浅川健太郎の告白-第12話 2120文字 バロン椿

浅川健太郎の告白-第12話

私、浅川(あさかわ)健太郎(けんたろう)は46歳。会社は中堅だが次長。一応名前の通った私立大学卒だが、自慢する程ではない。
こんな私にも、いくつかの女性遍歴がある。
内緒にして頂くことを条件に、こっそり貴女だけにお話するので、笑わずに最後までお聞き下さい。

作家名:バロン椿
文字数:約2120文字(第12話)
管理番号:k143

小料理屋「まきの」での出会い

「浅川君、今日はいつもとは違った場所に行きましょう」
遊びなれている吉川さんは銀座の他、大抵は中央区人形町にある料理屋なのだが、その日は「気軽に通える店に」と千代田区九段下にある「まきの」という小料理屋で、靖国通りからちょっと路地に入ったところにある、民家を改造した二階建ての店だった。
「こんばんは」と暖簾を潜った吉川さんが硝子戸を開けると、「あら、いらっしゃい」と笑顔で迎えてくれた仲居さん。吉川さんは馴染みらしく、その仲居さんと冗談を言いながら、案内された奥の座敷に入った。
「いつもの人形町とは違うが、ここもいいでしょう?」
おしぼりで手を拭きながら吉川さんはご機嫌だった。そこに、「こんばんは」と襖が開き、女将さんが入ってきた。
「吉川様、暫くでございました」
「やー、久し振り、女将さん」
常連らしい挨拶を交わす吉川さんと落ち着いた色の着物が似合う、華やかで、一目で女将と分かる美人。これだけで、吉川さんが何を目当てにこの店に来たのかはよく分かった。吉川さんは「こちらは浅川さん」と紹介してくれたが、私は謂わば「刺身のツマ」。

だが、雰囲気も料理も旨く、仲居さんが運んできた料理を食しながら、吉川さんと差しつ差されつつ飲み始め、「いや、本当にいい店ですね」と言うと、「気の置けない店でね、時々、使うんですよ」と吉川さんは得意満面の笑顔だった
それから幾度か、吉川さんに連れられて「まきの」に行き、店の雰囲気が好きになって、吉川さんに私もこの店に通っても良いか、と尋ねると、「ははは、いいですよ。女将さんも喜びます」と言ってくれた。
それで、数日後、接待で「まきの」を使った。すると、「あら、浅川さん、いらっしゃい」と迎えてくれた女将さんは「ご贔屓に」と皆の前で挨拶までしてくれた。さらに、「光江さん」と一人の仲居さんを呼び、私たちの世話をするようにと命じてくれた。それが川田光江さんとの出会いだった。

テディプレイスーツ一覧02

いつしか常連に

その晩、川田光江さんは女将さんの言い付け通り、「こちら下田の金目鯛です」など、肌理細かに私の接待をサポートしてくれ、相手先から「浅川さん、今夜は楽しかった」とお褒めの言葉を頂いていた。
それで、次回もと、別の取引先を店にお誘いし、光江さんが「いらっしゃいませ」と笑顔で迎えてくれることは勿論だが、「JPOPだよ」、「いや、やっぱり演歌ですよ」なんて、宴席の持ち歌自慢をしていると、「あら、カラオケですか。私はテレサ・テンの『別れの予感』が好きですよ」など、気の利いた“割り込み”をしてくれた。
すると、「えっ、それ、いいねえ。今度一緒にカラオケに行きましょうよ」と誘えば、「あはは、私なんか」と遠慮し、「行きましょうよ」と粘ると、「考えておきます」と含みを残して、座敷を下がる。
そして、一人が「あの仲居さん、いいねえ」とグラスを飲み干すと、「本当だ。今夜の酒は旨い」と続き、料理を楽しみ、最後は「浅川さん、これからもよろしくお願いします」とこの接待も成功に終わった。
ならば、接待は「まきの」でと、頻繁に取引先をお店にお連れするようになり、私も、女将さんが「いつもありがとうございます」と迎えてくれる常連客の一人に数えられるようになった。
やがてプライベートでも私は一人で通うようになった。
最初は一人の客では嫌がるかなと思ったが、「お一人、まー嬉しい」と、女将さんも喜んでくれ、「光江さん、お願いします」とバトンタッチ。
私は奥のテーブルに案内され、彼女から「お疲れ様」とお酌。勿論、テーブルに腰掛けることはないが、「お仕事大変ですね」、「いや、そんなことはありませんよ」、「そうですか。今日はとてもリラックスしていますよ」、「えっ、そうかな。あははは」といった会話に繋がる。

ストレスからも解放され、私にとって自宅の居間にいるような気分だった。
嬉しくなって毎週のように通うようになると、光江さんが「今夜はどちらで?」とおしぼりを差し出せば、「いや、残業だったんだ」となり、
「そう。それなら、お酒よりもお食事ね」
「うん。でもビール一杯」
「ちょっと待っててね」
と仲居さんとお客の会話と言うより、傍で聞いていると母親と息子の会話に変わり、いつの間にか、
「実は独身寮を出て、アパート暮らしを始めたんですよ」
「それじゃあ、ご飯の支度なんか大変でしょう」
「へへへ、コンビニですよ」
「あら、まあ。ふふふ、便利ですからね」
なんてプライベートなことを打ち明けるなど、どんどん親しくなっていった。
最初はかなり年上であり、母親のような感覚だったが、気づいてみれば私は光江さんが好きになっていた。彼女も「また来て下さいね」と社交辞令のようなことを言うだけでなく、「これ、内緒よ」と賄い物か分からないが、注文もしていない小皿を出すなど、何となく私に好意を抱いているように感じる素振りを見せていた。
もっとも、彼女は女将さんのように美人でも華やかでもない。年も40歳代半ばか・・・強いて言えば、女優の稲森いずみさんに似て無くもない。それに、店に来るお客さんは、殆どが女将さん目当てだから、私と光江さんが親しくなったって気にする人など誰もいなかった。

(続く)

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