国際部の君と-第3話 3050文字 ステファニー

国際部の君と-第3話

人気漫画雑誌『週刊少年ジャンボ』編集者の井崎と国際部所属のキャリアウーマン美香のラブストーリー、続編。

作家名:ステファニー
文字数:約3050文字(第3話)
管理番号:k076

「『天狗の鼻』って、今一番人気あるマンガじゃない。アニメ化もされたし、グッズも飛ぶように売れてて。もはや社会現象と化している作品よ」
美香も題名は知っていた。コンビニに入れば、コラボ商品が並んでいるので、嫌でも目に入るからだ。
「『少年ジャンボ』の編集にいるだけでもかなりすごいのに、『天狗の鼻』担当だなんて。将来は編集長もありえるかも」
そう言っても美香は動じなかった。普通の合コンに参加する女子ならば、こんな情報を与えれば、井崎に飛びつくのだろう。そういったミーハーさが美香にはない。

「そうなると、美香ちゃん、相手は結婚したいって言うかもわからない。多分、焦ってるだろうし」
「そうですか?」
「うん。激務な部署だから、普通は早くにお嫁さんもらうの。30過ぎて独身なんて彼以外いないはずよ」
美香はピンと来なかった。国際部は30過ぎての独身者ばかりの上に激務どころではない待遇だからだ。
「美香ちゃんはどうなの?その人と結婚してもいいと思う?」
「わからないです。私、あんまり結婚を意識したことなくて。なんか突然にこんなことになって、本当にどうしたらいいか、全然わからなくて…」
陽子は美香の背中をさすった。
「そっか。ごめんね、イヤな質問しちゃって。全部忘れて。それより来週の出張、気をつけて行ってきてね」

トイレから戻り、席に着いて美香はパソコンのロックを解除した。
さあ、仕事だ。余計な邪念は頭から追い払おう。
そう思ってメールボックスをクリックした、その時だった。
「おはよう、美香さん」
聞き覚えのある男の声が美香を呼んだ。ふと目を上げると、美香の背中は凍りついた。
井崎が美香のデスク前にいたのだ。
「おっ、おはようございます…」
美香は井崎から目を反らした。それでも頬が火照っていくのがわかった。
普通にしていなくては、周りから不審に思われないようにしないと、と気負うほど、美香は平静を保てなくなっていった。

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「昨晩はお疲れ様。あの後はゆっくり休めた?」
井崎は普通に笑みを美香に向ける。
「…はい……」
「そう、よかった」
井崎は立ち去ろうとしない。美香は文句を言おうと、井崎の顔を見た。
その時だった。
美香は急に恥ずかしくなった。
井崎が魅力的に見えてきたからだ。
この人ってこんなにカッコよかったんだ。最近、人気のある、なんとかっていう俳優に似てる。
この人と私は昨晩…。

美香は井崎の顔を見ていられなくなった。
「ねぇ、お願いがあるんだ。今日、これから、練馬まで出張してくれないかな?」
「出張ですか?」
「うん。『天狗の鼻』の作者、藤林晃先生に会って欲しいんだ。大丈夫。俺も同行するから」
今日はかなり仕事が溜まっている。今のうちにこなさないと、来週の出張に間に合わない。
美香が躊躇っていると、背後から雪本が口を挟んだ。
「麻宮さん、行ってきなよ。こっちの仕事はなんとかなるから」
井崎の隣に雪本はやって来た。この二人は大学の同窓生だという。雪本は新卒採用で雄英社に入社し、国際部には管理職として配属されている。美香とは立場が違う。

ひょっとしてこの二人はグルで、一緒に自分を追い出そうと企んでいるのでは、とさえ疑ってしまう。
暫し沈黙した後、美香は答えた。
「わかりました。仕事として私が必要ということであれば、お供します。但し、必ず五時までには帰社しますので、その点ご了承ください」
「ありがとう。じゃあ、早速、行こう」
井崎は微笑んだ。そして当たり前のように美香の背中に触れてきた。

