それでも出会い系サイトはやめられない-第3話
なかなか彼女ができないひろしは出会い系サイトに登録した。次々と出会う女性たちと繰り広げるエロスとサスペンス。そして、恐怖体験。ひろしはどんどん出会い系サイトの深みに落ちていく。
作家名:.城山アダムス
文字数:約2950文字(第3話)
管理番号:k112
そう言うと、ボーイは店の奥に入っていった。しばらくすると、奥からみひろが出てきた。
白い肌にブルーのドレス姿が眩しかった。昼間会った時より、さらに綺麗に輝いて見えた。指名が多いはずだと思った。
「ひろしさん。ごめんなさい。今日は指名が多くてひろしさんに付けなかったの。」
申し訳なさそうに、頭をぺコンと下げた。
「みひろちゃんと、いっぱいお喋りしたかったな。」
僕がそう言うと、みひろは僕に近寄り、耳打ちしてきた。
「ねえ。この後、食事でもしない?」
僕は、心が弾んだ。キャバクラではみひろと話ができなかったが、この後ゆっくり会える。ひょっとしたら、またホテルへ行くことになるかもしれない。
「どこで待ち合わせする?」
僕が聞くと、
「文化通りのファミリーマートで待っててね。10分くらいで行けると思う。」
みひろはそう言うと、僕に軽く手を振り、店の奥に消えていった。
僕はみひろが指定したファミリーマートで待っていた。10分ほどすると、みひろが店の中に入ってきた。昼間会った時の白いワンピースに黒いジャケットを羽織っている。ドレスを脱いだみひろもきれいだ。
「ごめん。待たせてしまって。」
「大丈夫だよ、時間通り10分だよ。」
僕がそう言うと、みひろは甘えるような声で
「お腹すいちゃった。」
僕はどこに行こうか考えた。飲んだ後、いつも締めに使うラーメン屋がある。
「ラーメンでも食べる?」
僕がそう言うと、
「夜はラーメン胃にもたれるから、できればお寿司がいいな。」
「それじゃ、お寿司食べに行こう。」
こんな時間にすし屋が開いているか不安だったが、2分ほど歩くとすし屋があった。
かなり高級そうなすし屋だ。
「私、このお店よく行くの。」
そう言うとみひろはすし屋の中に入っていった。
店の中は、高級感あふれていた。
メニューを見て、びっくりした。握りの並みが3千円。上握りになると5千円。
「みひろちゃん。何食べる?」
僕がそう聞くと、みひろは甘えるような目で僕を見つめていた。
「ねえ。上握り食べたいな。」
心臓が止まりそうだった。上握りを二人で食べると1万円。サービス料まで入れると・・・
しかし、僕はみひろの前で、格好悪いことはできなかった。
「上握り二つ下さい。」
「お飲み物はどうします?」
板前さんが聞いてきた。
「何か飲む?」
僕が聞くと
「生ビール飲みたいな。」
生ビールを二つ注文した。
みひろは上握りをぺろりと平らげると
「ねえ、もうちょっと注文していい?」
また、甘えるような目でおねだりしてきた。
「いいよ、好きなもの注文して。」
すると、みひろは
「追加お願いします。 中トロ4貫 大とろ3貫」
中とろ1貫5百円、大トロは千円だ。板前さんは、にっこりして
「お連れさんはどうされますか?」
みひろはにこにこしながら僕を見つめている。僕も、けちな男とみられたくなかった。
「私も同じものをお願いします。」
追加分だけで、二人で1万円になった。
みひろは、追加の大トロを美味しそうに口にほおばっていた。その表情を見て、僕の心はちょっとだけ和んだ。
すし屋を出ると、みひろと並んで歩いた。夜の町は男女の二人連れで溢れていた。
「あの人たち、みんなアフターよ。」
みひろが、僕の耳元でつぶやいた。
「私たちもアフターね。」
みひろは僕と腕を組んできた。
「これからどうする?」
僕がそう聞くと、
「私、眠くなっちゃった。」
僕をホテルに誘っているのだろうか?
