現代春画考~仮面の競作-第12話 2660文字 バロン椿

現代春画考~仮面の競作-第12話

その話は、日本画の巨匠、河合惣之助の別荘に、悪友の洋画家の巨匠、鈴木芳太郎が遊びに来たことから始まった。
本名なら「巨匠が何をやっているんだ!」と世間がうるさいが、仮名を使えば、何を描いても、とやかく言われない。
だったら、プロのモデルじゃなく、夜の町や、それこそ家政婦まで、これはと思った女を集ろ。春画を描こうじゃないか。

作家名:バロン椿
文字数:約2660文字(第12話)
管理番号:k086

助け合う二人

10月、雲一つない秋晴れ。この日は鈴木画伯のアトリエではなく、ビルの会議室を借りていた。
「俺のところは狭いからな。画商から借りたんだ」
「ははは、俺のところは田舎だからな」

ご機嫌な二人が部屋に入ると、既に米蔵と美恵子が待っていた。二人とも浴衣姿。米蔵は紺地の、美恵子は白地に赤い花柄模様の浴衣を着ていたが、二人の表情は硬く、顔が青白い。

緊張するのは当たり前だが、モデルには自然な姿でいて欲しい。気持ちを和らげて上げようと「いやあ、お似合いだね」と鈴木画伯は明るく声を掛けたが、米蔵が「いや、あ、ありがとうございます」と返すのが精一杯。美恵子は逆に恥かしそうに下を向いてしまった。
「ははは、まあ、気楽に」

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鈴木画伯は頭を掻いていたが、河合画伯は「余計なことをするな」と彼のお尻を蹴飛ばしていた。
今回の舞台設定は和室。鈴木画伯のアトリエにはそのような物がないので、河合画伯の別荘からトラックに積んで運んできたが、使い慣れたアトリエとは違い、初めて使う会議室なので、配置状況も含め、マネージャーの岡田もアシスタントはセッティングの出来具合が不安だった。

「如何ですか?」
「うーん……ちょっと、畳が気に入らんな」と写実主義の鈴木画伯は注文をつけようとしたが、河合画伯はこれ以上、あれこれ注文をつけると、アシスタントは緊張するし、その緊張が米蔵と美恵子にも伝わり、いいことはないと考えたのか、「あ、いいよ、いいよ、それでいい。うん、後は俺たちの腕次第だ」と押し切った。

「じゃあ、始めます」とマネージャーの岡田が手を上げると、ライトに照らされた畳の舞台で、米蔵が浴衣を脱いだ。贅肉が一つもない筋肉質の体、六尺褌をきりりと締めた、その背中には大きな龍が描かれていた。
両画伯は「見事だ」、「うん、これは美しい」と頷いていた。

続いて、美恵子が米蔵の手を借りて浴衣と肌襦袢を一緒に肩から外すと、その腰には短い布切れ、湯文字が巻かれていたが、それよりも白い肌は耳から首筋、そして背中まで朱に染まっている。体中で恥じらいを感じていることが、両画伯にひしひしと伝わってきた。仕事と割り切っているプロのモデルではこうはならない。

「美しいね」、「いいねえ」と両画伯はため息をついたが、それが耳に入った美恵子は恥かしさのあまり、畳の僅かな段差につまずいた。が、それを米蔵がしっかりと抱きかかえる。
「うん、これはいい」

鈴木画伯は思わず呟いた。河合画伯は「よし描くか」と鉛筆を取り、鈴木画伯も続いた。
恥かしさを堪え、美恵子は米蔵の六尺を解いたが、立ち上がって体をぴったりと寄せているから、それは誰からも見えない。そして、米蔵も美恵子の湯文字を解くが、これも体をぴったり寄せているから、誰にも見せない。

「ちょっと、離れて。見えませんよ」とアシスタントが注文をつけたが、河合画伯が「いや、それでいい。これこそ夫婦だ」とそれを止めた。
鈴木画伯も「うん、素晴らしいよ。そのまま、そのままでいいよ」と頷いていた。

