私たちの結婚-第1話
作家名:バロン椿
文字数:約2000文字(第1話)
管理番号:r701
週刊スクープ特別企画
「私たちの結婚」
読者の皆さまへ
結婚は恋愛、お見合い、はたまた、出来ちゃった婚など、きっかけは様々です。
また、結婚に至る道のりも、初恋のまま結ばれる方もいらっしゃれば、なかなか上手くいかず、別れてしまったり、長い年月を掛けて、ようやく結ばれる方もいらっしゃいます。
しかし、こんなに苦労して、皆様に祝福されて結婚したのに、別れてしまう方もいらっしゃいます。
そこで、今回はご自身の結婚について語って頂こうと、無作為に5人の方を選び、ご無理をお願いして手記を作成して頂きました。
お一人目は76歳の主婦の方。
結婚して52年、旦那さんとお二人で暮らしていらっしゃいます。
お見合い結婚だそうです。
今とは時代が違いますが、貴重なお話を伺えたと、担当の者が申しておりました。
お二人目は43歳の男性、小学校の教員の方です。
このたび、長い年月を掛け、初恋の方と結ばれたそうです。
いいですね。この長い年月の間には何があったのでしょう。
早く読みたくなりますね。
三人目は、とても若く、24歳の男性です。
16歳も年上の方と、これからアメリカで結婚するそうです。
どんなご縁があったのでしょうか、お話を聞くのが楽しみです。
四人目は45歳の主婦。
この方は再婚です。
相手は中学の同級生、共にバツ一だそうです。
どんな出会いだったのか、じっくりとお話しをお聞きしましょう。
そして、最後に56歳の男性、あ、この方は離婚調停中ですか。
いやあ、離婚せずに、なんとか元の鞘に収まって欲しいですね。
無作為に選んだとはいえ、こうしてプロフィールを読むだけでも、様々なドラマがあることが分かりますね。
尚、これらのお話はプライバシーに触れることですので、名前等は全て仮のものにさせて頂いております。
また、手記を作成するにあたり、文書が得意な方も苦手な方もいらっしゃいます。
そこで、インタビューに答えて頂く方式もありますし、書いて頂いても手紙のようなもの、小説風なものもあります。
形式が整わず、読みづらいこともあろうかと思いますが、このことも含め、ご容赦下さい。
では、どうぞ、コーヒーでも飲みながら、お読みください。
週刊スクープ
編集長 椿童子
第一部 記憶は大切な宝物です
~例え、あなたの記憶が失われても、私は忘れない~
馴れ初め
今日はどうされましたか?えっ、結婚についてのインタビューですか。
でも、こんな70歳をとうに過ぎたおばあちゃんに質問しても、若い方々は興味も湧かないでしょう。
それでもよろしいのですか?
はあ、そうですか。
それでは、随分と昔のことですから、忘れていることもありますが、馴れ初めからお話しましょうか。
昭和40年(1965)、私(小池(こいけ)貴恵(きえ)、旧姓:広瀬(ひろせ))は24歳の時、主人(小池(こいけ)敬一(けいいち))と結婚しました。
恋愛?ははは、何を言っているのよ。お見合いですよ。
当時も、恋愛は憧れでしたが、今とは違って、そんな機会など殆どありませんでした。
その頃は、女性は23~25歳でお嫁に行きましたので、それを過ぎると、会社でも「いつ辞めるの?」などと陰口を叩かれた時代です。
両親は私が23歳になった時から、そうならないようにと区役所の結婚相談所に申し込んでくれました。
申込み用紙に書き込み、それに履歴書、戸籍謄本、写真を付けて出したことを覚えています。
ええ、住民票じゃなくて戸籍謄本です。
あの頃はプライバシーだの個人情報だの、そんなことは言いませんでした。
祖父母から私の兄弟姉妹まで全て載っている戸籍謄本です。
はい、お見合いをすれば興信所が調査に来ます。
「貴恵ちゃん、結婚するの?興信所が来たから、「素直ないい子よ」って答えておいたから」
隣近所からこんな風に言われますから、内緒事はできません。
それこそ、揉め事なんかあれば、何を言われるか分りません。
本当に開けっぴろげでした。
そして3回目に紹介されたのが主人の敬一さんでした。
「ちょっと気難しい人じゃない?」
黒縁のメガネに七三分けの銀行員、27歳で中央大学法学部出身。
身長172cmと履歴書に書いてありました。
「貴恵、何を言っているんだ。お前は高校しか出ていないんだぞ。大学卒の銀行員、これ以上の相手は望めないぞ」
父にピシッと叱られてしまいました。
確かにそうです。
私は高校を卒業して、小さなメーカーの事務員、身長も155cm。
相手は17cmも背が高い男性です。
悪口を言ったらバチがあたります。
お見合い場所は区役所の近くにあったレストランでした。
その日は朝早く起きて、美容院で髪を整えて頂き、両親と一緒に出掛けました。
「小池さん、こちらが広瀬貴恵さんとご両親です」
結婚相談所の相談員に紹介され、初めて主人と会いました。
あ、優しそうな人だな。
この人ならきっとついていける…
写真と同じように気難しい感じがしましたが、途中でメガネを外した時に見せた顔が、とても柔和で、私は直感的にそう思いました。
(続く)
※本サイト内の全てのページの画像および文章の無断複製・無断転載・無断引用などは固くお断りします。
リンクは基本的に自由にしていただいて結構です。