「ホテルに行く?」
僕がそう聞くと、
「うん。」
みひろは、軽くうなずいた。僕の心は弾んでいた。すし屋で支払った3万円近くの代金のことなど、もうどうでもよくなっていた。
10分ほど歩いて、ホテルに着いた。
部屋に入ると、僕はみひろを抱きしめようとした。みひろは僕を軽く突き放すと、
「シャワー浴びてくる。」
そう言って、脱衣場に入っていった。
「僕も一緒に浴びる。」
僕が脱衣場に入ろうとすると、
「頭、シャンプーしたいから、後から入ってね。」
みひろはそう言うと、脱衣場のドアを閉めた。脱衣場のドアのすりガラスに服を脱ぐみひろのシルエットが微かに浮かんでいた。
バスルームからシャワーの音が聞こえてきた。髪を洗っているのだろう。ずいぶん長くシャワーの音が消えない。
もう、20分過ぎている。
僕ははやくみひろを抱きたかった。シャワーの音が止まるのをずっと待っていた。
やがてシャワーの音が止まった。みひろはバスルームから脱衣場に出てきたようだ。ドアのすりガラスに、微かにみひろの白い肌が浮かんでいる。
「僕も、シャワー浴びていい?」
「今、クリーム塗ってるから、もう少し待ってて。」
それから10分ほど待たされて、やっとみひろが脱衣場から出てきた。
「おまたせ。ひろしさん。シャワー浴びてきて。」
僕は、みひろと入れ替わりに脱衣場で服を脱ぎ、シャワーを浴びた。
獲物を狙う野獣のような気持ちでみひろを待っていたからか、僕の下半身は熱く硬く勃起していた。
急いでシャワーを浴び、体をさっと拭いてバスローブを羽織ると、ベッドルームに入った。
ベッドでは、みひろが横になっていた。
いよいよみひろをベッドで抱ける。僕の身体は熱く燃えていた。
「ベッドで待っててくれたんだね。」
僕がみひろの隣に寝て、キスしようとしたら、みひろは動かない。
すでにぐっすり寝ていた。
「みひろちゃん。みひろちゃん。」
声をかけてみたが起きない。
「おい、みひろちゃん。」
体をゆすってみたが、ぐっすり寝てしまって起きない。
「これからみひろちゃんとセックスしようと思っていたのに・・・」
僕の下半身はいきり立っていた。しかし、みひろが寝てしまっては、どうしようもない。寝ているみひろを襲ったりしたら、嫌われるかもしれない。
「しょうがない。明日、目が覚めたらセックスしよう。」
僕はあきらめて、みひろの隣に寝た。
次の日の朝、目が覚めた。ベッドの隣を見ると、みひろはいない。
「もう起きたのかな?」
部屋を見渡したが、みひろの姿はなかった。
「みひろちゃん。」
僕は、みひろの名前を呼んでみた。返事がない。ベッドから起き上がると、洗面所とバスルームを覗いたが、みひろはいなかった。
「トイレかな?」
トイレをノックしてみた。反応はない。
「まさか!帰った?」
部屋の入り口を見ると、みひろの靴がない。僕が寝ている間に帰ったらしい。
「結局、今回はお預けか?何もできなかった。」
僕は、釣りかけた大きな魚を逃がしてしまったような、残念な気持ちでいっぱいだった。ふと、テーブルの上に置いてあった僕のバッグを見ると、ファスナーが空いていた。
「おや?」
と思い、バッグの中の財布を取り出して唖然とした。現金がない。
「しまった!盗まれた。」
財布の中には1万円札が7枚ほど入っていたはずだ。1万円札どころか、千円札も一枚も残っていなかった。かろうじて、小銭とカードは無事だったので、カードでホテルの支払いを済ませた。
「みひろちゃん。ひどい女だ。」
僕の心に怒りが込み上げてきた。警察に届けようとも思ったが、みひろへの未練も少し残っていた。
「みひろちゃんとすぐ連絡取りたい。」
と思ったが、みひろの携帯番号もLINEも交換していない。
もう連絡の取りようがない。
「今日の夕方、サザンウィンドに行って、みひろちゃんからお金返してもらおう。」
僕はホテルを出て、そのまま車で会社に向かった。
(続く)
※本サイト内の全てのページの画像および文章の無断複製・無断転載・無断引用などは固くお断りします。
リンクは基本的に自由にしていただいて結構です。