ビッグさん-第3話 2850文字 ステファニー

ビッグさん-第3話

冴えない埼玉の主婦が新宿のアクアリウムレストランで開かれたシークレットパーティーに参加する物語

作家名:ステファニー
文字数:約2850文字(第3話)
管理番号:k084

かといって、離婚は考えていない。私は経済的な理由から、夫は世間体と生活上の利便性から、夫婦でいることのメリットがある。洗濯と炊事は定時で上がれる私が行ない、週末に買い物と掃除を手分けしてやる。この生活リズムに不満はない。また性生活以外においては、二人の相性は悪くなく、むしろ話も合い楽しい。すでに子どもは持たない方針で合意をしており、代わりと言ってはなんだが、犬を飼う予定である。目下、犬種選びの最中だ。小さな隙間はあっても、それを塞いでしまう壁の方がはるかに大きいと言えよう。

それでも、やっぱり。
一抹の物足りなさを感じざるを得ない。夜な夜な疼く女の真髄をどうやって抑えればいいものなのか。
無論、それは無理だ。

私は毎晩、寝室に入っては、寝しなに官能小説のサイトを読み耽ける。いつしかこうしないと眠れなくなっていた。
そして半年前からは、私自身もサイトに投稿するようになった。そのサイトこそが「ブラックレッド同盟」だ。私は「ケイトリン」という名でサイトに短編小説をアップしている。

テディプレイスーツ一覧01

書き手として登録してほどなく、サイト主宰者からオフ会のお知らせが来た。平日の夜間に新宿で、とあったため、家事を抱える私は参加しなかった。
だが今回、偶然にも夫の出張が重なった。六年生の担任をしているため、日光への修学旅行に引率するからだ。
私は満を持して、イエスの回答を返した。

————

扉の先には、きらびやかなバンケットホールが広がっていた。とてもそこが地下室とは思えなかったし、むしろ上階のメインダイニングよりも魅力的だ。
まるでヨーロッパの舞踏会を見ているかのような華麗な部屋だ。天井には大きなシャンデリアが吊るされ、調度品と思わしき応接室セットがそこかしこに置かれている。そこに花を添えるようにクラシック音楽が響く。

しかし、私はこの時、気づいていなかった。この部屋の違和感に。
やたらとソファが多いことと、四方が鏡に囲まれていることに。
出席者の身なりも洗練されていた。女性はオペラ歌手のようなロングドレスを着ていて、男性もタキシードで決めている。着古していて、しかも数年ぶりにタンスから引っ張り出した紺の膝丈ワンピースで来てしまった私はバツが悪かった。

「こんばんは。貴女、見ない顔ね」
夜会巻きにした女性に私は話しかけられた。大きく肩と背の開いた緑のロングドレスに、数カラットはあると思われる髪飾りが目を惹く。
「はっ、初めまして。初めて参加します。ケイトリンです。よろしくお願い申し上げます」

和風の顔立ちだが、目鼻立ちの大きなその女性は話し方や仕草に品があり、私は緊張した。微笑むとまるで京都の舞妓さんのようだが、話し方は標準語だ。
「まぁ、ケイトリンさんね。内藤めあです。こちらこそどうぞよろしく。そんなに畏まらなくてよろしくてよ。ケイトリンさんの作品は可愛らしいものね。きっと心の綺麗なお方なのかな、と想像しておりましたの。その通りのお方のようで嬉しいですわ」

「とんでもないです。私なんてまだ新参者です。内藤さんにお読みいただいているなんて、恐れ多いです」
内藤めあは、サイト内でも随一の閲覧数を誇る。古参の作家であるらしく、レビューには随分古い日付けの記載があったりする。男女の心の機微を繊細に記した作風であり、文筆力も高い。なぜこんな裏サイトに甘んじているのか不思議なくらいだ。

「ところで、気になっておりましたの。ケイトリンさんっていうお名前の由来は何かおありですの?」
「えっ、ええ。ファンだったフィギュアスケートの選手から拝借しています」

