アナルフリーダム-第12話
夫の不倫を知った私は茫然自失のまま万引きしてしまうが、ある男性に救われる。
人生に絶望した私は、沖縄の彼の住まいに招待され美しい女性と出会い、生まれ変わる。
作家名:優香
文字数:約3200文字(第12話)
管理番号:k133
翌朝目覚めると、カーテンを透かして挿し込んで来る陽射しを浴びて輝くような楓の裸身が傍に横たわっていた。
彼は?
何処に行ったのだろう?
昨晩は真ん中で私と楓に腕枕をしてくれて眠ったのに。
楓の寝顔の余りの美しさに想わず乳房を揉み立ててキスをする。
「おはよう」
「おはよう。あの方は?」
「釣りに行ったんじゃないかな?コーヒー淹れるわ」
楓に手を引かれて一階に降り、テーブルに掛ける。
「彼、釣りが好きなの。この崖の向こうに磯があって、そこに。時々釣って帰って食べさせてくれるわ。お砂糖もミルクもないけど、良い?」
「うん。私も、何時もブラックよ」
「私、最初はだめだったけど、彼の真似してブラックで飲んでて、今はもう馴れて、ブラックの方が好きになったわ」
楓が良い香りのコーヒーを淹れてくれた。
「釣って帰るのは三度に一度くらいよ。釣れなかった時は、沢山釣れて食べ切れなかった時に冷凍して置いた魚。昨日の海鮮は彼がスーパーで買って来たの。お肉類は、倉庫でローストビーフとスモークハムを作ってて、それを。彼の手造りだけど、意外に美味しいわよ」
楓が悪戯っ子のように、首を竦めて笑った。
「あの方、何をなさってるの?」
「若い頃に始めたIT関連の会社が大成功して、今は早々と隠居して相談役をしてるわ」
昨日、楓と私が愛し合うのを視ているだけで彼は何もしなかった事を感じたままに楓に訊いた。
「楓さんと、彼は、その、セ、セックスしないの?」
「もちろんするわよ。私達、夫婦だもの。でも、亜由美さんがここにいる間は、亜由美さんが最優先だから。彼にとっても私にとっても」
二人はやはり夫婦だった。
それなのに、私を最優先って?
昨日、楓と“愛してる”と言葉にし合った時の想いが再び巡る。
楓が私と痴戯を繰り返した事に、彼は嫉妬しないのだろうか?
楓は、彼が私とキスをしながら私の乳房を愛撫した事に嫉妬しないのだろうか?
「私?」
「そうよ。彼が亜由美さんを招待するって言った時、そう言ったの。亜由美さんが望む事を望むようにしてあげなさいって。望む事を言葉にして言えるようになるまで、ね」
昨日楓に、何度も私の欲望を言葉にして訴えるように仕向けられた。
その事なのだろう。
「どうして、そんな事?」
「コーヒーお代わりするでしょう?あのね、私、彼と出遭うまで、不良だったの」
「貴方が?」
「そう。父親が仕事一筋で夫婦仲が冷え込んで、父親はそれなりの会社の偉いさんだったから、体面を気にして離婚出来なくて、母親は夜遊び三昧で、ほとんど会話もなし。だから余計ひねくれて」
私もこのまま夫と生活して行けばそうなるのか。
「で、ワンルームを借りて独り暮らしを始めたの。高三の夏にね、喫茶店で、独りでダベってたら、彼がいて、お金持ちみたいだから後を付けて、人のいない処で、護身用に持ち歩いてたナイフを突き付けて、金よこせ、って、やっちゃった」
楓がまた、子供のように無邪気に首を竦めて愛らしい舌を出した。
「ええ?貴方が?そんな事?それで?」
「うん。私なんて軟弱だし、男性の彼に力づくで抵抗されたら敵うわけないのにね。バカみたいでしょう?そしたらね、彼が、お金は欲しいだけあげるから、ちょっと付き合いなさい、って。私、2年前に結婚してここに連れて来られて、初めて彼とセックスするまで処女だったのよね。それまで好きな男性もいなかったの。それで、売春なんてしないよ、って言ったら、黙ったまま喫茶店に連れて行かれて、こんな事して楽しいかね?って訊かれたの。あの優しい表情で。私、なんか、摑まっちゃったって、その時感じたの」
私もそうだった。
万引きを視つかったからではない。
喫茶店で向かい合ってあの優しい微笑みを視た瞬間、彼に“摑まった”と感じたのだ。
