今様シンデレラの結末は-第14話

今様シンデレラの結末は-第14話

作家名:くまあひる
文字数:約4050文字(第14話)
管理番号:r700

14.驚きと嫉妬

サロンを出て、携帯を見ると柊さんからメッセージが来ていた。
“一日だけ休み取れた、これからこっち出る。着いたら連絡する“
柊さんが帰って来る!
はやる気持ちを抑えて買い物に寄り、食材を買ってすぐに家に帰った。
自分でもおかしいくらいソワソワしながらご飯を作り、何度も鏡で自分をチェックする。
大丈夫かな?柊さんの好みじゃなかったら・・・・
ついそんなことを考えてしまうけど、オーナーの言葉を思い出して胸を張る。
以前とは全然違う自分。
ガリガリで胸もお尻もぺったんこで、ただ不健康に痩せているだけだった自分。
今は佐伯トレーナーのおかげでバランスの取れた女性らしい体になってきている。
以前よりも体調も格段に良くなり、割とポジティブな自分がいる。
携帯が鳴った。

「美和、開けて」
「え?」
「ドアの前にいるから」
ドアを開けると本当に柊さんがいた。
柊さんは私を見てすごく驚いた顔をした。
「美和、何か前と違う。何ていったらいいのか・・・わからないけど、すごくキレイだ」
「柊さん、ギュウってしてください」
「もちろん」

ドアを閉めるなり柊さんは抱きしめてくれた。
待ち望んだ抱擁に息が止まる。
「おかえりなさい」
やっとの思いで言うと、
「ただいま、美和。美和の声聞いたら、会いたくて我慢できなくなって、相棒に頼んで休みを取ったんだ」
「会いたかったぁ。あ、柊さんお腹減ってないですか?」
「めっちゃ減ってる。朝コンビニのおにぎり1個しか食ってない。慌てて出てきたから」
「すぐ用意しますから、着替えてください」

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キッチンへ向かおうとすると、柊さんに後ろから抱きしめられた。
「美和、しばらく会えない間にめっちゃキレイになってる。どうして?」
首筋にキスをしながら耳元でささやかれると、ゾクゾクする。
「柊さんが紹介してくれたジムに通って色々教えてもらったの。食事とか睡眠とかストレッチとか。それと、ジムのトレーナーからエステサロンを紹介してもらって行ってみたの。柊さんがキレイになったって言ってくれてすごくうれしい」
「美和の感触が全然違う。柔らかくて気持ちいい」
耳にキスされて、フルッと鳥肌が立つ。
「俺がいない間に美和がこんなにキレイになるなんて、なんか妬けるな」

顎をつままれ振り向かせて、唇が重なる。
「美和、抱いていい?」
「疲れてるでしょう?」
「わかってないな、美和は。わからせてあげる」
そう言うとシャワーを浴びに行き、あっという間に戻ってきた。
私もシャワーを浴びようとすると、
「美和はそのままでいいよ、美和のいいにおいがするから」
と意地悪く笑う。

「日下課長の変態とおっしゃった意味が分かりました」
逃げるようにシャワーを浴び、部屋着に着替えた。
軽く肌を整えて柊さんのところへ戻った。
「美和がおれの腕の中にいる。よく見せて」
さっき着たばかりの部屋着はすぐに脱がされ、全てがさらされてしまう。
「やっ、恥ずかしいから」
そう抵抗した唇はあっという間にふさがれ、また開けられて、舌が絡まる。
いたるところにキスを落とされ、首にチクリと痛みが走る。
「俺の美和だから、俺のモノっていう証拠。トンビが来ないか心配で離れていられなくなりそうだ」

そう言って再びキスを繰り返す。
柊さんの手が次第に降りていき、私の中心に触れる。
クチュリと音が聞こえた。
恥ずかしくて顔を背けると、柊さんが嬉しそうに笑う。
「かわいいよ、美和が俺の腕の中で女になっていると思うと、俺ヤバイ」
体をずらし私の足の間に入った柊さんは、ゆっくりと指を私の中に進める。
「あっ」と声がもれてしまい、慌てて口を押える。

「もっと啼かせてあげる」
そう言うと指を増やし、花芯を舌で転がされる。
「ダメっ、柊さん声が出ちゃう、外へ聞こえちゃう」
「美和の声聞きたいけど、他のヤツに聞かせるのもイヤだな」
体を起こし私の体も起こした柊さんは、わたしを横抱きにして抱える。
そして足を開かせて再び指を埋める。
「ああっ」と声を上げると唇を重ね、ふさぎ込んでしまう。

「これならどれだけ喘いでもいいよ、僕だけに美和の声が聞こえる」
私の中の指が私の敏感なところを見つけ、集中的に刺激される。
そして私の体は快楽に溺れた。
「美和、もうひとつになりたい」
「はい」
熱い塊が太ももに触れ、間もなく彼が押し入ってきた。
「くっ!」という声が聞こえた。

「美和、力抜いて」
「でもっ」
「怖い?」
「ううん、でも、久しぶり過ぎて・・・幻滅されないか不安」
「俺、めっちゃうれしいけど。美和が他の男覚えてたら、嫉妬で狂いそう」
「もうやり方すら忘れてる気がします」
「思い出さなくていい、俺が全部教えるから。恥ずかしがるところも、喜ぶところも全部俺が美和に教えるんだ。美和の体が覚えるのは俺だけだ」

