救われるつもりが・・・-第1話 2350文字 カール井上

救われるつもりが・・・-第1話

私ダメダメOLが、女の子の願いをかなえてくださるという祠へお参りに行ったら、実は自分が人助けのできる人間だと気づかされる。なんと、ありがく偉い仏様からのテレパシーを感知する能力があったなんて。不思議なこともあるものです。さて、彼氏ともうまくやっていけるのか・・・

作家名:カール井上
文字数:約2350文字(第1話)
管理番号:r702

女性の願いをかなえてくれるお堂があるそうだ。
「女人救済の悲願ありて祈念すれば必ず感応あり」ということらしい。
ここへ行ってお願いしよう。
そうでもしなければ、この八方塞がりの、何をやっても上手くいかず、踏んだり蹴ったりの状況から抜け出せない。

目覚ましをかけ忘れて遅刻する。コピーを取ればクリアをせずに前の人のセットした枚数が延々と出てしまう。会議室で飲み物を出そうとするとずっこけてひっくり返してしまう。ドジをしたときには必ずお局さんがめがねの奥の細い目であきらかな軽蔑のまなざしを向けているんだ。

昨日も電話の相手の名前を聞き間違えてしまった。お局さんからこっぴどく叱られた。こんなことではIT化が進み、必要最小限の人員で十分賄える今どきの企業の中には居場所が無くなるに違いない。

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彼氏からも、もう一か月以上も放っておかれている。メールをしても既読スルーにはならず返信は来るが、いつも「忙しくてまた今度ね」といった内容だ。ひょっとしたら浮気・・・どころかもう他の誰かとすっかりよろしくやっているのかも。

ついこの間も電話で話していたら、「キャッチが入った」って言って十分以上待たされた。そしてその後で言ったのが、「じゃあ、り・・・あゆみの誕生日にはどこかでお祝いするからね。じゃあ、またね」

ちょっと待って、今の発言ふたつの問題があるわよね。
まず「り」で始まる名前は誰なの。私は「あゆみ」よ。どこにも「り」なんて出てこない。きっとキャッチの相手の女の名前に違いないわ。

そしてもうひとつ。私の誕生日は五月よ。まだ三月の初めだと言うのに、二か月以上も放っておくつもりなのね。
こんな風にどうも上手くいっていない。それならこっちだって、と思ったところで、誰も相手にはしてくれないだろう。

職場では、何をやらせてもちゃっちゃっと手際よく片付けて、あの子に頼めば間違いないと思われ、彼からも毎週末は必ず一緒に過ごしたいと思われるようないい女になれますようにとお願いしに行こう。
きっと願いをかなえてくれるはずだ。

神奈川県の西端、新幹線も停まる駅からさらに私鉄で20分、その終着駅からバスに揺られてもう10分。14世紀の終わり頃に創建された曹洞宗の立派なお寺がある。天狗伝説でも有名なその境内の一角に件のお堂は鎮座している。

このお寺の創設者の妹であった華綾慧春、慧春尼様は自らも仏道修行に励み、出家して人々の救済に生涯を捧げようと思ったが、兄がそれを許してくれない。仏門の厳しい修行は男にしか出来ないという理由で。しかし理由はもうひとつあり、若く美しい慧春尼様が多くの若い修行僧と接すれば間違いが起こらぬはずがないということであった。

慧春尼様は諦めなかった。美しくなければ間違いは起こるまい。なんと焼けた火箸を自ら顔に当てたのだ。その焼けただれた顔を見た兄は妹の入門を断ることは出来なかった。

慧春尼様は誰よりも修行に励み、禅問答でも秀でた能力を発揮する。鎌倉の同じ禅宗の有名なお寺の優秀な僧をもやり込めたほどだ。
しかし慧春尼様はそんなことでは納得しない。弱きもの女性をそして子どもを救済するためには自らの命を捧げることにした。

乾木の小屋を建てその中に入り、そして火を点ける。瞬く間に小屋全体が燃え上がる。知らせを聞いた兄が駆けつけ、「慧春尼、熱いか」と叫ぶ。慧春尼様は、この身を捧げる歓びに熱さなど感じぬ、と応え息絶えたのだった。
その場所に今、お堂が建ち、願い事が書かれた無数の襷が奉納されている。

バスを降りたがよく分からない。多分緩やかな坂道を登って行けばよいのだろうが、何分こういう人里離れたところは滅多に来ないので勝手が分からない。そのとき同じバスに乗っていた帽子を被った男がさっさと歩いていくのが見えた。そうだ、あの男もきっと同じところを目指しているのだろう。こんなところに他に行くべきところなどないだろうから。少し離れて後ろをついていこう。なんていい考えだろうと我ながら冴えているなと思った。

林の間の意外と幅広な道を歩いていく。辛くはないがそれなりに傾斜がある。人の名前や年代が刻まれた石柱が道の両側に並んでいる。背の高い木が何本も生い茂っている。たぶん杉の木だと思うがあまり自信がない。

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階段がありその先に大きな建物が見えてきた。男とは20メートルほど離れて歩いている。男はその建物の前で深々とお辞儀をした。帽子も脱いでいる。ここはそういうところなのか。男が通り過ぎたのを確認して、自分もその建物の前に進み立ち止まった。帽子をとってお辞儀をした。中へ入ろうとしたが中がない。ああ、ここは門なんだ。建物としては薄っぺらいが、門だとするとずいぶん厚いと思う。両側には仏像があり、2階建てか3階建てになっていてそこにも何かありそうだ。

その門を通り過ぎて、さらに上りの道は続く。杉の木は相変わらず何本も。また建物が見えてきた。いや、これはまた門だな。むずかしい漢字が書いてある。門は読めるけど、その前は何だろう。「瑠璃門」。お局さんはこんなの簡単に読んでしまうんだろうなあ。

門なんだけれど微妙に建物なのね。なぜなら中に廊下があるから。板張りの廊下はよく磨き上げられており、よっぽど毎日雑巾がけをしているのに違いない。そして通り抜けるところだけは板が張られていない。そしてこの門の前の木はモミジね、色づく季節に来るときっと素敵なのだわ。

男はさっさと歩いて二棟並んでいる立派な建物のうちの左側の方へ進んで行く。靴を脱いで階段を上り、扉を開いて中に入って行った。えっ、あの人ひょっとしてお坊さんだったのかしら。着ているものが全然そうじゃなかったけど。私も中に入ってみよう。叱られたら出てくればいい。靴を脱いで階段を上り、両開きの引き戸をそおっと開けてみた。

(続く)

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