「つい、彼に、全部しゃべっちゃった。そしたら、私と友達にならないか?って言い出して。その頃はひねくれてたから、どうせ私の身体が目当てなんだろうって感じたけど、それならそれで金をふんだくってやるって想って交際い始めたの。携帯とメールのやり取りをするようになって、映画やコンサートを観に行ったり、食事したり、でもずっとそれだけなの。部屋には来ないし、セックスも求められないし、キスさえしないのよ。それなのに私、そのうち彼を愛し始めていて、30歳も離れているのによ。それからね、高校を卒業する前に、彼が私の両親に会うって言い出して、で、会った両親に彼が、私と結婚させて下さいって言ったの。私も知らなかったんだけど、親は彼がとんでもない会社の社長だって知って二度びっくりよ。で厄介払いを兼ねてだろうけど、親が結婚を認めたの」
「そんな経緯だったのね」
「うん。それに、もっとびっくりしたのはね、私と結婚してすぐに、会社を後輩に任せて、社長を辞めて相談役になっちゃったの」
「どうして?」
「私も訊いたわ。そしたら彼は、お前と何時も一緒にいたいからって」
「ああ、なんて素敵な事」
「だから、彼が月に一度の定例会議で東京に行く時以外は何時も一緒よ」
その時に、私は彼に救われたのか。
何と言う奇蹟だろう。
「羨ましいわ。そんなに愛されるなんて」
「それでね、私、決めたの。何から何まで彼の望む女になろうって。彼にそう言ったら、家庭教師を二人付けてくれたわ。一人は知識教養を教えてくれた。もう一人は礼儀作法を。勉強は元々嫌いじゃなかったし、私、頑張っちゃったの。で、今は、彼の望む女になれてると想う。アナルセックスも、浣腸やウンチするのを視せるのも、彼に望まれたからよ。最初は、いいえ、今でも、勿論酷く恥ずかしいけど、彼が望むなら何でもするって想ってるわ」
「彼も素敵だけど、楓さんもすごく素敵だわ」
「亜由美さんにそう言われると嬉しい」
「でも、一つ教えて。それだけ彼を愛してて、私を愛せるの?貴方に愛して貰った時、すごく嬉しかったけど、彼が昨日、キスしながら私のおっぱいを愛してくれた時、楓さんは厭じゃなかった?私が言うのも変だけど、もし、彼が私を抱いたら、貴方はどう感じるかしら?」
私の問い掛けに、楓が宙に視線を遣り、小首を傾げた。
「そうなのよね。亜由美さんとの出遭いを聴かされて、すごく素敵な女性で、ここに招待するって彼に言われた時も、自分でもどうしてか判らないんだけど、厭だなんて感じなかったのよ。それにね、楓もきっと気に入って好きになるはずだからって言われたの。そんなもんなのかな?って想った。私は、彼と出遭って愛して結婚してセックスして、現在に至る、よ。それまで彼以外に、人を愛した経験もセックスした経験もなかったから、誰かに嫉妬した事もなかったのよね。で、空港で亜由美さんを視た時、一目惚れしちゃったの。自分が女性を愛せるなんて想いもしてなかったの。だから、今はもう、彼と同じくらい亜由美さんも愛しちゃってるし、彼が亜由美さんとセックスしても平気、いいえ、多分嬉しいと想うわ」
楓が美貌に恥じらいを浮かべた。
「私も同じ。空港で楓さんを視て一目惚れしちゃった。女性を愛した経験もないのに」
「彼が最初に亜由美さんを視た時、私を初めて視た時と同じ感情を持ったのね。多分。それと、たった今閃いたんだけど、彼は昔こういう経験をしたんじゃないかしら。レスビアンの女性カップルを愛して、三人で愛し合った。だから、私と亜由美さんが愛し合うようになるって感じた」
「私には判らないけど、貴方がそう感じるならそうかも」
「まあ、彼の過去を詮索しても意味がないわね。今までした事もないし、するつもりもないわ。今彼を愛してて、新しく現れた亜由美さんを愛して」
「私も、貴方と愛し合えて、それだけでも良い。彼が愛してくれるか判らないけど」
「彼ももうとっくに亜由美さんを愛しちゃってるわよ。貴方と出遭って、貴方の想いを聴いて。でなければ、ここに招待したりしないわ。後は亜由美さんが望めばセックスしてくれるはず」
(続く)
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