救われるつもりが・・・-第3話 2910文字 カール井上

救われるつもりが・・・-第3話

私ダメダメOLが、女の子の願いをかなえてくださるという祠へお参りに行ったら、実は自分が人助けのできる人間だと気づかされる。なんと、ありがく偉い仏様からのテレパシーを感知する能力があったなんて。不思議なこともあるものです。さて、彼氏ともうまくやっていけるのか・・・

作家名:カール井上
文字数:約2910文字(第3話)
管理番号:r702

「ごめんなさい、どう行けばいいのかよく分からなかったんで」
「多分この慧春尼堂を目指しているのだろうと思いましたが、敢えてこちらから話しかけるわけにもいかなかったので。遠回りをさせてしまいましたね」

なんだ、そうだったのか。やっぱり私はドジだわ。
「さあ、襷をいただきにいきましょう」
男はさっさと歩き始めた。

男の言う通り総受付はさほど遠くはなく、すぐにいただくことが出来た。総受付には筆記具も置かれていて、そこで願いを書き込める。書こうとして固まってしまった。何て書けばいいのだろう。
一緒に来てくれている男に聞いてみた。

「どういう風に書けば良いんですか」
「願い事をその通り書けばいいと思いますよ。あなたの願いが何かは分からないけれど」「お願いしたいことは、恥ずかしいんですけれど、職場では重宝がられる存在になりたいということ、彼氏と上手くいきますようにということなんです」

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見ず知らずの人によくこんな恥ずかしいことを言えるなと自分でも呆れてしまう。けれど分からないからしょうがない。
「ふたつは欲張りですね。ひとつにした方がいいと思います」
そういうものなんだ。ふたつは欲張りなのか。でも、どちらにしよう。仕事も大事だし彼も大事なんだよな。迷っちゃうな、どうしよう。

「かなり迷ってますね。じゃあ、まとめてこうしたらどうですか。幸せになりたいのです。よろしくお願いいたします」
ああそうか、そういう手があるのか。
「有り難うございます。そうします」

下手な字でなんとか書き込んだ。
「住所と名前も書きましょう。どこの誰かが分からないと、慧春尼様でも願い事を叶えてあげられませんから」
そうなのねと思い、住所と名前も書き込んだ。

「それで大丈夫でしょう。お堂の場所はもう大丈夫ですね。願いがかなうといいですね。それじゃあ、僕はここで」
そういって男は瑠璃門の方へ歩き出した。
「有り難うございました」
それだけ言ってお辞儀をした。

再び慧春尼様の前にいる。襷はしっかりお供えした。もう一度手を合わせ目を閉じ、頭を下げ「よろしくお願いいたします」とつぶやいた。
声が聞こえた。

「礼を尽くすのですよ。何事もおろそかにしてはいけません。あなたの願いは私がかなえます。もう一度言いますよ。礼を尽くすのですよ」
これで三回目だ。礼を尽くし、何事もおろそかにしない。分かりました。おっしゃる通りにいたします。どうか願いをかなえて下さい。

そのとき思った。自分は早速せっかくの教えに背いていないかと。あの男の後をついてきたお陰で有難いお言葉を三度も聞くことが出来た。慧春尼様のお堂にも来ることが出来た。襷にお願い事を書いて奉納することも出来た。それなのに自分は男に礼を尽くしただろうか。何事もおろそかにしてはいけないって教わったばかりと言うのに。

こうはしていられない。
慧春尼様、有り難うございました。よろしくお願いいたします。礼を尽くして参ります。大急ぎでお伝えし、男の後を追った。

瑠璃門を出るとき振り返って深々と頭を下げ、階段をかけ下りた。追い付けるだろうか。多分男はまたバスに乗って帰るのだろう。バス停で追い付けるだろうか。もし追い付けなかったら、あるいは男は全然違うところに行ったのならどうしようもないが。

