我愛你-第7話 3280文字 バロン椿

我愛你-第7話

39歳の主婦、高木弥生は4つ年上の夫、壮一、一人息子で中学一年の智之と小田急線新百合ヶ丘の一戸建てにつつましく暮らしていた。
だが、大学の先輩、大手商社に勤める寺田麗子の昇進祝いの会で、中国からの研修生、27歳の王浩と出会ってから、人生がガラッと変わってしまった。
王は優しく、かつての夫のようにグイグイと引っ張ってくれる。そんな王と男女の関係になった弥生は彼とは離れられなくなっていた。
編集注※「我愛你」は中国語で (あなたを愛しています)の意味

作家名:バロン椿
文字数:約3280文字(第7話)
管理番号:k098

我慢できなくなって

心が深く結び付いていた二人だが、10月半ばを過ぎると、会うことが難しくなってきた。
弥生の夫は大きなプロジェクトに携わっていたが、9月末の深夜、「やっと終わったよ」と笑顔で帰ってきた。

「ご苦労様でした」
「まあ、ちょっとの間かな。次のプロジェクトが始まれば、また同じだから、それまでの中休みかな」
「えっ、また忙しくなるの?」
「ははは、サラリーマンが暇でどうする?」

夫は美味しそうにビールを飲んでいた。弥生も嬉しかった。
つい先日までは、「疲れた……」と帰宅するなり、座り込んでいた姿を思い出すと、素直に「ご苦労様」と夫に言える。その思いにウソは無いが、そうなると、土曜日の休日出勤は無くなるのか……

「しかし、残務があるから、もう1、2回は土曜日も出勤だなあ」
夫はそう言ってビールを飲み干すと、「さあ、風呂に入って寝るか」と立ち上がった。
「はい、お休みなさい」と夫の着替えを出す弥生は複雑だった。

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夫がいないことをいいことに、毎週土曜日に王と会っていたが、それが出来なくなる。どうにかしなくては……
「さあ、ゆっくりテレビを観るぞ」
10月半ば、残務整理も終わった夫は休日出勤することなく、リビングのソファーに寝転び、テレビのリモコンをいじっている。
「何だよ、ろくな番組もない」
「夜にならないといい番組はありませんよ」

夫とそんな会話は久し振り。弥生は自然に笑顔になるが、一方でスマホのLINEには「会いたい」、「我祝你」と王からのメールが次々に入ってくる。弥生だって王に会いたい。会って、抱いて欲しい。「今日はダメなの」と打つと、「残念です」と返ってきた。
ハオ、ごめんなさい……弥生はスマホの電源を切った。

そんな日々が続いた11月上旬の秋晴れの土曜日の朝、朝食を終えて洗濯物を庭先に干している時だった、携帯が鳴り、弥生ははっとした。表示は「王浩」となっている。

(ハオ……)
リビングを振り返ると、夫はテレビを、息子はまだ朝ごはんの最中だ。
足音を立てないように二階に上がると、「どうしたのよ」とトイレに籠り、小声で出ると、「会いたいから」と甘い誘いが聞こえてきた。弥生だって同じ気持ちだが、独身の彼とは事情が違う。

「今はダメよ」
「どうして?」
「だって、夫も子供も家にいるのよ」
「この頃は、いつもそんなことを言って」
「お願い、我慢して」

しかし、電話越しに、王が「无聊(つまらない)……」とため息をつくのが聞こえる。事情は分かったけれど、「もう限界だよ」という声が聞こえてきそうだ。
私だって会いたいのよ……言いたい気持ちを抑えていると、
「午後なら、『買い物に行きたい』って言えるでしょう」と言い出した。

困る、困る、困るの……揺れる弥生は「でも……」と答えるのが精一杯。そこに、「我愛你」と囁かれると、ケーキでも買って帰ればと、言い訳が頭に浮かび、「分かりました」と無意識に口から出ていた。
結局、午後1時に町田の小田急の出口で待ち合わせることになったが、それまでが問題だった。

「おい、コーヒーを淹れてくれよ」と夫が言い出せば、サッカースクールに出掛ける息子が「ママ、ユニホームが見つからないよ」と。しかし、頭の中は王のことばかりで、気が回らない。

コーヒーメーカーからいい香りが立ち込めているのに、すっかり忘れ、「おい、まだかよ」と夫から催促される始末。二階に上がって箪笥を開けても、何も手に着かず、ユニホームを探さずぼんやりしているばかりで、追いかけてきた息子に「遅れちゃうよ」と泣きつかれてしまった。

そんな具合だから、11時半前に昼食の用意をして、「買い物に行って来ます」と化粧を始めると、普段なら構いもしない夫が「なんだよ、そわそわして」と訝しがっていた。
慌てて「お、お友だちから電話があって」と取り繕ったが、声は少し上ずっていた。

