アナルリベンジ-第29話
愛する娘が残虐非道の扱いを受け、自殺する。復讐を誓ったおれは、娘の担任の妻を襲う。
作家名:優香
文字数:約2760文字(第29話)
管理番号:k137
淫猥な沈黙が訪れる。
おれも喉が渇き切っていた。
ビデオのタイマーを視ると、撮影開始から140分が経過していた。
三人は精魂尽き果てて満足し、愛子に約束させられたように、生贄の拘束を解き始めた。
さあ、フィナーレだ。
三人が、ぐったりと並んで横たわっている二人のマスクを外した。
地獄が待っているとは想いもせずに。
佳美と朋子の素顔を撮るつもりはなかった。
おれはビデオをオフにした。
「朋子っ?!」
「佳美っ?!」
「何っ?お父さんっ?!」
「パパッ?何でっ?うそっ!」
四人の驚きの鋭い叫びが凍り付いた空間に交錯した。
互いに顔を視つめ合う。
「いやーっ、視ないでっ」
「うそっ、信じられないっ」
佳美と朋子が悲痛な叫びを上げ、急いで起き上がって耳栓を外す。
佐川と斎藤がぐったりと項垂れた。
岡井は訳も判らず、4人の顔を交互に視詰めていた。
佳美と朋子が立ち上がり、よろけながら抱き合って、浴室に駆け込む。
重い沈黙が三人を押し潰す。
「岡井君っ、どうして、こんなっ?」
佐川が茫然自失のまま、やっとの事で、口を開いた。
「わ、判りません。あ、あの、さ、最初にいなくなった女の子に話を持ち掛けられて」
岡井が、佐川や斎藤の顔を視られるはずがない。
項垂れたまま、頭を振る。
「私達3人と言う事は、もしかしたら、あの、田辺由紀子のっ」
齊藤が顔を上げた。
今更手遅れだ。
判ったとしても、やつらはおれに仕返しする立場にはないはずだし、自分の娘達を凌辱して犯した事を、自分で口には出来まい。
仮にやつらが逆襲に出て来ても、おれは受けて立つ。
「まさか、写真っ?撮られて?」
佐川が顔を上げ、三人が部屋の中を視回す。
ちゃんと撮ってやったよ。
写真じゃなくてビデオで。
暖炉の中だとは、気付かないはずだし、混乱していて、隅々まで探す気力もないだろう。
想った通り、やつらは腰をあげる事もなく、再び項垂れた。
佳美と朋子が浄めた裸身をバスタオルで覆って出て来た。
「お父さん達で綺麗に片付けてよっ」
おとなしそうだった朋子が怒りを三人にぶつける。
「ママには内緒にしといて上げる。こんな酷い事、ママに話せないわね」
佳美も未だ怒りに声を震わせていた。
どうして、自分達が父親達の性の餌食になったのか、訊くゆとりもない程怒っているし、三人もどういう経緯で、自分の娘達がここにいるのか問い質す事も出来ない程、混乱していた。
奴らとの連絡に使った3本の携帯は、部屋で待機している美奈子が電源を切っているはずだった。
佳美と朋子が帰り支度の為にベッドルームに消えた後、三人がのろのろと片付けをし始めた。
おれ達が部屋を片付けなければいけないと考えていたが、それをしなくても良さそうだ。
おれはビデオカメラを再生モードにして確認する。
美奈子も愛子もこんな映像を視たくもないだろう。
5人の淫猥な痴態が鮮明に録画されていた。
暖炉から抜け出し、ビデオカメラを持って美奈子と愛子の元に戻る。
「上手く行ったのね?」
「やったね!」
二人がおれの表情で、成功したのを悟り、瞳を潤ませて抱き着いて来た。
「ああ、お前達のお陰だ。ありがとう」
二人をきつく抱き締める。
二人の嬉し泣きの笑貌が涙で翳んだ。
「ビールくれ。喉がからからだ」
美奈子が冷蔵庫から缶ビールを三つ取り出した。
「やっぱ、乾杯よね?」
同時にプルトップを弾くと、愛子が涙を拭いながら缶ビールを掲げた。