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そう言うと、ゆるゆるの腰を進め、最奥までたどり着いた彼は、嬉しそうに笑った。
そして私の反応を見ながらゆっくりと動き始めた。
次第に自分の声が聞こえるようになり、声を殺して快楽に耐える。
そしてさっき散々指で刺激されたところを見つけられ、「あっ」という声と同時に腰が跳ねた。
「イッた?」

何とか頷き、柊さんを見上げると、彼の顔には今まで見たこともないくらいの獰猛な雄が見えた。
少しの恐怖と彼に食べられてしまいたいという気持ちがないまぜになり、自らキスを求めた。
繰り返すキスに自分の中が締まるのがわかる。
「うっ、美和、ダメだ」
「柊さんが欲しいの・・・」
自然に柊さんを求めて腰が揺れる。
「よせ、煽るな」
「好きなの・・・柊さんが欲しくてたまらないの」

濡れたような瞳で見つめられ、今までで感じたことがないほど自分を求めてくる。
自分の体の下にいる女をどうしたらいいのかわからなくなってくる。
もっと余裕だったはずだ。
なのに今、自分が組み敷いている彼女は、我を忘れさせるくらい官能的で逃げ場を奪うように俺に迫ってくる。
美和の焦がれるような顔を見て、何もかも放棄した。
考えることも、我慢することも、理性という言葉を思い出すことも。
俺は美和の中で暴れ、聞こえてくる肌がぶつかり合う音と美和の啼く声に刺激され、今までにない興奮と歓喜を感じた。
膜越しとはいえ美和の中で果てた俺は、今どんな顔をしているのだろう。
美和の中から出て、後始末をして寝転ぶ。

「ごめんなさい、疲れてたのに」
「俺が誘ったんだし。今日は何もせずになんかいられなかった。顔を見たくて、声が聞きたくて、抱きしめたくて帰ってきたんだ。そしたら美和が俺の知ってる美和じゃなくなっててさ、健康的でキレイになって、色気のようなものがあふれてて・・・嬉しいのと、自分のモノにしとかないとヤバイという焦りがあって。本能のままに抱いてしまった」
「ジムとエステ通った甲斐がありました。柊さんが喜んでくれてうれしいです。ジムの佐伯トレーナーは人気のトレーナーさんで、普段の食事や家で出来る体力作りとか気さくに教えてくれたの。ホントにいい人で私が頑張れたのは佐伯トレーナーのおかげなの」

ニコニコと笑顔で教えてくれるけど、そんなことはもう知っている。
なぜなら美和にジムに紹介した時、ジム側にあらかじめ美和のトレーナーは女性にするように頼んでいた。
佐伯トレーナーとは面識はないが、ジム側も指名率が高いトレーナーだと言っていた。
そのくらいガードしておかないと、心配で出張なんて行っていられない。
俺はご機嫌の美和の話を聞きながら、自分の行動にほくそえんでいた。
しかしこの後、俺は耳を疑う話を美和から聞かされることになる。

「でね、そのエステサロンは佐伯トレーナーのご実家なの。すごく気持ちいいのよ、メンズコースもあったから柊さんもやってもらったら?マッサージしてもらうと疲れなんかとんじゃうから」
「ああ、そうだな。リフレッシュできそうだな。今回は時間ないけど、立ち上げ終わって帰ってきたら一緒に行くよ」
「ホント?楽しみです。オーナーは職業柄かとてもキレイでね、女の私でも憧れちゃうくらいなの。男の人であんなにキレイなのって反則だと思う。芸能人顔負けなのよ」

今・・・何て言った?
エステサロンのオーナーは男なのか?
美和の体に俺以外の男が触れたのか?
もしかして二人っきりで?

やっとのことで出した声はおかしくなかっただろうか。
「エステサロンのオーナーって男なのか?」
「うん、佐伯トレーナーのお兄さんなの、すごく似た者兄妹なのよ」
うまく手をまわしてジムのトレーナーを女性に指名したことに満足していた自分が恐ろしく間抜けに思えてくる。
おそらく俺の眉間にしわが寄っていることに気づいた美和が、心配そうに見つめている。

「柊さん?どうしたの?ごめんなさい、うるさかった?」
初めてのピロートークから一気に現実の世界に引き戻された。
「そのエステで、その美和の体にその男が触れたのか?」
「全身のマッサージは野崎さんって女性の人よ、オーナーはフェイシャルとハンドマッサージよ」
この体を他の男が見たのかと思うと頭がおかしくなりそうだったが、辛うじてセーフのようだ。
でも、もうエステには行ってほしくない。
美和の体に男が触れるなんて断じて我慢できない。

「あのな、そのエステだけど・・・ほかのサロンにしたら?」
「どうして?」
「・・・・」
自分の心の中で正直に理由を言ってもいいのか、自問自答が繰り返される。
嫉妬深い男と幻滅されないだろうか。
束縛しすぎると愛想をつかされないだろうか。
「柊さん?」

「その、いやなんだ。俺以外の男が美和に触るのが」
「・・・・・」
しばらくして美和は「わかりました」とだけ言った。
「怒ったのか?」
「いえ、残念ですけど。柊さんが嫌がることはしたくないので。でも佐伯トレーナーのご実家っていう事で安心できたし、腕もすごく良くて、柊さんにも体験してほしかったです」
「他のサロン見つけたら・・・」
「ううん、エステはやめておきます。でもジムは続けていいでしょう?」
「ああ・・・」
思いのほか美和が残念そうな顔をしたのを見て、自分がひどいことをした気がして後味が悪い。
「すまない・・・」とつぶやいてる自分がいた。

(続く)

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