「まぁ、それって、カナダのケイトリン・オズモンド選手よね?平昌オリンピックで銅メダルに輝いた」
「そうです!よくご存知で!」
私はめあさんがオズモンド選手を憶えていてくれたことが嬉しくて、興奮してしまった。

「私、フィギュアスケートが大好きなんですの。五輪は毎回録画して、夏まで観てるわ。ジャンプの見分けも、もちろんできるわよ」
「それはすごいコアなファンですね。尊敬します」

ランジェリーブランドのモンシェリ一覧04

「ケイトリンさんはカナダ選手ファンなんですの?」
「カナダとアメリカの選手推しです。今はブレディ・テネル選手が好きです。北米の選手は明るい雰囲気で、元気がもらえるんです」

「なんだかわかりますわ。日本の選手は応援してるけど、それは当然、的な空気があって、観てるとハラハラするばっかりになっちゃう。でも外国人選手は損得勘定無しで観ていられるから、楽しんで観戦できちゃう」

「わかります、その気持ち。めあさんは推し選手はいらっしゃいますか?」
「ロシア選手ね。特にアリーナ・ザキトワ。彼女の音楽の使い方は天才的よ。最近は4回転が出来ないからって、批判が集まっているけど、それはお門違いもいい所。って、あらやだ、私、ごめんなさい。フィギュアの話だと、つい熱くなってしまうのよ」

「いえ、とんでもないです」
私とめあさんの話を一時中断するかのように、扉が開く音がした。入ってきたのは、長身でサラサラなロングヘアが印象的な、スレンダー美人だ。スパンコールでできたシルバーのミニドレスに白いファーショールを合わせている。小さな顔に、はみ出さんばかりの大きな瞳がキラキラと耀いている。おそらくまだ20代なのだろう。頬の張りがピンとしている。

「あの方、AZUMIさんよ」
めあさんがそっと私に耳打ちした。AZUMIは私と同じ頃にサイトデビューしていたが、私よりもずっとたくさんの閲覧数を稼いでいる。初体験の女子高生を描いた作品が、若い世代に共感を呼んでいるらしい。

「なんてキレイな方。何をしていらっしゃるのかしら」
「モデルをされているそうよ」
なるほどスタイルが良いわけだ。私はAZUMIの脛が長く細い脚に見惚れた。ミニスカートから伸びる素足とピンヒールのサンダルが眩しかった。

「モデルさんだなんてすごい。私とは住んでる世界が違いすぎる」
「あらあ、そんなことないと思いますわ。貴女だって凄いもの」
「とんでもないです。私なんて埼玉の冴えない主婦ですよ」

「そんなに謙遜なさるな」
めあさんは私の肩を寄せ、胸元を指差した。
「お宅のバスト、サイズが尋常じゃないのは明白でしてよ」

私は背筋がゾッとした。
そうなのだ。
すべてが凡庸な私の中で、唯一、非凡な箇所があるとしたら、乳房の大きさと言える。

「私、エステティシャンですの。最近はバストアップケアが流行ってまして、人様のお胸を拝見する機会が多いですわ。だから一見して、カップ数はわかりますの。貴女ですと、Gカップといったところでしょうか」

当たりだった。でも、私は肯定はせずに、めあさんをはぐらかした。
「貴女ほどのバストは、この国だとそうそういるものではなくてよ」

それは大学時代に私を抱いた彼にも言われた。「すげぇ、すげぇ」と連呼し、ひどく愛でていた。彼が私をワンナイトではなく、リピートしてくれたのは、他ならぬこの胸のおかげだろうと思う。

「こんばんは。ご無沙汰しております」
男性の声がして、私とめあさんはふと我に返った。振り向くと、柔和な雰囲気の好青年がいた。

(続く)

※本サイト内の全てのページの画像および文章の無断複製・無断転載・無断引用などは固くお断りします。
リンクは基本的に自由にしていただいて結構です。

▼セクシーランジェリー通販サイト
インナージュエリー
ベビードール
セクシーショーツ
セクシーブラ&ショーツ
セクシーコスプレ
メンズパンツ
セクシーテディ
網タイツ・ストッキング
ボディストッキング
ガーターベルト
無料で読める官能小説一覧

コメントの入力は終了しました。