伝説の女性器-第5話
挫折した箱根駅伝ランナーが次に追い求めるモノとは!?
作家名:ステファニー
文字数:約1980文字(第5話)
管理番号:k139
社長とキリヤのこれまでの話を聞き終えた時、ふとアオは自分の話をしたくなっていた。理由はわからない。ちょうど亡くなった時の母が社長と同じぐらいの年齢だったからか。地味だった母の面影はこの女社長とは似ても似つかないが。
それまで押し黙っていたアオはぽつりぽつりと口を開いた。
両親が事故死したこと。
少ない賠償金しか貰えなかったこと。
中学からずっと駅伝に力を尽くしていたこと。
箱根駅伝に出たかったけれど、故障により戦線を離脱し、引退を余儀なくされたこと。
大学についていけず、留年したこと。
今年になって一気に貯金が減って心配になっていること。
泣かないように頑張ったが、最後は涙が頬を伝っていたかもしれない。アオは誰にも打ち明けられなかった胸の内を初対面の女社長にすべてぶちまけた。
社長は親身になって聞いてくれた。途中でキリヤが語彙の意味がわからなくて何度か質問していたが、それにも優しく答えていた。
「あなたが今一番不安に思っていることはなんだろう?」
そう社長に問われ、改めてアオは問題を整理してみた。そして大学を卒業できるのかどうかと無事に就職できるかどうかだと思う、と回答した。
「そう。じゃあ私が両方とも叶えたげる」
どういう意味ですか、と言おうとしたが、社長はその前にアオの口を塞いだ。柔らかく、あったかな感触が唇に当たり、目の前がふっと暗くなった。
いつの間にか社長はアオの真横に座っていた。あろうことか、社長は着ていたワンピースを脱ぎ捨て、下着姿になっていた。
「社長はね、とっても気持ち良くしてくれるよ。だから安心して、先輩」
すでに腰掛けていたソファに押し倒され、仰向けになったアオの顔をキリヤは覗き込みながらそう言った。
アオは抵抗を試みた。だが、社長はアオの股間にちょうど跨っており、そこに全体重を乗せていた。起き上がろうにも、さすがに身体が上がらなかった。
社長は抗うアオを嘲笑うかのように、アオの面前にたわわな胸を近づけ、赤いレースでできたブラを外した。ピンクの乳輪がアオの鼻先をつついた。
二つのココナッツで、社長はアオの両頬を挟んだ。アオは呻いた。
素直になりなさい、もう本能は反応してるのよ、と社長はアオに囁いた。その言葉通り、アオは下半身が熱いと感じていた。だが、同時に尻に冷たさも走った。社長がアオからズボンとパンツを剥ぎ取っていたのだ。
いい子ね、と言いながら、社長はアオの欲棒を愛でた。まるでアイスキャンディを舐めるかのような舌遣いだった。
「このソファ、高いからフカフカ。ヤリ心地いいよ」
キリヤの意味不明な助言は、もはやアオの耳には届いていなかった。初めての快楽に、意識が遠のきつつあったからだ。
そのうちにアソコがぬるくなった。ふと目線を上げると、社長がアオの腹部で跳ねていた。
楽しそうではないが、苦しそうなわけでもない、見たことのない人間の表情をアオは不思議な気持ちで見入った。
と、同時にアオ自身もとろけてきた。一番敏感な箇所がどうしようもなく心地よく、頭が回らなくなったのだ。
すごいな、これは…。
堕ちていく過程で、最後にあったアオの理性が、そう呟いた。
いいわね、この鍛え上げられた肉体。あなた、絶対、売れるわ。単位が取れなくて困ってるなら、大学なんてやめちゃえばいいのよ。会社と役所以外にも働く場所はいくらでもあるものよ。私があなたにお金も、就職も、人生の全て手配してあげる。
アオの割れた腹筋を指でなぞりながら、こんなことを社長は言ってきた。
本当にこんな悦楽だけでカネになるというのか。
だとしたら進路で死ぬほど悩んでいた自分はなんだったのだろう。
疑問は尽きないが、闇に覆われていた底に降り注いだ一筋の光を、拒絶してしまえるほど、アオは元気が残っていなかった。
とりあえずトライアルで、ということでアオは引き受けてみることにした。そこでうまくいそうであれば、大学は中退してしまおう、と考えた。
それからは、キリヤの指南を受けながら、性技術を身につけていき、天性の運動能力を持つアオは、メキメキと力をつけていった。もともと容姿の良かったアオは、キリヤのヘアメイクアドバイスを受けて、見違えるほど垢抜け、現場で出会う女性からも目を細められるまでになった。仕事は次から次へと舞い込み、すぐに安定した生活を送れるまでに至った。
心の不安が消えた時、アオは満を持して大学に退学届けを提出した。
さよなら、夢と希望。
学生課で手続きをしてキャンパスを出る時に、アオはそう思った。
キャッキャッ、と騒ぎながら練習に励む子どもたちが眩しい。夕陽に照らされた川面の煌めきと相まって、明るい絵を作り出している。
両親は天から自分を見ていて、悲しんでいないだろうか。
アオはぶんぶん、と頭を振った。
死んだ人間が知れるわけがない。そう自分に言い聞かせる。
アオは立ち上がり、ランニングを再開した。
(続く)
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