欲情の爆発

お気に入りの膝丈のワインレッドのニットのワンピースを着て、午後1時少し前、小田急線の町田駅に降り立った弥生は王の車を見つけると、助手席に滑り込むように乗り込んだ。

「ふふふ、誰かに見られたら困るから」と拗ねて見せると、隣の相模原市に住む王は「僕は構わないけど」と笑い、それに弥生は「本当に意地悪なんだから」と乙女のように甘える。いい雰囲気なのに、後ろから来た車が「邪魔だよ」とばかりにクラクションを鳴らす。

「うるさいなあ」とミラー越しにドライバーを睨んだ王はブーとアクセルを吹かして進行方向に車を走らせると、町田天満宮のところで折り返し、JR町田駅の裏手にあるラブホテル街に向かい、目立たない造りのホテルの駐車場に車を入れた。

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東名川崎インター辺りとは違い、周りは住宅街。覗き見するような者はいないが、弥生は顔を見られないようにして王に隠れるように寄り添って玄関を潜り、彼がフロントで鍵を受け取る間も顔をふせていた。だが、エレベーターに乗り、二人だけになると、待ちきれないように背伸びをして唇を合わせる。そして、「5F」のランプがついて降りると、既に淫靡な空気が漂い、「503」号室のドアを開けると、そこは、茶とグレーを基調にしたシックな造りだが、窓が無く、昼間なのにシェードランプが点され、中央にデーンと設えられているキングサイズのダブルベッド、その枕元のベッドサイドにはコンドームとティッシュボックスが用意されている。

こんな部屋に入るのは1ケ月振り。弥生は頬が赤らみ、興奮が隠せない。
そこに、ガチャと音がしてドアが閉まり、振り返った弥生を王が抱き締め、チュッ、チュッ、チュッ……と唇を合わせてくると、もう堪えられない。

「ハオ、好きよ、好きよ!」と首にすがりつき、チュッパ、チュッパと吸い返した。二人は抱き合ったまま靴を蹴飛ばすようにして脱ぎ、フロアーに上がると、王は手にしていた部屋の鍵や車の鍵を、弥生はハンドバッグをその場に投げ出し、そのままベッドに倒れ込んだ。そして、舌と舌が求め合って絡まり合い、唾液が溢れて口から零れるが、それをズルズルと吸い合う。もうそれだけで股間がしっとりしてきたが、王に体を弄られると、体の芯が熱くなってくるような感じがして、パンティが濡れるのがはっきり分かった。

王は肩から下に連なるボタンを外し、弥生を裸にしていくが、淡いピンクのパンティは色がすっかり変わり、生まれたままの姿に戻った時には、何もしなくてもいい程だった。

一方、王もペニスが反り返るほどに硬くなり、目には早く結ばれたい気持ちが現れていた。だが、無防備はダメだ。何も着けないのがいいに決まっているが、妊娠は困る。だから、「ハオ、ハオ、コンドーム」と手渡した。王は機先を削がれた感じだが、硬いペニスは聊かも衰えず、棒にでも被せるようにそれをペニスに着けると、「ミィシォン……」と太腿を抱えて体を被せてきた。すると、今度は弥生がきつい。濡れていても、膣が十分に広がっていないから、亀頭が膣口を押し広げて入ってきた時、「あ、あ、あぅぅ……」と呻きながらしがみついていた。

しかし、性器が繋がってしまうと逆に膣がペニスをぎゅっと握り、離さない。それどころか、抱き合っているだけでも、ジンジンとくるが、「ミ、ミィシォン……」と若い王が腰をしなやかに動かし、ペニスを膣の中に行き来させると、それだけ性器同士が擦れ合い、刺激は加速度的に高まる。そして、「あ、あ、いや……あ、あああ……」とくぐもった声が漏れ出し、頭は真っ白。気が付かぬうちに、弥生の鼻腔は自然と広がり、頬は赤らみ、額にはうっすらと汗が滲んでいる。

何も分からなくなった弥生は眉根を寄せ、ただただ、「ああっ、あっ、あっ、あっ、うっ、うっ、うっ、ああっ、あああっ……」と大きな声を上げて身を捩るが、同時に膣も拡張と収縮を繰り返し、締め付け奥へ奥へと蠕動して射精を促すから、久し振りの王も危うくなってきた。

間もなく、「あ、あ、ミ、ミィシォン……」と体を強張らせ、弥生の腰を引き寄せると、膣の中でペニスが膨らみ、「うっ!」と息を吐いた瞬間、亀頭の先から大量の精子がゴムの中に飛び出した。

(続く)

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