坂道をかけ下りた。茶店が見えてきた。バス停は確かその先。いた。男がバス停の前にひとりで立ちスマホをいじっている。まだバスは来ていない。間に合った。よかった、しっかりお礼を言おう。礼を尽くさなきゃ。何事もおろそかにしてはいけないんだ。

もう歩いても大丈夫だ。上がった息を整えて。ハアハアいってちゃ、いくらお礼を言ったって伝わらない。男はスマホに目を落としたままで、近づく私には気付いていない。
「またお会いできました。先程は有り難うございました。本当にお世話になりました」

男はちょっと驚いたように私を見ている。
「襷はお供えできましたか」
「ええ大丈夫です。慧春尼様が願いはかなえるとおっしゃってくださいました」

「声が聞こえたのですか」
「はい。聞こえました」
「よかったですね。聞こえるタイプの人なんですね。僕は逆に何も聞こえないタイプなので、聞こえる人は羨ましい」

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「実は広い畳敷きのお堂でも聞こえたんです。長い階段の上のお堂でも」
「そうですか。それはすごいですね」
「三度とも同じなんです。礼を尽くしなさい、何事もおろそかにせず」

男は黙って頷いている。
「それなのに私は丁寧に案内してくださったあなたに適当にお礼を言っただけでお別れしてしまいました。これじゃあいけないと気付いて、急いで来たんです。間に合って良かった。本当に有り難うございました」
そんな自分になんか適当で十分ですよと男が言ったときにバスが着いた。

————

バスに乗り込んで並んで座った。広いお堂や階段の上で話しかけて下さったのはどなたですかと聞いてみた。
「広い畳敷きのお堂は本堂ですね。真ん中の仏様は釈迦牟尼仏、お釈迦様、仏様ですよ。その右が文殊菩薩様、左が普賢菩薩様です。想像ですが、あなたに話しかけたのは普賢菩薩様でしょう。何故なら普賢菩薩様は女性の味方なのです。階段の上にいらしたのは十一面観世音菩薩様です。性別は実は微妙なんですが、女性の声だったのであれば迷えるあなたを救うために女性の声で話してくれたのでしょう」

「慧春尼様は何故女性の願いを叶えて下さるのですか」
「慧春尼様の時代は、今とは違って女性は虐げられていたのでしょう。女性が救われるようにと自らのお命を捧げたのでしょうね」
そしてもうひとつ気になっていたことを聞いてみた。

「慧春尼様の前で泣いてらっしゃったようでしたが・・・」
男はちょっと驚いたようにこちらを向いたときにバスが駅に着いた。男は立ち上がりながら「気付かれていましたか」とつぶやいた。
電車に乗り込み、また並んで座った。

「私、会社で失敗ばかりしていて、もっとしっかりしなきゃいけないと思って、慧春尼様におすがりに来たんです」
「彼氏との関係がどうとかということも言ってましたね」
「そうなんですよ。なんだか放っとかれっぱなしで。浮気されてるのかもって心配なんです」

「まあ、他人からはなんとも言えませんが、心配しすぎかもしれませんね。誰でも失敗はするし、恋人との関係も思い通りにいかないこともよくあるでしょう。でもせっかく仏様から話しかけてもらえたのだし、慧春尼様にお願いの襷もお納めできたし、もう大丈夫でしょう」

「はい。頑張ってみます」
「聞いてくれたので話しますが、慧春尼堂の前で泣いていたのは事実です」
「何か訳がおありなんですね」

「自分は女性ではないので、慧春尼様におすがりは出来ないんですよ。しかし、いつもお堂の前に来ると心が落ち着きます。残念ながらあなたと違って声は聞こえないけれど、こちらの思いは聞いて頂けているようで心が安らぎます。そうすると何となく有り難くなって泣けてくるんですよ」
「そうなんですか」

「あなたもまた、会社でも彼氏とも上手く行ったらお礼に詣でるといいですよ」
「有り難うございます。頑張ります。そして、またお参りに来ます」
電車は駅に着き、そこからは互いに違う路線に乗るのでそこでお別れとなった。

(続く)

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