語られぬ昭和史-第2話 3470文字 バロン椿

語られぬ昭和史-第2話

ほんの少し前だったのに、既に「昭和」は懐かしい響きになってきました。
以前、筆者は「歴史秘話―ある素封家の没落」というものを本サイトに発表しました。
今回は昭和に起きた3つの事件について、その裏側で起きていた男と女の話を交え、「語られぬ昭和史」として発表させて頂きたいと思います。

出稼ぎの悲劇(昭和38年(1963)~昭和41年(1966))

東京都と地方では、文化的、社会風俗的に、さらにニュース等の伝わるスピードにも大変な格差があった時代。性の世界も大きな格差がありました。
これは、雪深く冬場の仕事に乏しい地域から東京に職を求めてきた、所謂「出稼ぎ労働者」に関する悲劇です。

作家名:バロン椿
文字数:約3470文字(第2話)
管理番号:k121

1.出稼ぎの悲劇ーその裏側では

東京居残り

昭和39年4月、土産を抱えて男たちがバスを降りてきたが、その中に夫の姿がなかった。
「源蔵さん、うちの人は?」
「牧ちゃん、孝雄からこれを預かってきたよ」
「どうしたの?早く帰ってこないと、田圃の手入れも出来ないよ」
「東京は人手が足りないんだ。孝雄は残って働くって。俺も誘われたが、帰って来た」

「急にこんなこと言われたって・・」
当時は電話がある家は多くなかった。それに回線が少ないから、遠距離電話は電話局に申し込まなければならなかった。繋がるまで30分、1時間と待たされる。なにより電話代が高いから、いちいち電話を架けて確かめる訳にもいかない。

事実、夫の他に、一緒に行った山本(やまもと)富雄(とみお)も東京に残ったと聞かされた。
そして、渡された手紙にはこう記されていた。
「牧子、すまない。今年はこのままこっちで働くよ。
孝文は2年生、来年は郁代も学校に上がるから、もっと金を稼がないといけない。
田植えは源蔵さんに頼んだから、上手くやってくれ。
それじゃあ、体に気をつけてな。
孝雄」

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天候に左右され、作物が売れた時にしか現金が得られない農業とは違い、東京の仕事は確実に現金が得られる。それは、夫の言う通りだが、出稼ぎに行った者の話では、東京には誘惑が多いという。
「牧ちゃん、孝雄は大丈夫だ。真面目に一生懸命に働いている」

北村源蔵にそう言われれば、それを信じるしかなかった。
事実、それから毎月、夫からはきちんと手紙を添えてお金が送られてきた。
「みんな、元気か?無理するな」
そんな短い手紙だったが、牧子はとても嬉しかった。

不信

「あ、お父ちゃんだ!」
待ちきれず、30分も前からバス停に立っていた孝文と郁代は夫を見つけるとバスから降りてくる夫に駆け寄っていった。
「孝文、大きくなったなあ」

夫は息子の頭を撫で、娘を抱き寄せると、牧子に向かって、「ただいま」と言ったが、見たこともない色と柄の半袖のアロハシャツとスラックス姿に、牧子は違和感を感じていた。

夫は気になったのか、「派手か?」と聞いてきたが、牧子は「うーん」としか答えられなかった。それよりも、お正月から半年余り過ぎただけなのに、何となく顔付きがこの土地の男とは違っていたことが気に掛かっていた。

その夜、夫は「牧子」と布団に入ってくると、寝間着の前を開き、唇を重ねながら、執拗に乳房を揉みしだいてきた。
抱かれるのはお正月以来。
これまでの夫とのセックスは、隣の部屋に両親と子供たちが寝ていることもあり、口づけはするが、直ぐに性器を指で弄り、濡れてきたらペニスを入れる簡単なものだった。

たが、その夜はいつもと違う。キスの雨を注ぎながら、太股からお尻を何度も撫で回し、「あ、あっ、あ、あああ……」と喘ぎが自然に出るほどに焦らしてから、体を下げると、いきなり陰毛の下部に、口を持ってきた。陰部を舐めてもらうなど、されたことが無い。

「あ、あんた、いや、いや、あああ、そんな汚いこと……あんた、いやよ、いやあ……」と慌てて体を捩るが、既に両方の太腿を肩に担ぎ上げる格好で顔を被せているから、止まらない。牧子は「あ、あ、あんたっーー」と喘ぎは叫びに近くなり、もう訳が分からなくなっていた。
セックスが終わった時、布団はオシッコを漏らしたように濡れていた。
しばらくして、夫は高鼾で寝入ってしまったが、牧子の心の中では、「この人、女がいるんじゃないの……」と不信の念が芽生えてきた。

行方が分からない

女の感は的中した。
「世界中の青空を全部東京に持ってきてしまったような、素晴らしい秋日和でございます」
テレビから東京オリンピックの開会式の模様を伝えるNHKの北出清五郎アナウンサーの声が聞こえる頃、東京の夫からの送金はパタッと止まってしまった。

