闇の男-第21話 3040文字 バロン椿

闇の男-第21話

日本の夜の世界を支配する男、武藤甚一(じんいち)と、それに立ち向かう元社会部記者、「ハイエナ」こと田村編集長らとの戦いを描く、官能サスペンス長編。

作家名:バロン椿
文字数:約3040文字(第21話)
管理番号:k077

実は、秋山、福岡の山本旅館の本番ショーをぶち壊しただけでなく、先週発売された「週刊エロップ」に「秘密ショーの楽しみ」と題する記事も書いていた。
そこには、悦子が雄介をたぶらかした旅館芳松や、美智代を犯させた旅館三益、そして、摘発現場となった福岡の山本旅館の他、武藤がからむエロショーを開催してきた旅館名が掲載されていた。

その記事の影響で、各地の旅館から「もうお付き合いはごめん」との縁切り電話が相次いだが、特に金沢の葵荘は痛かった。
そこは北陸の老舗の旦那衆が好む旅館で、エロショーは常に満席だったが、「女将も証言、『ショーの後は、芸者が特別接待。その中味はエロ過ぎて書けない』」と実名こそ無いが、北陸の者が読めば、どこの旦那衆か分かる書き方だった。

そこまで武藤の領域を踏みつけ、壊した秋山を「謹慎させる」との一言で済ますとは、「舐めやがって!」と武藤は怒ったものの、闇社会の勢力図は確実に変わりつつあった。

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般若と龍

「遅くなったな」と武藤が腰を下ろすと、頭上の照明が消え、座敷の奥に敷かれた一組の布団にスポットライトが当てられた。
そして、「では、ご覧下さい」と司会の者が合図を送ると、さくら、さくら、やよいも……と優雅な琴の調べが流される中、屏風の蔭から共に般若の面を付けた浴衣姿の男と女が現れた。

「どうです?」
演出を担当した男が囁くと、「うん」と武藤は軽く頷いた。
布団の上では早くも男が女の紐を解き、はらはらと舞う桜のように浴衣を取り払うと、何も身に付けていない裸身が現れた。
「ほお、見事なものだな……」と武藤が感心したが、それもその筈、女の背中には般若が、太腿には牡丹が彫られていた。

「彫雅の渾身の作だそうです」
「なるほど。彼しか出来ないな、これは」
そして一転、曲はバチを激しく叩きつける津軽三味線に変わり、男が浴衣を脱ぎ捨てると、キリッと締めた下帯から抜け出すように肩まで昇る見事な龍、まるで、背中に龍が住んでいるように見える。

こちらにも、「おお、やるじゃねえか」と武藤は唸り、水割りをグイッと飲み干した。
バチの勢いが増し、三味線の音が強く激しくなると、それに乗った男は面を投げ捨て、押し倒された女の股間に顔を埋め、攻め立てると、女の喘ぎが大きくなってきた。

さあ、いよいよクライマックス。
男が下帯を解くと、しっかり傘を張ったペニスが蛇のように鎌首を持ち上げ、女の密壺に狙いを定める。
その時、武藤は思わず「三郎なのか?」と声を掛けた。顔は歌舞伎役者のように隈取しているが、しっかりと傘が開いた亀頭には見覚えがある。
かつては、素人本番ショーの主役を張っていたが、性技に長けてしまったがため、客に嫌われた三郎が龍を背負って戻ってきた。

「はい」と答えた彼の目には涙が光っていた。
「そうか、三郎か、うん、いいぞ」と大きく頷く武藤に合わせるかのように、三味線の音が一段と激しくなった。
喘いで逃げる女を引き戻した三郎は、腰をグッと押し込み挿入。そのまま座位に移ると、息苦しくなった女が面を投げ捨てた。
体を交えたまま向き合って座る女の背中では般若が悩ましく踊り、男の背の龍は女に襲いかかっているように見える。

「凄いじゃねえか」
武藤が身を乗り出した。
最後は男が女、いや龍が般若を後ろから犯して、その演目は終わった。
「よかったぞ」
「先生、あ、ありがとうございます」

「つまらんことばっかりだったが、久し振りにいいものを見せてもらった。三郎、素晴らしいぞ。」
武藤も精神的に追い詰められていたのか、めったに感情を表さぬ男の目にも光るものがあった。
「よし、三郎への褒美だ。香港の王維民のところに行くぞ。王にも見せてやろう。おい、俺と三郎、それに世津子のパスポートを用意しろ」
いつもの武藤なら、ここはじっと動かずに嵐が通り過ぎるのを待つのだが、今回は違う。

