現代春画考~仮面の競作-第20話 2240文字 バロン椿

現代春画考~仮面の競作-第20話

その話は、日本画の巨匠、河合惣之助の別荘に、悪友の洋画家の巨匠、鈴木芳太郎が遊びに来たことから始まった。
本名なら「巨匠が何をやっているんだ!」と世間がうるさいが、仮名を使えば、何を描いても、とやかく言われない。
だったら、プロのモデルじゃなく、夜の町や、それこそ家政婦まで、これはと思った女を集めろ。春画を描こうじゃないか。

作家名:バロン椿
文字数:約2240文字(第20話)
管理番号:k086

並木謙太郎

ナターシャはひとまず雑誌社の仕事で、一足先に春を迎えている沖縄に出掛けたが、梅の花が美しい都内の日本旅館の離れでは、もう一つの企画「大年増の奥方と若侍のセックス」の写生会の準備が進んでいた。

「こんにちは」
「やあ、よく来てくれたね」
仲居に案内され、離れの玄関に現れた「ケン」こと並木(なみき)謙太郎(けんたろう)は意外なことにスーツにネクタイ姿だった。しかも、「本格的ですね」と上がり端に置かれた赤い行燈、そして、廊下に敷いた赤い毛氈に感心していたが、その話し方も丁寧で品がいい。

この業界だから、多少の擦れっ枯らしも仕方がないと思っていたが、それは予想外。その上、谷山から「背は162だったかな、小柄ですよ」と聞かされていたが、童顔な顔立ちから、見た目はもっと小さく見える。

セクシーコスプレ02

「吉光さん、これはいいですね」
「全くです。それであれ(パイパン)ですから、まさに元服前の若侍。画伯も満足しますよ、岡田さん」
1時間程前に到着した「クラブ 茜」のママは既に控え室に入り、「大年増の奥方」に変身しつつある。

「へえ、屏風もあるんだ」
奥の座敷を覗き込み、しきりに感心しているが、1時間もすれば、そのケンがママを抱く。想像しただけで、河合画伯の喜ぶ顔が目に浮かぶ。
「さあさあ、奥に控え室があるから、さっそく支度して下さい」
そう言ってケンをメイクの女の子に引き渡す吉光の顔には堪えきれない笑みが溢れていた。

手が速すぎる

「ねえ、これ、ちょっと地味じゃない?」
メイクを終え、日本髪の鬘をつけたママは鏡を見て、不満そうな顔をしていた。
彼女は元芸者だから、頭に描いていたイメージは簪を挿した銀杏返しだったが、映る姿は簪も無く、単に髷の先を切ったようなもの。それなのに、メイクの女の子は「先生の指示ですから」とにべもない。

そこに、「おやおや、よく仕上がったじゃないか」と当の河合画伯が入ってきた。
「先生、どうしてこれがいいの?」
「ははは、お殿様の未亡人、その役割だったけど」
事前に渡されたシナリオはそうだが、やはり小夜子には負けたくない。

「でも、この髪型、嫌いよ」と仏頂面のママは身を捩って甘えるが、遊び人の河合画伯は慣れたもの。「どれどれ、体温でも測ってみようか」と胸元から手を入れる。
まあ、どこにでもある戯れだが、隣の控室はそうではなかった。

「こうかしら」
担当の雪江はケンの顔にどうらんを塗り、元服間近の武家の少年に変身させていたが、彼の顔には雪江の甘い息が何度も吹きかかり、おまけに白いブラウス越しだが、淡いピンクのブラジャーが目の間にチラつく。

(いいなあ、この女。25くらいかな……頂いちゃうか……)
ムラムラしてきたケンが「あ、あの、すみませんが」と声を掛けると、そんな企みなど知らない雪江は右手にスポンジ、左手にどうらんを
持ったまま、無防備に「なあに」と笑顔で覗き込んできた。
こんなチャンスを彼が逃す訳がない。

「へへへ」と雪江を左手で抱き寄せると、そのまま唇を奪い、右手はお尻を円を描くように撫でまわす。
「イヤっ、ダメ!」と声を出そうにも、唇を塞がれ、それもできない。
谷山が言いそびれた、「手が速い」は「速すぎる」に訂正した方がいい。

「そろそろ時間ですが」と部屋の外から呼ぶ声が聞こえてきたころには、たっぷりと乳房を揉みしだかれ、「はあ、はあ、はあ……」と息も絶え絶えの雪江はスカートはおろか、パンティーまで剥ぎ取られ、ケンが後ろから挿入する寸前だった。

「あ、すみません。もう10分くらいで終わりますから」
と慌てて雪江の口を手で押さえたケンは、「早くして下さい」と外の者が立ち去るのを待って、「入れるよ」と腰を突き出し、ペニスを彼女の中に挿し込んだ。

若侍登場

「遅いな、10分と言ったんだろう?」
「ええ、そうですが」
「もう15分以上経つぞ」
離れの大広間では主役のママ、桜井茜を囲み、河合画伯、鈴木画伯が待ち構えていたが、肝心のケンこと並木謙太郎がメイクに入ったきり、控室からなかなか出てこない。

「何をやっているんだよ……」とイライラした吉光が様子を見に行くと、湯上がりのような赤い顔をしたケンがちょうど控え室から出てきたところだった。
「遅いじゃないか」と叱ろうとした時、「ごめん、待って」とか細い声が聞こえ、同じく赤い顔をしたメイクの雪江がスカートのジッパーを上げながら出てきた。

セクシーショーツ一覧02

(ま、まさか……)
驚いた吉光が「き、君たちは」と言いかけたが、「すみません」と頭を掻くケンと、恥ずかしそうにその背中に隠れる雪江を見れば、何をしていたかは明白だ。
(こいつ、とんでもない野郎だ……)
吉光は言葉を失ってしまったが、これはほんの序の口に過ぎなかった。

「どうも遅くなりまして、すみません。本日、モデルを務めさせて頂きます並木謙太郎です」
皆が苛立ちを抑えて待ち構える大広間で、殊勝な面持ちで正座し、このように礼儀正しく挨拶する姿は見るからに好青年。メイクの効果もあるが、まさに元服前の、しかも、由緒正しい良家の若侍役に適任と言っても過言ではない。

(これは、誰もが騙されるわ……)
後ろから見ていた吉光はそう思ったが、その通り、「まあ、そう固くならずに」と河合画伯が声を掛けると、「へえ、若いな。幾つなんだ、君は」と鈴木画伯が身を乗り出し、それにつられ、少し緊張していたママも着物の裾を引き摺りながら近寄り、「ふふふ、16かしら?」と言い出す始末。場の雰囲気は一変し、河合画伯も「面白い奴を見つけてきたな」と笑っていた。

(続く)

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