今様シンデレラの結末は-第12話

今様シンデレラの結末は-第12話

作家名:くまあひる
文字数:約1890文字(第12話)
管理番号:r700

12.自分改革

体調は順調に回復して日常生活に戻れた。
柊さんは早く帰れる日は私の部屋に来て、私と晩御飯を食べて帰っていく。
私がちゃんと食べているのか心配してのことだろう。
私の体重は犬飼課長が着任する前より9㎏も減っていた。
疲れやすく立ち眩みなどもよくあったので、おそらく健康状態は良くなかったと思う。
最近は柊さんに見張られているので体調は格段に良くなってきた。
柊さんはウチに来るたびにコンビニでスイーツやお酒を買ってやってくる。
食事して、テレビ見たり、その日にあったことを話したりして、帰っていく。
軽いキスだけ残して。

健常な男性ならそれで納得するはずないのに。
こんな薄っぺらくなっている私ではそんな気も起きないのだろうか・・・。
彼の前で見せられる体ではないから、そういう雰囲気になっても耐えられるだろうか。
こんな女性っぽくない体に幻滅されたらどうしよう。
以前はもっと体力もあって、筋肉もついていた気がするけど、今じゃ・・・。
どうしよう、柊さんに嫌われたら。
風呂上りに久しぶりに姿見の鏡の前に立つと、見なきゃよかったと後悔した。

好きではない自分を直視することから逃げていた。
どうしたらいいのかわからず鏡の前で立ち尽くしてしまった。
絶望する気持ちを抑えてネットで検索してみると、健康な体作りはまず食事・運動・睡眠を充実させるとよいと複数書いてある。
食事はまずまずクリアだと思う。
睡眠も最近はぐっすり眠れる日もある。
運動は特に何もしてない。
検索を進めると、ウォーキングなどの有酸素運動が上位にランキングされている。

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ウォーキングかぁ・・・。
体力づくりにやってみようかな、少しずつ食事の量も増やして、今まで出来てなかったことを頑張ってみようと思った。
不思議・・・今までこんなに自発的に何かをしようなんて思わなかったのに、これも柊さんという存在があってこそだと思う。
それから私は出来るだけ歩くようにして、あまりこだわってなかった昼ごはんもバランスがとれるように手作り弁当にしたり、定食などを取るようにした。
柊さんが来ない日は夜散歩したり、ストレッチなどして体力強化に努めた。
今まで自分を磨くということから遠ざかっていたので、服やお化粧に関しても勉強不足で浦島太郎のような気分だった。

「美和、俺来週から出張一か月、新支店立ち上げ」
いつものようにやってきた柊さんが言った。
「そうですか、気を付けて行ってくださいね」
「それだけ?」
「?」
「いいけど・・・、ちゃんとご飯食べるんだぞ。美和こそ体調気をつけろよ」
「はい」
なにかモノ言いたげな感じではあったが、彼は何も言わなかった。

彼が出発してから私は柊さんの紹介でジムに入会し、トレーナーから基本的な指導を受け体力強化に励んだ。
実は夜のウォーキングを、柊さんに危ないからと止められてしまったのだ。
私を担当してくれた女性トレーナー、佐伯薫さんはとても気さくで自宅でも出来るストレッチや女性ホルモンを増やす食べ物などを教えてくれたので、それも積極的に取り入れた。
二週間目くらいから、自分でもわかるくらい体が変化してきたのが分かった。

中身は変わってないかもしれないけど、自分の行動で少しずつ自分自身が変われていることはとてもうれしかった。
週末は買物に行こう。
柊さんが帰ってくる前に服やお化粧品も買いに行こう。
帰ってきた柊さんに喜んでもらえるようにキレイになりたい。
と言っても・・・どんなものが自分に合うのかすらわかってないので図々しいとは思いながらも、ジムに行ったとき佐伯さんに聞いてみた。
私より年下と思っていた佐伯さんは実は私より5つも上で、さすがトレーナーと頷ける美しさだった。

「どういうふうにしたいの?」
「いろいろあって自分のことに構っていられない時間が長かったんです。だから基礎的なところから教えてくれる・・・うーん、佐伯さんのお化粧バージョンみたいな方がいたら教えてほしいんです」
「やだ、何それ。でも、よかったらウチでやろうか?実はね、ウチの実家エステサロンやってんの。一応私もエステシャンの資格持ってるのよ。母の時代はいわゆる散髪屋だったんだけど、兄が跡を継いでから美容系にも進出したの」

「ホントですか?ありがとうございます。お恥ずかしながら私エステ初体験なんですよ」
「あら、それじゃ兄の格好の餌食ね・・・・。あのね・・・兄はちょっと変わってて、その・・・引いちゃうかもしれないけど腕は間違いないから。もちろん初回は私も付き添うから、でもどうしても兄を受け付けられなかったら遠慮なく言ってね。じゃ、土曜日予約入れとくから」
そう言って佐伯さんはお兄さんの名刺を渡してくれた。

(続く)

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