずきれいだね」
「まあ、お上手だこと」

画伯は「日本画の巨匠」などと言われているが、こういう酒席では、偉そうな素振りなど全く見せず、同席する客は勿論、ホステスも自然に和ませてしまう。話術といい、さりげない心遣いといい、吉光はほとほと感心してしまう。
「先生、たまには私も描いて下さい」

「おお、いつでも描いてあげる。素っ裸で大股開きのところをな。写真より凄いぞ」
「いやだあ、あそこまで描かれたら、お店に出れないわ」
「恥ずかしいか?あははは」
「ほらほら、ここではお仕事の話はダメですよ」
ママが若いホステスをたしなめたが、画伯は何か思いついたらしく、吉光に目配せした。

セクシーコスプレ03

「いや、ママ、いいんだよ。ちょうどモデルになって欲しい子を探していたんだ。なあ、吉光」
「はい、先生は燃えてますよ。ギャラはたんまり弾みます。いいでしょ、先生」
「吉光、ウソはダメだぜ。金は無い。あるのは愛情だ。ははは」
「じゃあ、私よね」
「いやあ、私よ。今夜から付き合っちゃうから!」

画伯のいる個室には10人ほどのホステスが集まってきていた。
「よしよし。歩き方で決めよう。そうだなあ……ここには誰もいないが、処女の時のこと思い出して、可愛く歩いてみろ。その歩き方でモデルを決めよう」
「私、今も処女だけど。ふふ、ふふふ」
「えっ、ウッソー。バッグにコンドームを入れてるのに、処女?」
「あっ、イヤだあー、人のバッグを勝手に見て!」

室内の盛り上がりは収まらないが、クラブマネージャーがボーイたちに指示し、スタンドなどをずらして、歩ける場所を作っていた。
「ありがとう。それだけあればいいよ。それじゃあ、一人ずつ、右から左歩き、そこでくるっと回って、右まで。いいかな?」
「そんな簡単なことでいいの?」
「いいんだ。さあ、順番に歩いてもらおうか。処女らしくだぞ」

ホステスたちはキャッキャ、キャッキャ言いながら、それぞれが処女の歩き方を演じて見せた。
くるっと回る時に、ドレスの裾をつまんで翻し、中まで見せてしまう者や、お尻をセクシーに振って歩く者、その度に画伯は手を叩いて喜んでいた。
「これで全員かな?」
吉光がそう確認すると、「いや、ママが残っている」と画伯がニヤニヤ笑いながら指差した。

「ふふふ、処女なんかとうの昔、すっかり忘れました」
ママは顔をハンカチで隠して笑っていたが、画伯が「お願いします」と大袈裟に頭を下げてみせると、「先生にそんなことされたら」と恥ずかしそうに立ち上がると、着物の裾を押さえながら、草履のつま先が触れ合うように内股で右から左、左から右と歩いてみせた。

「いやあ、すまん。ママにこんなことまでさせてしまって。本当にすまん」
これまた、周りの笑いを誘うように、再び、画伯は大袈裟に頭を下げていた。
クラブマネージャーが再び室内を元に戻すと、皆の視線は画伯に集まっていた。

「ははは、さて、それでは発表するか……さあ、誰かな?」
「私でしょう」
「いや、私よ」
またまた、若いホステスたちが騒ぎだしたが、それを見ながら画伯は美味そうにブランデーを一口舐めていた。

「じゃあ、発表する」
皆が互いに顔を見て牽制し、シーンと静かになったところで、画伯は「よろしくお願いします」とママの手を握っていた。
「え、ウソ、ママだって」
「一番昔に卒業しているのに」

若い女の子は遠慮がないが、パチパチと一人が手を叩き始めると、「違うわよ!」などと口にする者はいない。ママの存在は絶対だ。次第に、パチ、パチ、パチ、パチと拍手の音が大きくなっていった。
しかし、「でも先生、どうしてですか?」と口を尖らせ、食い下がる者がいた。一番若いヒトミだ。

「えっ、分からないのか?」と河合画伯が突っ込むと、「だって、私が3年前だけど、ママは、あ、これは言えない。はは、ははは、あれ、へへ、ごめんなさい!」とあっけらかんだ。だが、そのお蔭で場の雰囲気は変わり、「そうか、ヒトミは3年前か。痛かったか?」と茶化すと、「先生、もう堪忍して」とお国言葉が出て、室内は大爆笑になってしまった。

「よし、皆の勉強のために教えてあげよう。処女がドレスを捲くってパンツを見せるか?お尻を振って歩くか?」
ヒトミは恥ずかしく顔が赤くなっていたが、「えっ、ああ、そうか、そういえばママは」とホステスの中にも気がつく者が出てきた。

「そうだ。分かったらしいな。処女はな、本能的にお股を守るんだ。ママがいつ卒業したか知らんが、さっき、ママはしっかりと守っていた。一番処女らしかったぞ」
「先生、もう止めましょう、そんな話。私の処女は先生が奪ったくせに、もう、ふふ、ふふふ、知らないから」
「あっ、そうだったな。真っ赤な血がでたっけ、あははは」
「そんなことまで、おしゃべりして、嫌いよ!ほほほ」

やはりママだ。画伯よりも一枚上手だった。
すっかりご機嫌になった画伯は「今夜は楽しかった。じゃあ、また!」と帰っていったが、吉光は「ギャラの前渡です」とママの懐に札束を押し込んでいた。
(ふふ、これも悪くないわね……)
車を見送るママの目はキラキラと輝いていた。

(続く)

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