浅川健太郎の告白-第16話
私、浅川(あさかわ)健太郎(けんたろう)は46歳。会社は中堅だが次長。一応名前の通った私立大学卒だが、自慢する程ではない。
こんな私にも、いくつかの女性遍歴がある。
内緒にして頂くことを条件に、こっそり貴女だけにお話するので、笑わずに最後までお聞き下さい。
作家名:バロン椿
文字数:約1940文字(第16話)
管理番号:k143
初風俗は27歳、他人から見ればラッキー
諸説色々あるようだが、「男の性欲は10代後半~20代前半と、若いうちに明らかなピークを迎える」と言われており、勃起力などは20歳がピークなんて説もあるそうだ。
これを基準に考えると、私は初体験が17歳の夏休み、牧場の管理人の奥さん、明美さんと。大学では、2年生の時が同学年の加藤陽子と、4年では文学部事務職員の木村茜さんと付き合い、セックスに困ることは無かく、社会人になっても、茜さんや、小料理屋の仲居、川田光江さんがいて、性的には大変恵まれていたと言える。
友人の中には「ピンサロに行ったよ」、「あのソープは最高だった」と、せっせと風俗に通う者もいたが、この性欲が強い時期に、私はそういうところには無縁で過ごし、初めて風俗に行ったのは27歳の時だった。
***
「上野、上野・・次は上野です」
出張の帰りの秋の夕暮れ。緊張が解けて、私はモヤモヤしていた。財布には相応のお金が入っている。「夕刊紙でさ、店の電話番号を調べて、予約したんだよ」とソープランドに行った職場の先輩が言っていたことを思い出し、行ってみるかと、夕刊紙を買った。それで、ソープランドの番号を調べて電話すると、「黒いワンボックスカーがお迎えに参りますので、交差点の10m先でお待ちください」と返ってきた。
こんなところに知り合いなんかいないのに、慣れないもので、誰かに見られているのではないかと、そわそわしながら待っているとワンボックスカーが止まり、「浅川様ですか?お迎えにあがりました」と迎えに来てくれた。
車は上野駅前から大通りに入り、しばらくしてその通りを右折。電柱には「台東区千束」と住所表示が出ている。NHK大河ドラマ「べらぼう」で有名になった「吉原」・・・狭い道を抜けるとあちらこちらにソープランドが見えてきた。
「こちらでございます」
「あ、はい・・」
華やかなネオンに飾られた店が並ぶ中、そこは入り口も小さく、地味な感じだが、店内はしっとりと落ち着いたローズ色のカーペットが敷かれた落ち着いた雰囲気だった。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
待ち合い室に通された私はアルバムから「亜紀」と言う名の女性を選んだ。28歳、163cm、84ー60ー88、趣味は編み物等と細かく記されていたが、年齢は本当かどうか分からない。なんとなく木村茜さんに顔立ちが似ていたから選んだだけだ。
ところが、「お支度が出来ました。こちらへどうぞ」と、男性店員に案内され、「亜紀でございます。よろしくお願いします」と待っていたのは、ショールを羽織ったブルーのドレス姿の女性で、アルバムの写真とはかなり違う。だが、色白で鼻筋が通っており、ま、これもいいなと思える、目元は切れ長、瓜実顔と言うか、そんな感じの女性だった。
エレベーターが3階で止まり、個室に入ると、改めて「亜紀でございます。よろしくお願いします」と挨拶され、童貞でもないのに私は緊張してきた。
そんな私に、羽織っていたショールをドアの窓に吊るした彼女が「イケメンね」なんて言うので、もうすっかり相手のペース。「ははは」と笑って誤魔化したが、「ふふふ、面白い人ね」と軽くあしらわれてしまった。
良かったが、何かむなしい
「ねえ、初めてしたのはいくつなの?」
「17歳だったかな・・」
「これまで何人としたのよ?」
「4人かな・・人妻、大学の同級生、事務員、それに飲み屋の仲居さん・・」
「随分とモテるのね」
ズボンとパンツを脱がされながらの会話もこんな感じで、お風呂に入れば、私は操り人形。続いて、マットでも彼女の繰り出す技の数々にチンポはたちまちはち切れそうなくらいに太く硬く、大きくなり、いつでもOK。そのままベッドに移り、「ねえ、入れて」と今度はせがまれる。「女を征服」した気持ちにさせられた私はグィッと腰を突き出し、彼女と合体。
すると、「はっ、はっ、あ、ああ、ダメ、逝っちゃう、逝っちゃう……あ、ああ、はっ……」と体を反り返して喘ぎ、「亜紀さん、もう少し、ほら、うっ、うっ!」と私はリードしているように腰を振り、「あっ、ダメ、ダメ……逝く、逝く、あっ……逝っちゃう……あ、あっ……」と彼女がさらに激しく反応する。
たちまち、「俺も、俺もダメだ……あっ!あっ!あっ!……」と精液をたんまりと吸い取られ、下半身のモヤモヤはスッキリした。そして、帰り際、名刺を手渡され、「またね、手書きの番号、私の携帯だから」と耳たぶを噛まれる。
店を出てものぼせ上がったまま。初風俗は予想を上回るものだったが、ふと気がつけば、財布は空っぽ。そこですっかり覚めてしまい、お金と引き換えと思うと何だか空しくて、「給料日が待ち遠しいぜ」という職場の仲間のようにはならなかった。
(続く)
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