現代春画考~仮面の競作-第2話 3210文字 バロン椿

現代春画考~仮面の競作-第2話

その話は、日本画の巨匠、河合惣之助の別荘に、悪友の洋画家の巨匠、鈴木芳太郎が遊びに来たことから始まった。
本名なら「巨匠が何をやっているんだ!」と世間がうるさいが、仮名を使えば、何を描いても、とやかく言われない。
だったら、プロのモデルじゃなく、夜の町や、それこそ家政婦まで、これはと思った女を集ろ。春画を描こうじゃないか。

作家名:バロン椿
文字数:約3210文字(第2話)
管理番号:k086

だが、困ったのは岡田だ。「ヌードになって下さい」なんて浅井美恵子に言えば、「嫌らしい!」とほうきで叩かれるのはまだいい。「警察を呼びますよ!」と叫ぶ姿が目に浮かぶ。しかし、壁に掛けてあった女優の写真を見た時、「絶対にヌードは嫌よ」と言っていた彼女がふと漏らした言葉を思い出した。

「鈴木先生は本当に口説くのが上手なんだから。もう脱いじゃったわよ」

あの時も、鈴木画伯は「いやあ、参ったな。こんなにきれいな女性がいるとは思わなかった」とか、「手が動かない。ああ、どうしたんだ?気が狂いそうだ」など、どうしてそんなことが言えるのかと思える程に、褒め上げ、最後には「服が本当に美しいあなたを隠している」と言って、ついに裸にしてしまったことを思い出した。

(よし、その手があったんだ。これはチャンスかも知れないな……)
時刻はもう午前11時、悩んでいる時間はない。浅井美恵子には細かいことは何も伝えなくていい、とにかく、彼女をアトリエに連れて行けばいいんだ、後は鈴木画伯が何とかしてくれる。岡田は気が楽になった。

ストッキング01

脱がせ屋

「絵のモデルになって欲しいと言われても困るんです」
岡田から話を持ち掛けられた浅井美恵子は明らかに迷惑だと言う顔をしていたが、岡田も簡単に引き下がれない。

「まあまあ、浅井さん、とにかく先生がアトリエで待っていますから」
「嫌ですよ、私は」
「そんなこと言わないで。先生は巨匠ですよ。モデルに指名されるなんて、名誉なことですよ」
「巨匠とか、そんなことは私には分かりません」
「取り敢えずアトリエに行きましょう。返事はそれからでいいですから」

嫌がる美恵子を宥めすかしてアトリエに連れて行くと、「待っていたよ、美恵子さん。今日はよろしくお願いします」と鈴木画伯は満面の笑みを浮かべて待ち構えていた。美恵子は「いえ、あの、私は」と尻込みし、「モデルをするって言ってませんよ」と言おうとしたが、鈴木画伯に両腕をギュッと掴まれ、「ははは、緊張しているかな?大丈夫、普段通りでいいから」と言われ、断るタイミングを逸してしまった。

アトリエはすっかり準備が出来ていた。中央のステージはきれいに掃除され、ソファーや椅子も用意してあった。そして奥のクロゼットの前ではアシスタントの女性が浴衣やドレス等の衣装を揃えていた。

「それでは、私はこれで失礼します」
「おお、ご苦労さん」
立ち合ってくれると思っていた岡田が行ってしまう。「あ、いや、そんな岡田さん……」と美恵子は戸惑うが、そんなことに構わず、鈴木画伯はスケッチブックを手にすると、すっかりスイッチが入っている。

「ここに座って」とソファーを指差し、「気楽にそのまま座ってくれればいいんだ」と鉛筆を握って待っている。もう美恵子は出て行くことは出来なくなってしまった。言われるままに腰を下ろすと、「そうだ、それでいい」と画伯の鉛筆が動き始めた。

「あの」
「黙って、そのまま」
画伯の顔つきは変わり、描くことだけに集中している。
(まあ、裸になれってことでもないから、1、2時間、こうしていればいいんでしょう……)

美恵子は半ば諦め気味にそう思って座っていた。10分程して、「立って、腰に手を当てて」とポーズを変えるように言われた以外、アトリエは画伯の鉛筆の音だけがカサカサと響いていた。
「はい、ご苦労さん」

画伯はスケッチブックをテーブルに置き、アシスタントがコーヒーを淹れてくれた。時計を見ると30分も経っていなかったが美恵子は肩がパンパンに張っていた。

「疲れたかな?」
「はい、緊張しましたから」
「緊張したか、やっぱり。ははは」
画伯はコーヒーを飲みながら機嫌よく笑っていたが、美恵子は一刻も早くここから出て行きたい気持ちで一杯だった。

