闇の男-第17話 3080文字 バロン椿

闇の男-第17話

日本の夜の世界を支配する男、武藤甚一(じんいち)と、それに立ち向かう元社会部記者、「ハイエナ」こと田村編集長らとの戦いを描く、官能サスペンス長編。

作家名:バロン椿
文字数:約3080文字(第17話)
管理番号:k077

悦子、逮捕!

「ハイエナ」と呼ばれ全国紙の敏腕社会部記者として鳴らした時から、田村と競った者や、週刊紙に転じてから田村に育てられた者等、マスコミ業界には田村シンパは少なくない。
その多くが今では新聞社なり雑誌社なりで主要な地位に就いている。

彼らは様々な分野で悔しい経験をしている。
武藤に記事を握り潰されたのはまだいい方、会社を追い出されたり、中には、二度とペンを握れないように本当に指を折られた者もいる。
その武藤に田村が挑戦する。
これを聞いて応援しない者等、どこにもいない。

「田村さん、今度こそは武藤を引き摺り出そうぜ」
「エロ雑誌なんて言われているけど、俺のところには表に出せない情報が集まってくるよ」
田村の電話は鳴り止むことはなかった。
だが、相手は武藤だ。簡単に尻尾を掴める筈がない。
そこで田村が最初に仕掛けたのが、朝岡悦子の失踪記事だった。

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悦子が姿を見せないことは事実だし、町田の手先であることははっきりしている。
「失踪」として取り扱っても、文句を言ってくる奴は彼ら以外にいない。
こいつらは本物の悪党じゃない。素人に近いから、
記事が気になり、きっと姿を現す。

田村はそう睨んでいた。
それに横田副署長から朝岡悦子の携帯電話の位置情報が随意入ってくるから、「撒き餌だ。頼むぞ!」と送る田村のメーに、「了解」と返す記者仲間たちが必ず見つけられる。
その頃、九州・福岡にいた朝岡悦子は町田からの電話を受けてからというもの、「何て書いてあるのかしら……」と週刊スクープを読みたくて仕方がなかった。

「出歩くなよ」と町田から釘を刺されていたが、ここは九州、東京の出来事なんか誰も興味はないだろうと、ホテルから出ようとしていた。
だが、間が悪く、「あ、悦子さん、ダメだよ、勝手に出掛けちゃ」と若手に見つかってしまった。
だが、そこは悦子だ。
「だって生理なのよ。ドラッグストアに行かなくちゃ」と「女」で迫ると、若い男は「えっ、生理」と返事に困る。

おまけに、「何よ、もう上がっているとでも思っているの?」と皮肉をかませば、「あ、いや、ち、違いますけど」と慌て、「でも、早く帰って来て下さいよ」と答えざるを得ない。
悦子の貫禄勝ちだ。
(さて、どこかしら……)
外に出た悦子が辺りを見回すと、交差点の向い側にコンビニがあった。

あそこならと、信号が変わるのを待って渡り、店内の雑誌コーナーで探したが、週刊スクープは一冊も無かった。
「週刊スクープは?」と店員に聞くと、「すみません、売り切れました」と言われた。
ここで冷静に考えれば、「だったら、私の写真を見た人が多いのね」となり、見つからないうちに、ホテルに引き返すのだが、悦子はどうしても記事が見たい。

「何よ、コンビニの癖に。売り切れなら、もっと仕入れなさいよ」と別のコンビニを覗いた。
ところが、案の定、そこにいた客に、「あれ、週刊誌の人だ」と騒がれ、とっさに、「人違いよ、人違い!」と叫んでしまった。
すると、その声を聞いた張り込み中の記者たちが、「おい、朝岡悦子だ。間違いない!」、「何?朝岡。カメラだ、カメラだ」と彼女を取り囲んだ。

慌てた悦子は「や、止めてよ!」とバッグで顔を隠し、店から出ようとしたが、野次馬も加わり、身動きできないまま、駆けつけてきた警察官に取り押さえられてしまった。
「午後3時20分、容疑者確保!」
警察無線でそう告げる警察官の傍らでは、雑誌者のフラッシュが一斉に焚かれていた。
マスコミと警察の見事な連携プレーだった。