信頼すればこそ濡れる

二人は体を寄せ合ったまま舞台に敷いた布団に横たわった。そして、唇を合わせての短い前戯の後、米蔵がくいっと上げた腰を前に下ろすと、「あん」という悩ましい声と共に下腹部は隙間がないほどにぴったりと合わさった。時間が短くても、あれこれしなくても、信頼しているからこそ、濡れる。

米蔵の腰が前後に振れるたびに、ピチャ、ピチャッと音が出る。
「いいなあ」
「うん」
両画伯の鉛筆は止まり、会議室内から余計な物音が消えた。

「あ、米さん、私、私、あ、ああ、逝く、逝く、逝っちゃう……」
「み、美恵ちゃん、お、俺も……」
その時、ズン!と音を立て、アシスタントの圭子がその場に座り込んでしまった。目が潤み、顔は赤く上気している。

米蔵の速くなっていた腰の動きが止まり、美恵子の体をぎゅっと抱いて、「うっ!」と息を吐いた。
「逝った……」
「ふぅ……」
見ていた者たちからもため息が漏れた。

米蔵も美恵子も荒かった息が収まり、顔が和らぎ、静かになったが、「あ~ん、もうダメ……」とアシスタントの圭子が胯間を押さえたまま、トイレに駆け込んでいった。
「パンツ、濡れちゃったんだよ」
「へへ、見てみたいな」

スタッフから笑いが零れていたが、河合画伯が二人に近寄った。
「米さん、迷惑かけたね」
「あっ、先生。面目ねえ、変な様を見せちまって」
「いやいや、そんなことより、美恵子さんを大事にしなさい」

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そう労った河合画伯は手に持っていたバスタオルを二人の体に掛けた。
(へえー、河合にもこんなところがあるんだ……)
鈴木画伯が感心していると、「感動したんですよ」と河合画伯の吉光マネージャーが小声で話し掛けてきた。
次のモデルは美人で有名なホステスの小夜子(さよこ)。きれいに結った日本髪、鮮やかな柄の浴衣。美恵子が逆立ちしたって絶対に敵わない。

しかし、今日は間が悪い。
「いいかしら?」と帯を解き始めたが、両画伯は上の空。岡田マネージャーが慌てて「あ、お、お願いします」と言ったものの、一向に筆を取る気配がない。
「どうしたのよ?」

アシスタントの圭子は小夜子から解いた帯を渡されたが、彼女も濡れた下着を替えたばかりで、まだ興奮が醒めず、「え、は、はい……」と言葉を濁すだけ。
「何なのよ、皆して……」と小夜子は品(しな)を作りながら全てを脱ぎ捨て、日本舞踊で鍛えた見事な裸体を披露したが、雰囲気は変わらなかった。

「あの、こちらへ」とアシスタントは舞台を指したが、いたくプライドを気付けられた小夜子が見向きもせず、全裸のまま鈴木画伯に近寄ると、「先生!」と鈴木画伯の脛を蹴飛した。

「あ、痛っ……」と脛を押さえたが、突然、現実に引き戻された画伯は「あははは、小夜子ちゃん、とってもきれいだよ」と取ってつけたような笑いを浮かべた。だが、それは火に油を注ぐようなもの。一層、彼女を怒らせたしまった。

「ウソ!ちっとも絵を描いてくれないじゃない」と怒った小夜子は、「違う、違う。しっかりと目に焼き付けているんだよ」と取り繕う画伯を振り切り、「ふん!もう嫌い。二度とお店に来ないで」と脱いだものを抱えて、裸のまま会議室を出て行ってしまった。

たが、鈴木画伯にとっても、河合画伯にとっても、そんなことはどうでもよかった。
「今夜は飲むか」
「おお、いい酒が飲めるぞ」
その夜、米蔵は札束がぎっしりと詰まった祝儀袋を受け取った。そして、それには二枚のグリーン車のキップと、「幸せに暮らせ」との短いメッセージが添えられていた。

(続く)

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