「かんぱーい」
ビールの泡が緊張していた心身を生き返らせる。
息を大きく吐き出すと、美奈子も愛子も同様にして、笑貌を弾けさせる。
二人も、おれが戻るまでずっと緊張しっ放しだったに違いない。
ふと、カーテン越しに佳美と朋子が一緒に帰って行く姿が視えた。
おれ達に嵌められたとは言え、二人は浣腸友達だ。
さすがに笑ってはいなかったが、手を握り合っていて仲良しに感じられた。
「あの子達、大丈夫よね?」
美奈子が美貌を曇らせる。
「父親はともかく、自分の顔や身元が世間に知れる訳じゃないし、お浣腸友達が出来たから良いんじゃない」
愛子が悪戯っぽく笑った。
「もう一つくれ」
缶ビールを飲み干し、美奈子に催促する。
《由紀子、やったぞ》
おれは眼を閉じて、脳裏に浮かんだ由紀子の笑貌に乾杯する。
「由紀子ちゃんも喜んでくれてるわね」
「きっとよ」
2人がおれの心中を察して、また嬉し泣きの笑貌を弾けさせる。
「そうだな。ありがとう」
おれは賢い二人を抱き締めた。
やがて、うなだれた3人が無言で駐車場の車に乗り込み、帰って行くのが視えた。
「このビデオのコピーを、実名と肩書入りで週刊誌に送り付けてやる」
やつらは、失職する処か、一生世間に顔向け出来なくなる。
週刊誌の記事になって、場合に拠っては警察が乗り出して来て調べても、奴らは自殺に追い込んだ由紀子の存在までは、口が裂けても語らないはずだ。
「私、すぐに離婚して、貴方の処に行くわ」
美奈子がきっぱりと宣言した。
「しちゃえ、しちゃえ」
愛子が手を叩いてはしゃぐ。
「あの部屋は、すぐに引き払う。そんな度胸もないだろうが、万一やつらが仕返しに来たら、お前達が危ないしな」
「良いわ。前にも言いましたけど、私、一生、貴方から離れませんからね。アフリカでもシベリアでも、うーん、シベリアは寒いから止めてね」
美奈子が甘えておれにしがみつく。
「そんな事言うけど、おれは、貯えはあっても無職だぞ」
「貴方の働き先なんて、すぐに視付かるわよ。何なら私が働いて食べさせてあげても良いわよ。その分、昼間たっぷり休養して、夜、ご褒美、ね?」
美奈子が美貌に恥じらいを浮かべた。
「あのね、未だ、何処に住むか決めないで、暫く、家具をレンタルボックスに入れて置いて、どっかのホテルで暮らさない?」
愛子が、おれと美奈子の手を握って口を開いた。
「ホテル?暫くって?お前、何か宛てがあるのか?」
「うーんとね、半月くらい待って、いや、もっと早いかも」
「良いぞ」
「良いわよ。任せるわ」
愛子に何か考えがあるのなら、愛子に任せよう。
賢い愛子の事だ。
先日から、何かを思案しているようだったし、間違いはないだろう。
ビールを飲み干し、パーティー会場にしたログハウスを点検に行く。
やつらも殊勝な気分になったのか、想いの他、綺麗にしてあった。
やつらが浴室に運び込んで洗い流していたビニールプールとビニールシートを登山ナイフで切り刻み、美奈子がバイブやパーティーグッズと一緒に、持参していたゴミ袋に放り込む。
ゴミ袋は途中のパーキングエリアででも捨てたら良い。
その作業と並行して愛子が浴室をシャワーで洗浄する。
リビングの窓が開け放たれていて、排泄臭もほとんどない。
床の汚れをもう一度確認する。
ホテル側から苦情が出る事もなさそうだ。
手を洗ってから、もう一度部屋を点検する。
「よし。オーケーだ」
「お腹が空いたわ」
「私も」
二人がお腹を摩る。
時計を視ると6時近かった。
(続く)
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