「ですが、今は時期が」と引き止める配下の者たちを、「バカ野郎!頭を使え、頭を。別のを用意すんだよ。分からねえのか、そんなことも!」と怒鳴り散らす。
主要な幹部たちが次々と警察の手に落ち、もはや武藤に意見できる者はいなくなっていた。
配下の者たちは危ないものを感じながらも、その指示に従わざるを得なかった。

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連携作戦

田村編集長からの提供情報も含め、彼らの動向を分析した警察は武藤が香港へ逃走するとの判断を下した。
だが、問題はそのルートだ。空か海か? 直接香港に向かうのか、中国の何処かの都市を経由するのか、台湾など他の国を経由するのか?これといった有力情報がなく、やや手詰まり状態。副署長室に籠った横田副署長は焦っていた。

すると、「待てば海路の日和あり」。
電話がリーン、リーン……と鳴り出した。受話器を取ると、「横ちゃん、対策はどうなっているんだ?」
と、やはり、田村編集長からだった。
「旅券申請者と航空券購入者を徹底的に洗い出しているよ」

「それはそうだが、まともな手順でくるとは限らないぜ。違法旅券で成りすましだってあるぜ」
「まあ、そうだが、全ての空港の出国カウンターに武藤の写真を配ってある。当然、偽名だろうし、髭を生やしたりして姿を変えているだろうが、担当官はプロだ。必ず見つけてくれる」
確信はないが、そう思いたい横田副署長はタバコに火をつけた。
だが、田村は「海は?」と痛いところをついてきた。

「空港と同じように写真を配っているが、飛行機よりずっと便が少ないから、まずは大丈夫だろう」
「なるほど。客船はその通りだろう。でも貨物船に潜り込まれたら、まず見つからないぜ」
返す言葉がない。「そうだな……」と濁していると、電話の向こうで、田村の咳払いする音が聞こえてきた。

(ははは、こいつ、何か掴んでいるな……)
ピンときた横田副署長は、「ところで、村ちゃんはどう考えているんだ?」と逆に問い掛けると、思った通り、「いや、まだはっきりしないんだが」と前置きしながらも、「武藤の側近の小池、あいつが舞鶴に何度か来ているらしい」と警察でも掴んでいない情報を伝えてきた。

「小池?あの頬に疵のある奴か?」
「そう、あの小池だ。見かけた記者が頬に疵のあるのを見たと言っている」
警察としてはノーマークだった。
「小池貞夫=武闘派」のレッテルで、裏方仕事には無縁と考えていた。

「どこからの情報だ?」
「成田って風俗雑誌の記者情報だが、奴は元社会部記者だ。信頼していい」
「そうか」
「風俗雑誌」ということに引っ掛かったが、田村がそこまで言うなら、ガセではないだろう。

「それで、何をしているんだ?」と聞くと、
「舞鶴からは中国の大連と、ロシアのウラジオストックに貨物船の定期航路がある関係で、風俗で働く女たちをその貨物船に積み込んで送り出しているそうだ」
「舞鶴か。そんな噂も聞くがな」

「噂じゃないぜ。皆川興業、舞鶴の夜を牛耳っている会社だが、皆川トランスポートって港湾会社も持っているんだ。こいつら皆、武藤の息のかかった連中だ」
と極めて具体的な名前が出てきた。
皆川興業は違法斡旋や人身売買の疑いで幾度か家宅捜査を受けたことのある企業だ。

「中国と言えば神戸や下関、博多だが、あそこは神戸の親分の領域だから、武藤も勝手なことは出来ない。それに福岡で秋山が騒いだ件で神戸の親分と武藤の関係も微妙らしい。ということは、武藤が使えるのは舞鶴だけだ」
「匂うな」
「だろう」

だが、時刻は午後5時過ぎ。
これから京都府警に応援要請しても短時間では警察官を配備できない。
その隙にコンテナなんかに押し込んで積み込まれたらアウトだ。

(続く)

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