これで終わりにしてくれれば、嫌な思いをしなくて済む、そう思っていたが、「見てごらん」とスケッチブックを手渡されると、その気持ちは消えてしまった。
「えっ!……こ、これ、私ですか?」

巨匠と言われる画家の絵とはこんなに凄いものか!美恵子は圧倒されてしまった。ただの鉛筆書きだが、驚く程に自分の特徴を描き出している。スケッチブックを持つ手が震えてきた。
「ははは、美恵子さんがきれいだからだよ」

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いよいよ巨匠の口説きが始まった。
「美と言うのは、目に見える顔、形のことだけを言うのではないよ。心の美しさ等、内面から溢れ出るものも含めてのことなんだ。君は自分のそう言う美しさに気がついていないんだ」

「先生、そんな」
「僕は沢山の女性を見てきたが、君ほどの女性はそんなにいない。素晴らしい」
歯が浮いてしまう口説き文句だが、巨匠が口にするとそうはならない。
美恵子は頭が真っ白になっていた。

「せ、先生に描いて頂けるなんて、感激です」
「ははは、ありがとう。そうだ、あ、ちょっと、ごめん。これを見てもらおうか」
画伯は立ち上がると戸棚から大きな複製画を取り出した。

「ルネッサンス期のイタリアの画家サンドロ・ボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』というんだ」
「はい、見たことがあります」
「そうか、勉強家だなあ。美恵子さん、やはり、君は特別な人だな」
「特別?」
「そうだよ。美人と言われる奴は沢山いるけれど、人間、中身を磨かないとな。そういう意味で、さっきも言ったように君は素晴らしい、特別なんだ」

普通の男なら照れて笑ってしまうようなことも、巨匠は真顔で、しかも情熱的に語りかけるから、美恵子は完全に舞い上がっていた。
「こんな美しい君をモデルにして、このような美しい絵に描いてみたいな」
「えっ、ということはヌード……ですか?」

「そうだよ。生まれたままの姿にならなくちゃダメだよ。いいね?」
「あ、でも、恥ずかしくて」
「何を言っているんだ、美恵子さん。いいかい、『はずかしい』というのは、君が自分を信じていないからなんだ。君は美しい。その君が裸になったら、眩い光で囲まれ、もう唯の『浅井美恵子』ではない。天女になるんだ」

「あ、いえ、でも……」
「さあ、自信を持って、君の本当の姿、天女の『浅井美恵子』を見せてくれ」
画伯の迫力に気圧され、その場に立ち尽くす美恵子に、画伯は近寄ると、「本当に美しいな」と言ってブラウスのボタンに手を掛けた。

「あ、あの……」
美恵子は一歩、二歩と後退りするが、「気がつかなかった、こんな美人がうちにいてくれたなんて」とボタンを外し、胸を開いていく。アシスタントの女性までもが、「本当にきれいな人」などと言う。美恵子は抵抗する気持ちは無くなっていた。

「肌がきれいだな」と画伯の手は素肌に触れるが、抵抗する気持ちがなくなった美恵子は「あ、先生、そんな」と顔を赤らめるが、「いやっ」とは言わない。
「しっとりしているね。いいなあ、美恵子さんは。さあ、僕は絵の準備をするから、君も支度しなさい」

鈴木画伯、またの名は「脱がし上手の鈴木さん」。美恵子は画伯の操り人形になっていた。
言われるままに全裸になると、ステージの上で両手を後ろに組んで立つポーズから始まり、鬘を付けたり、あれこれと指示があり、ようやく描き上げたものは、美恵子が全裸で鏡の前に立ち、髪を直す姿だった。

「ははは、『湯上がり美人』ってとこかな」
画伯はとてもご機嫌だった。そして、その絵を見せられた美恵子は、「これが私……」と言葉を無くし、顔は真っ赤になっていたが、どことなく満足した様子だった。何せ、その絵は、下腹部の弛みやモヤモヤと茂る陰毛は美恵子そのものだが、乳房や腰回りは張りがあるように描き、何といっても顔を女優の真矢みきさんに似せてある。これが不満という女はいないだろう。

帰りしな、岡田から「ご苦労様。明日は休んで、明後日、いいね。じゃあ、これ、少ないけど」と札束の詰まった封筒を渡された。
「あ、そ、そんな」と美恵子はそれを岡田に返したが、「いいから、いいから」と押し戻された。この時から、美恵子はもはや「家政婦」では無くなっていた。

(続く)

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