貴重な舌技-第1話
人は誰でも、自分では気付いていない才能というのがあるのですよ。それに早く気付くことができるといいのですが、なかなかそう上手くいかないのが人生ですね。舌の動き一つとっても、できる人にはなんでもないことなのですが、できない人もいるのですね。その才能に気付けるかどうかも才能なのですね。
作家名:カール井上
文字数:約2620文字(第1話)
管理番号:k102
1.良雄と優香
「継母でしょう」
「継母っていうのも死語じゃないか、今どき。ステップマザーとか言うよ」
「継母は継母よ。同じことよ」
「まあ、そうかもしれないけど」
良雄と優香がいつものスターバックスで話をしている。ふたりは難関とされる国立大学の2年生だ。新入生のときに知り合って、付き合いはじめて1年以上が経過していた。もちろんセックスをする関係だ。
若いから一晩に何度でもつながりあえる。研究熱心なふたりはネットでいろんな体位を調べ、モニターを見ながら快感を追求しあっていた。しかし何となく最終的には正常位からの屈曲位、あるいは後背位、または騎乗位がいける体位だとわかってきていた。
それをふたりともあえては口にしないがいつも何となくそういう流れでフィニッシュを迎えている。愛し合う場所はそのスターバックスから程近い優香のアパートの一室が多かった。
ふたりとも難関国立大学に合格したということは高校もハイレベルなところだったわけだ。それぞれ別の高校であったが、合格するのも大変だし、入学後も受験指導に熱心な教師たちから日々厳しく指導された。異性との交際とかましてや性的経験など、興味はあったがそれどころではなく受験勉強に打ち込んでいた。
クラスメートには受験はもう適当でいいやと思うか、あるいはそれほど死に物狂いにならなくてもある程度の成績を残せる子もいて、彼らはけっこうよろしくやっていたようだ。もちろんセックスの相手となる彼女や彼氏がいて。
良雄が高2のとき教室で前の席に座っているなかなかイケメンのモテ男が振り向いて聞いてきたことがあった。
「良雄さあ、サクランボの持つところを何ていうか知ってるか?」
「つる、か」
「違うな。柄、え、だよ」
「そうなんだ」
「その柄をさあ、口の中で結べるか?」
良雄はそれはできるので、「できるよ」と答えた。
「じゃあ、舌を尖らせて丸められるか?」と聞いてくる。
「こうか」
良雄は舌を突きだし先を尖らせて、両サイドを上にあげて丸めて舌を筒のようにした。
「おまえ、すごいな。女に悦ばれるよ」
モテ男はうらやましそうな顔をして言った。
そのときはどういうことか分からなかったが、何となく性的な行為に関することなのだろうと思っただけでそれ以上は追求しなかった。今は優香相手にその絶妙な舌の動きを有効に活用している。
優香も高3のときクラスのある女の子から言われたことがあった。
その子は噂では3か月ごとに彼氏を代えているということだった。いつも短くしている制服のスカートからほっそりした脚をむき出しにして、肩より長い髪は少し巻かれていた。
「ねえ優香、人間の口ってなんのためにあると思うかって妹に聞いてみたのよ。妹は小学生なんだけど。なんて答えたと思う?」
「そうねえ、美味しいものをたべるため、とか?」
「ちょっと違ったわ。妹はませているの。恋をささやくためにあるんですって」
「えー、すごいわね」
「でもね、せっかくだから教えてやったわ」
「何て教えたの?」
「自分のために使っているうちはまだ一人前じゃないのよって」
そのときは、優香は意味がわからずぽかんとしていた。そんな優香をみてその子は笑っていた。今は自分の口を良雄のために使っている。
大学で知り合ったふたりは、お互いに似た者同士だということに気付き、すぐに打ち解けることができた。そしてふたりとも同じように高校生のときはあえて抑圧してきた性への興味を、お互いを相手に思いっきり噴出している。
良雄の舌技を優香は気に入っている。10分でも20分でも自分の股間を良雄の舌に好きにさせている。気持ちいいので飽きることはない。
その分、当然お返しに良雄のぺニスを嘗めあげ、頬張り、唇でしごき気持ちよくさせる。
優香は良雄以外のものは見たことはないので、それが大きいのか小さいのかは分からないのだがそれはどうでもよかった。充分硬くなったそれを、膣の中に入れてもらえば気持ちよかった。
初めてのときはさすがにちょっと痛かったが、2回目からは快感を得られた。若さのせいか良雄は1分も持たずに射精してしまうこともあったが、その分すぐに回復しカチカチのものをもう一度ぎゅうっと奥まで入れてくれるのでなんの不満もなかった。
良雄の父親は貿易商で、仕事柄海外へ出向くことが多く留守勝ちだ。母親は実は良雄がまだ3歳のときに病気で亡くなっていた。その後はその母の姉妹に世話をされたりしていた。
貿易商の父親は収入はかなりあり資産家とも言えるほどであったので、何かに不自由したということはなかった。母の死後は再婚を繰り返していたが、どの相手とも長続きしなかったようだ。そして今、何人目かの相手が同居している。
父親は相変わらず不在勝ちで、その新しい母親も退屈そうだ。しかもこの新しい母親はかなり若いのだ。良雄と五歳ほどしか違わない。父親は月に10日も家にはおらず、20日ほどは良雄はその若い母親とふたりきりなのだ。
ある夜、良雄が家に帰るとシーンと静まりかえった家の中から、ブーンという振動音が聞こえた。いつもは聞こえることのない音だった。音の元をたどってみると、父母の寝室に行き着いた。振動音だけではなくか細い喘ぎ声がしてきた。
寝室の扉は少し開いている。そおっと覗きこむと、若い母親がベッドの上にいる。薄いピンクのネグリジェを纏い、両脚を開いて、手にしたピンク色の何かを、パンティを着けていないむき出しの股間に当てている。
というかそのピンクのものの先端は股間の秘所に入り込んでいた。そしてブーンという振動音はまさにそこから聞こえていた。喘ぎ声が段々大きくなってくる。声がアーからウーに変わってきた。股間のピンクのものは一層奥まで入り込んでいるようだ。
振動音が不鮮明になってきていた。喘ぎ声が大きくなり、母親は顎を突きだしてのけ反った。いってしまったようだ。良雄は音をたてずに扉を閉めて自分の部屋へ行った。こんな話を優香にしたのだ。
「なんだかさあ、機械を相手に絶頂に達するっていうのもちょっと可哀そうな気がしてさ」
「いいじゃない、それが好きなのかもしれないし。そんなに気になるなら、“僕のを使ってみますか”って聞いてみたら?」
「そこまではどうかなあ」
「でも可哀そう、なんて思うっていうことはそういうことなんじゃないの」
「そうかなあ。分かったよ。今夜聞いてみるよ」
「え~マジで言ってるの。じゃあ明日どうなったのか教えてよ」
「まあ、それは教えるけど」
そう言ってふたりは店を出た。
(続く)
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