「源蔵さん、どういうことでしょう?」
牧子は北村源蔵のところに相談にいくと、一緒に東京に残った山本富雄の妻、文代も来ていた。
「牧子さん、お前んとこもか?」
「えっ、文代さんとこも?」

「そうなのよ」
「困ったわねえ」
「お盆に帰って来た時、うちのお父ちゃん、様子がおかしかった。よろず屋の赤電話で話したり、そわそわしていた」
「女の人?」
「今にして思えば、そうかも知れない」

文代は「そうなのよ、そうだったのよ」と一人呟いていたが、牧子も口には出せなかったが、「やっぱりあれはそうだった、女がいたんだ」と確信した。
北村源蔵は二人の話をじっと聞いていたが、彼には思い当たる節はなかった。
「5人で同じ飯場で暮らし、『一生懸命、金を貯めよう』って、外にも飲みに行かずに、頑張ってたんだよ」

だが、監視役の源蔵がいなくなると、羽目を外すこともありうる。
「まあ、こうしていてもなんだから、とにかく東京の近藤建設に電話してみよう」
「源蔵さん、お願いします」
果たして、その結果は悪い予感が当ってしまった。

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東京の近藤建設の話によると、牧子の夫、坂田孝雄と文代の夫、山本富雄も5月頃から外に飲みに出掛けるようになり、様子が変わってきたらしい。女がいたかどうかは分からないが、飯場の外に知り合いができたようで、派手なシャツを着るようになったという。
そして、9月には会社を辞め、今はどこに行ったか分からないという。

「俺も残っていれば、孝雄も富雄も……だけど、どうしてそうなるのか……」
北村源蔵は大きなため息をついていた。
こうなると、直ぐに東京に行って夫を探さねばならないが、牧子も文代も一度も東京に行ったことがない。
もう1ケ月待って、今年も東京に出稼ぎにいく北村源蔵に連れて行ってもらう以外に術はなかった。

人間蒸発

牧子は東京に行ったが、夫の行方は分からなかった。
「ああ、あいつか。あそこの居酒屋が好きだったよ」
「休みには外のアパートに泊ってたな」
「女?それはよく分からないよ」

飯場の仲間は言葉を濁していたが、その居酒屋に行くと、茜という40くらいの女に入れあげ、一緒に逃げたと女将に教えられた。
「お宅の旦那、いい人だから、身の上話を聞いて、つい、ほろってなったみたい。でも、茜って言ってたけど、本当の名前は分からない。騙されたんじゃないの。お気の毒ね」

同じように、山本富雄も女とどこかに行ってしまった。
牧子と文代は泣きながら、故郷、山形に帰っていった。
その1年後、東京の飯場で働く牧子の姿があった。
「おじさん、お酒はどうするの?」
「牧ちゃん、1本、つけてくれよ」

彼女は飯場の炊事係として、仕事を終えた男たちから晩酌の注文を聞いていた。
だが、その牧子も半年後には姿を消していた。
故郷に孝文と郁代の2人の子供を残し、孝雄も牧子も東京のどこに消えたやら、誰も分からない。「人間蒸発」だった。

本当の話

これまでお話したことは、筆者が子供の頃に、親たちが話していたことを思い出しながら、一部創作も加えて書いたものですが、これからお話しすることは実話です。
筆者が小学生のころ、隣りは、当時の言葉で言うと、「土方の親方」の家で、庭先に建て増しした飯場が2軒ありました。

その一軒には、子供連れの夫婦が、もう1軒には5、6人の男たちが住んでいた。
話はその子供連れ夫婦のことです。
二人は東京に出稼ぎに来たのですが、ある夜、旦那さんの方が出て行ってしまいました。
「夜逃げだ」、「いや、女だ」

親たちがそんな話をしていましたが、間もなく、今度は奥さんの方も出て行ってしまいました。
可哀そうなのは残された二人の子供です。彼らは筆者より3歳以上も離れていましたので、一緒に遊んだことはありませんでしたが、小学校には集団で登校したので、よく知っていました。

困った「土方の親方」はその夫婦の郷里に連絡を取り、旦那さんの祖母が上京してきました。
どのような話し合いがあったかは分かりませんが、結局、そのお婆さんが飯場で「飯炊き婆さん」として働きながら、その子供たちの面倒をみることになりました(勿論、生活保護等を受けていたと思われるが)。

しかし、そのお婆さんも高齢であったので、1年程後、病気のため飯場で亡くなりました。
驚いたのは、その通夜の晩のことです。子供たちを置き去りにして出て行った夫婦が揃って戻ってきたのです。
出稼ぎ仲間が訃報を知らせたらしいのですが、子供を置き去りにしていた1年余りの間、なんと夫婦は一緒に暮らしていたという。

これには「土方の親方」はむちゃくちゃに怒りました。当たり前ですね。
最終的に、「土方の親方」に説教された夫婦は子供たちを連れて郷里に戻って行きましたが、こんなことは奇跡とでも言いましょうか、あり得ないような本当の話です。

(続く)

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