「天狗は人を襲って食べるから、それを阻止するために天誅組があるんだ」
練馬区にあるという藤林晃の自宅へ向かう道中、井崎は『天狗の鼻』のストーリーについて語っていた。以前に当時まだ高校生だった弟から聞いたことはあるため、多少知っていたが、適当に相槌を打って井崎に合わせた。
「天狗を倒すためには、鼻を切らなくちゃならないんだけど、これがなかなか難しくて、組員はすったもんだするんだ」
「そうですか。それで私は一体、なんのために藤林先生にお会いするのですか?」
井崎は困ったように頭をかいた。

「それがね、藤林先生は少し気難しい人でね。どこか腹の虫の居所が悪いと、筆を止めてしまうんだ。今朝も機嫌が悪いからって、描きたくないと言って、それきり連絡が取れなくなってしまってね」
そんな子どもの駄々みたいなことに付き合うために自分は駆り出されるのか、と思うと美香はやるせなかった。
「でも何か起爆剤のような、刺激を与えると、またやる気を出してくれるんだ。だから美香さん、すまないけど、海外で見つけた面白ネタを何個か聞かせてやってくれないかな?」
「先生は私の話なんて聞いて面白いと思うんですか?」
「大丈夫。どんな話でもいいから、少しスパイスを加えるだけでやる気が変わる、そういう人なんだ。だから興味なさそうにしてても話を続けちゃっていいから」

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あまりしっくりは来なかったが、とりあえず対応するしかないようだ。スマホに入っている海外セレブの写真でも見せてやればいいか、と美香は考えた。
ふぅ、と溜息をつき、美香は井崎の横顔をチラリと見た。
やっぱりこの人、素敵だ。どうして私なんか好きなんだろう。もっと相応しい女性がいるはずなのに。
隣を歩く井崎の肩が時折、触れる。その度に美香の胸が痺れた。昨晩の一件を思い出しそうになり、ぐっと堪える。
理性を、自制を。
ここは外。
今は仕事中。
美香は藤林にどんな話をしようか、考えにかかった。

西武池袋線の中村橋駅から少し歩いた住宅街に藤林晃の家はあった。周囲の民家より一際大きく、かつ瀟洒な造りをした戸建て住宅だった。
最新式のインターホンを井崎が押し、住人を呼び出した。
「はい?」
くぐもった音声が響いた。声の主は女性のように聞こえる。
「お世話になっております。井崎です。晃さんはいかがされていますでしょうか?」
「お世話様です。今、呼びますから」
ガチャ、と音を立てて、呼び鈴は切れた。井崎は美香に耳打ちした。
「今の、先生のお母さん。ここは先生のご実家であり、仕事場でもあるんだ。もちろん、売れてきてから建て直しはしてるけどね」
道理で建物と設備が真新しいはずだ。一体、どれだけお金をかけて改築したのか、美香がそんなことを考えていると、モダンな黒い玄関扉がキイ、と開いた。

「お疲れ様です。井崎です。先生、ネームの進み具合はいかがですか?」
ドアはほんの2センチか3センチしか開いていない。が、井崎が声をかけた瞬間に、扉は元の位置へ帰ろうとした。井崎はすかさず足を挟み、閉じるのを防いだ。
「ひぃー、いやだァ、ボクはもう、これ以上、描かない!」
大人の男と思しき声がドアの先から響いてくる。
「先生、そんなこと言わないでください。今日は先生のお助けになればと、いいネタ持ってる人を連れてきましたから」
井崎はドアの内側に手を入れ、天の岩戸をこじ開けた。
扉の先には、玄関の三和土に蹲る、ボサボサ頭の一人の青年がいた。冬だというのに、短パンにTシャツ、さらには素足と、真夏のような出で立ちだ。

「美香さん、こちらが藤林晃先生です」
「はじめまして、雄英社国際部の麻宮美香と申します」
藤林は美香を見ようともせず、依然として頭を抱えてしゃがんでいる。
「藤林先生、こちらの女性は年始の巻頭特集で雄英社の国際部代表で密着取材を受けていた方ですよ」
震えていた藤林の身体がピタリと止まった。そしておもむろに顔を美香の方に向けた。
「ああ、そういえば、こんな人を取材してたよね」
そう言うと藤林は立ち上がり、美香の前に近づいてきた。

(続く)

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