現代春画考~仮面の競作-最終話 4000文字 バロン椿

現代春画考~仮面の競作-第25話

その話は、日本画の巨匠、河合惣之助の別荘に、悪友の洋画家の巨匠、鈴木芳太郎が遊びに来たことから始まった。
本名なら「巨匠が何をやっているんだ!」と世間がうるさいが、仮名を使えば、何を描いても、とやかく言われない。
だったら、プロのモデルじゃなく、夜の町や、それこそ家政婦まで、これはと思った女を集めろ。春画を描こうじゃないか。

作家名:バロン椿
文字数:約4000文字(第25話)
管理番号:k086

こっちはそれどころではない!

一方、鈴木画伯のところでは、大変なことになっていた。
「な、何、ザミローチカと結婚したいだと!」
鈴木画伯はコーヒーカップを落としそうになった。

「はあ、先日、彼女が帰国する前に『Will you marry me ?』と聞きましたら、『Yes. Of course yes. I love you.I need you』と返事を頂きました」
岡田が目を逸らさず、そういうと、「えっ、『Of course yes.』、『I love you』、『I need you』……」と画伯は絶句してしまった。

河合画伯の別荘での一件から、鈴木画伯がザミローチカに何をプレゼントしても、「Thank you」と事務的に言うだけで、マネージャーとしての一線は決して越えず、仲良くなろうとする企みはちっとも進展しなかった。しかし、「マネージャー同士ですから」と言った岡田とは、「Hahaha」、「Oh,Yes!」等と、妙に親しげに話していた。何かあるなと思っていたが、まさか結婚とは……狙っていた獲物を横取りされてしまった画伯は落ち着こうと、タバコを取り出したが、逆に手が震えている。

そして、無駄だとは思いつつ、「だけど、お前、ウラジオストックだぞ」と嫌味ったらしく言ってみたが、「ええ、分かっています。来月、私が向こうに行って、日本に連れて来ます」と岡田は言い切った。
そこまで言われたら、諦めがつく。それに、こうしたことは、これまでも何度も経験している画伯だ。

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「そうか、それなら、応援する。岡田、頑張れよ」と、笑顔で祝福したが、収まらないのは、事務員の榊陽子だ。
「どういうことよ!」と血相を変えて、アトリエに駆け込んでくるなり、「私を弄んだのね!」と岡田に詰め寄った。
「あ、いや、そ、そんなことはないけど……」
画伯に対していた時の毅然とした態度はどこへやら。しどろもどろで、「せ、先生……」と、画伯は助けを求めようとしたが、「ああ、疲れたなあ」と画伯は知らん顔。

こういう時は逃げるしかない。
「し、失礼します!」とアトリエから脱兎の如く飛び出して行った。
「まあ、身から出た錆だ」
タバコを吹かした画伯はそう呟いたが、間が悪いことに、それが陽子に聞こえてしまった。

「何が『身から出た錆』ですか! 元はと言えば、先生がロシア女を呼ぶからいけないんでしょう!」
ぶち切れた陽子は「バカ!」と手当たり次第、物を投げつけだし、手がつけられない。
「勘弁してくれよ、陽子ちゃん」と、画伯もアトリエを飛び出した。

祝宴

紆余曲折はあったが、7月中旬、岡田とザミローチカは都内のホテルで結婚式を挙げた。
式には「クラブ 茜」のママは勿論、№1ホステスの小夜子や、レズビアンバーの康子とお京さんなど、「夜の町」関係者は勿論、「いやあ、すっかりご無沙汰してしまいまして」と米蔵と美恵子夫婦、そして、「こんな喜ばしい席に呼んで頂きまして」と、中央画壇への復帰が叶った景山幸一、勿論、ナターシャも、春画に縁のある者が勢ぞろいしていた。

続く披露宴。司会を務める吉光は「大丈夫かな、スピーチは」と気を揉んでいたが、「まあ、人生と同じ。何があるか分からんのも、また楽しい」と河合画伯は笑っていた。

出だしは「ザミローチカさん、おめでとう」と河合画伯が、「岡田さん、40過ぎまで待った甲斐がありましたね」と茜ママが、それぞれ無難なスピーチだったが、
「おめでとうございます。でも、まさか岡田さんがねえ。私は鈴木先生だと思っていたの」と「クラブ 寿々」の槇子が言えば、
「岡田さん、参ったな。あなたの方がケンより手が速いよ」とイラストレーターの谷山が危ない祝辞を連発し、やんやの喝采を浴びる楽しいパーティになった。

最後に鈴木画伯が、「お二人の結婚には私も裏方として大変な思いをしまして」と笑わせた後で、「パズドラヴリャーユ ス スヴァーディボイ(結婚おめでとう)」とロシア語の祝辞でしっかりと宴を締めていた。
「それでは、行って来ます」
「今夜は寝られないな、あははは」
「いや、まあ、それは、へへへ」

皆に送られ、岡田とザミローチカは、鈴木画伯の計らいで、ハネムーンを兼ねたヨーロッパ美術館巡りの旅に出発していった。
深夜、ホテルのバーで、水割りを飲む河合画伯が「負けだったな」と言えば、「なあに、俺は日本の女がいいさ」と鈴木画伯はブランデーを旨そうに飲んでいた。

意地の張り合いは相変わらずだが、「春画はお終いだな」と河合画伯が呟くと、「そうだな」と鈴木画伯も頷いた。
「しかし、面白かった」
「ああ、面白かった」
河合画伯は水割りをお代わりすると、「遊びで始めたことだが、最初に言ったように、仮名を使って春画展でもやるか?」と、鈴木画伯は「仮名なら、権威もへったくれも無いしな」とご機嫌だった。