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武藤甚一への挑戦状

「ハイエナ」と言われた田村が仕掛けたのはこれだけではなかった。
「おい、田村君、これ、やばくないのか?」と常務が、来週発売の週刊スクープのゲラ刷りを手に編集部に駆け込んできた。
「どうかしましたか、常務?」
「どうかしましたかじゃないだろう。『全てを語ろう、これが俺の生き様だ』、これ、ウソだろう?武藤甚一が我々のインタビューに応じる訳がない」

マスコミ業界で長く働いてきた者ならば、武藤甚一の名前を耳のしたことが無い者などいない。
興行界のドンにして、売春組織のドンでもある、夜の世界の支配者。
この男に正面から刃向って無事でいた者はいない。
下手をすれば命も危ない。
そんな男の独占インタビューなど出来たところで、提灯記事しかない。

だが、常務が手にしているゲラは、武藤の関与が噂された事件を全て彼の実名入りで証言しているもので、おまけに写真まで載せている。
「この写真も偽物だろう?」
苛立つ常務に対し、田村はコーヒーを飲みながら笑顔でこう答えた。
「常務、ニュースソースは絶対に明かさない、これが記者の心得№1でしょう」

大小、中央、地方を問わず各社で働く田村シンパの記者たちが、それこそ命がけで集めてきた情報だから、記事の中身は絶対に自信がある。
行間から、「田村さん、頼むぜ!」と、これまで武藤の圧力等で会社を追われたり、暴力を受けたり、記事をボツにされてきた仲間たちの魂の叫びが聞こえてくる。
だから、「インタビューは捏造だ!」、そんなお説教じみた忠告などクソ喰らえだ。

それに社長の吉田(よしだ)琢磨(たくま)への恩返しもある。
全国紙を追われ、行き場が無かった田村を拾ってくれたのは、当時週刊スクープの編集長だった、吉田社長だ。
彼は、「田村、信念を曲げるな。真実を追求したければ俺のところに来い。ハイエナ?いいじゃないか。そんな称号を持つお前なら、大歓迎だぜ」と言ってくれた。
そして、今回も、「お前にしか出来ない。とことんやれ!」と背中を押してくれた。

「ははは、常務、相手は武藤です。結構じゃないですか。堂々と勝負してあげましょう。言うならば、これは挑戦状ですよ」
そう笑い飛ばす田村に「俺は知らんぞ!」と常務はゲラ刷りを投げつけて出て行った。

嗅ぎつけた記者魂

常務が出て行って間もなく、「朝岡悦子、福岡市で逮捕」の知らせが田村に届いた。
これで川島雄介と根岸美智代を救いだす手がかりができた。
だが、気がかりなのは無事な体で帰ってくるかということだ。

俺はこんな商売だから「勲章だ」なんて言えたけど、二人は違う。
一人は高校生だし、もう一人は普通の主婦だ……

田村はかつて大手新聞社の社会部でエースと言われた記者だった。
事件を嗅ぎつける鋭い嗅覚、徹底した取材と何も恐れない勇気、悪党どころか、我々警察も、あいつに喰い付かれたら、どこまでも追いかけてくる、〝ハイエナ〟と呼ばれ、最も警戒された記者だった。
だが、その徹底ぶりから、ある組織に捕まって、背中に入れ墨を彫られてしまった。
その時の相手が武藤だった。

また、数年前の武藤絡みの事件では、悪事に引き込まれた高校生が、背中に入れ墨を彫られそうになって逃げ出し、交通事故に遭い、大腿骨を骨折し、結局留年してしまったことがあった。
だから、今回は何としても無傷で救い出したい。
そう思っていたところに、胸の携帯電話が鳴りだした。

「田村ちゃん、俺、福岡にいるんだよ」
相手はエロ体験ルポの第一人者、秋山だ。
「秋山、どうして福岡なんだ?」
悦子が福岡で逮捕されたという知らせはたった今届いたばかりなのに、既にそこにいるという。
「俺を誰だと思っているんだ?」

秋山は、若い頃、田村と並ぶ社会部エースと言われながら、取材の過程で闇勢力と近づき過ぎ、新聞社を追われた過去があった。
そして、今も闇の世界に守られていると言われている。
「いや、そういう意味じゃないんだ。たった今、そっちで朝岡悦子が逮捕されたんで、あまりにもタイミングが良かったから驚いたんだ」
それを聞いた電話の向こうからヒューと口笛が聞こえてきた。

(続く)

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