「そうだ、『現代春画展~仮面の競作』、こんなキャッチフレーズはどうだ?」
「鈴木、冴えているじゃないか。よし、その話、乗った」
河合画伯のピッチは速く、二杯目をあおり、新しいグラスを頼んでいる。

「儲かったら、岡田の新婚家庭に何か贈るか」
「なんだ、まだ彼女に未練があるのか?」
「バカ言え。人妻に手は出さんよ」
「ははは、そうか。それじゃあ、ナターシャか?」

「あの娘はお京さんだろう」
「そうだったな。それなら、ヨーロッパに行って、新しい女を見つけるか?」
「おい、俺は日本の女がいいと言っただろう」
二人の楽しい会話はまだまだ終わりそうになかった。

ハッピーエンド

秋が深まり、そろそろ冬の気配を感じる11月下旬。都内のとある画廊では、「現代の春画~実力派画家らによる仮面の競作」と題する美術展が開かれていた。
実力派画家とは、勿論、鈴木、河合の両画伯に、昨年、復帰した日本画の景山幸一とイラストレーターの谷山輝だが、彼らが使った仮名がまた面白い。

鈴木画伯は「シャルル・マルティネス」と本名とは全くかけ離れたフランス人の名前を使い、「へへ、面白そう」とイラストレーターの谷山は「アレクセイ・ミハイロビッチ」と昔のロシア皇帝の名前を使った。
「何を考えているんだ、お前たちは。いくら仮の名前だからって、由来ぐらいなきゃ、いかんだろう」と河合画伯は、母親の旧姓の「山木」と、本名の「惣之介」を「惣之進」と変え、「山木惣之進」と名乗った。また、景山幸一も河合画伯に倣い、母親の旧姓から「月田一幸」と名乗った。

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しかし、どんな名前を使おうと、美術記者や愛好家たちには、絵のタッチなどから、「ああ、あれだな」と凡そ当たりが付く。
だが、一般の人たちには全く分からず、「誰が描いたんだ?」と週刊誌などが取り上げるものだから、美術展は連日大盛況だった。
その最終日、「先生、本当にどうもありがとうございました」と、控え室で河合画伯に深々と頭を下げていたのは、この美術展の運営全般を任された、雑誌「主婦のお友だち」編集長の近藤啓子だった。

「あ、いや、近藤さん、感謝するのはこちらの方だよ。和夫君の巨根があったから、絵を描こうって気持ちが湧いてきたんだよ。それにしても、凄いよな、こんなんだからな」
芸術家には常識はないのか、画伯は相手がレディであろうと構わず、手で大きさを示すものだから、甥の和夫を、謂わば「人身御供」として差し出した彼女は顔が真っ赤になっていた。

しかし、義理堅さは人一倍。ポンと肩を叩いた吉光の手にはこの美術展に出品作品の写真集の出版契約書が握られていた。
「これ、画伯の気持ちですよ」
「え、いいんですか?」
「最初に言ったでしょう、画伯は恩を忘れないって」

感激した近藤啓子は「もう死んでもいい程です。吉光さん、お礼はどうしたらいいでしょう?何でも言って下さい」と、和夫を差し出した時と同じことを言った。
ニヤッと笑った吉光は、「ええ、画伯はあなたがお気に入りで、『今度は、是非、あなたがモデルになって頂きたい』と仰ってましたが」と画伯の方を指差すと、画伯は他のお客様と話していたが、こちらを見て、ニコッと笑った。

悪企みを感じた近藤啓子が消え入るような小さな声で「ま、まさか、ヌードでは……」と呟くと、吉光は「『蓼て食う虫も好き好き』と言いますから」と笑い出したが、その時、ようやくからかわれたことに気がついた彼女は、「え、あ、そ、そういうこと……あはは、本気にする私がバカよね。こんなババアがヌードなんて……あははは」と笑い出したが、先程とは違う意味で顔が真っ赤になっていた。

一連の春画創作がこうして笑顔で終えることが出来たことは本当に喜ばしいことだった。それを一番喜び、ホッとしていたのは吉光だった。
あのまま創作を続けていれば、次の設定では、男女の絡みに加わる稚児役が必要で、多恵の孫、6歳の太郎がということになっただろう。しかし、そんなことをしたら、必ず太郎の母親、由紀子にバレる。そして、「なんてことさせるの! もう顔も見たくない!」と罵られ、多恵とは別れざるを得ない。

「助かったよ」と多恵に言ったら、「えっ、ウソ!次は私たちがセックスするところを描いて欲しかったのに」と笑っていた。
多恵はもう63歳になるが、布団の中では20歳以上若返る。そろそろ答えを出さなくては。彼女の娘の由紀子からも、「はっきりして下さい」と言われている。だが、結婚式はどうするか?岡田とザミローチカに負けないものにするか?いや、どんなスピーチが飛び出すか、想像しただけでも顔が青くなる。

あれこれ考えていると、「おい、吉光!次はお前の結婚だな」と河合画伯が大きな声で叫んだ。全く芸術家というものは恐ろしい。心の中までお見通しだ。
「先生、仲人をお願いします!」と言ったら、「バカ、独身の俺にそんなものが出きるか!」と返ってきた。
それを聞いて、「私がしてあげる!」、「いや、俺に任せろ」と名乗り出たのは危ない奴ばかり。

吉光は決めた。国境を越えた恋を実らせた、盟友、岡田とザミローチカ夫妻に任せよう。彼らに比べたら、22歳の年の差なんか大したことはない。多恵、早くセックスしょう!そう思った吉光の股間はコンモリと膨らんでいた。

(終わり)

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