恋するママ-後編 2480文字 バロン椿

恋するママ-後編

進学教室で、「受験の女神様」とまで崇められている、40歳の笠間由香里が恋をした。
相手は同じ進学教室で英語のアルバイト講師をしている大学3年生、21歳の一之瀬謙治。「笠間せんせー」と声を掛けられるだけで、由香里は頬が赤くなってしまう。
さあ、この恋の行方はいかに……

作家名:バロン椿
文字数:約2480文字(後編)
管理番号:k117

恋するママ

「笠間せんせー!」
その声なら、振り向かなくても分かる一之瀬君。由香里は早くも胸がドキドキしていた。
「な、何でしょうか?」
「痩せました?」
「ど、どうして?」
「いやあ、なんか、後姿がすっきりしてたから、へへへ」

ジムに通い始めて2週間、3キロ痩せたが、夫ですら気がついてくれないのに、それを、それを……由香里は嬉しくて嬉しくて、子供のようにピョンピョン跳ね回りたいくらいだった。
「あの、あの、スポーツ・ジムに通っているんですけど……」
「凄げえなあ、結果にコミットか」
「ち、違う、ただのスポーツ・ジムよ。それより、しぃー」

褒めてくれるのはいいが、一之瀬君は声が大きい。由香里は他人に聞かれてはと、口に指を当てると、彼も「いけない、いけない」と小声に変わった。
「どこのジムですか?」
「た、たいしたところじゃないのよ。市民体育館」
「へえ、あそこですか。あの、僕も一緒に行っていいですか?」
「い、い、一緒!」

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天にも昇る気持ちとはこのことか、由香里は思わず頭のてっぺんから声が出てしまった。
「笠間せんせ、しぃー、ですよ」
「あ、そ、そうね、くくくっ」
「へへへ、来週、いいですよね?」

由香里はまたも甲高く「はーい!」と言ってしまい、慌てて、自分で「しぃー、よね」と口に指を当てていた。
「受験の女神様」なんて言葉はいらない。自然に笑みの浮かぶ由香里は今や「恋するママ」になっていた。

パパには内緒よ

(そうか、こういうのが流行っているんだ……)
由香里がリビングでパソコンで通販サイトを開いていると、タイミングよく次男の明がオヤツ探しに降りてきた。
さっそく、「ねえ、似合うか見て」と隣に座らせると、「運動会なの?」なんて可愛いことを言う。

「違うわよ、スポーツ-ジムよ」と、唇に指をあて、「内緒」のポーズをとると、勘のいい明は「あのイケメンのお兄ちゃんと一緒なの?」と目を輝かせた。由香里も明には隠し立てはしない。「ふふふ、そうなのよ」と微笑むと、明はパソコン画面に見入り、あれこれとクリックする。

画面に映るモデルたちは大学生のモデルばかりだから、自分のママには似合わないのははっきりしているが、彼は「ダメだよ」とは言わず、「他にはないかなあ」と気を使ってくれる。

だから、つい甘えて、「ママはこれが欲しいの」と、画面をクリックして選んだのは淡いピンクのトップスに濃紺のパンツ付きレギンス、40歳のママが着るようなものではないが、明は「へえ、カッコいいなあ」とニッコリ答えてくれた。

「でも、パパやお兄ちゃんには内緒よ。いい?」
「うん」
「これ」
「へへ、いいの?」
「ママと明の秘密」
「はーい」

おやつ代わりに「口止め料」を貰った明は「これだよね」と人差し指を口に当てながら、リビングを出て行った。
口止め料を含めた値段は安くはないが、これで一之瀬君の気持ちをゲットできれば高くはない。勿論、由香里は「購入する」をクリックした。
よし、これでバッチリ!
由香里の心は早くもスポーツ・ジムに飛んでいた。

恋は儚い

ドレッシングルームで昨晩届いた淡いピンクのトップスに濃紺のパンツ付きレギンスに着替え終えた由香里は姿見の前に立っていた。
(ふふ、可愛い。おっぱいだってカッコよく見えるわ。
 飲みに行こうよ、なんて誘われたら、くくくっ……
まさか、そんな訳ないけどね……)

そして、自販機でミネラルウォーターを2本買った。
これ
え、僕に?
はい、水分補給しないとね

ふふっと微笑んだ由香里は少女のように舞い上がっていた。時計を見ると、約束した時間まで、あと10分!はやる気持ちを抑えつつ、ロビーに降りていくと、一之瀬君が待っていた。

「笠間せんせ、こんにちは」
「はーい、こんにちは」
「へえ、カッコいいなあ……ジムではやっぱりこういうのを着るんだ」
彼は由香里のレギンス姿を褒めてくれる。彼はジャージ姿だけど、それすら由香里には素敵なフィットネスウェアに見える。

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「はい、ミネラルウォーター」
「さすがですね」
予想以上の展開に「ヤッター」と叫びたくなったその時、背中の方から「こんにちは」と元気なハキハキボイスが聞こえてきた。
由香里にトイレで睨まれた教務室の職員の一人、茜ちゃんだった。

「笠間先生がジムに通っているって謙ちゃんから聞いたので、私もついて来ちゃいました」
「茜は笠間せんせに憧れているんだよな」
「はーい!」
二人はニコニコ笑いながら手を繋いでいた。

(なに、これ、謙ちゃん、茜? 酷くない……)
由香里は頭が真っ白になっていくのがはっきり分かった。
それは、当たり前と言えば当たり前だが、由香里の恋は儚く終わってしまった。

可愛いお前が大好きだよ

「へえ、いいねえ」
「あ、エッチ。何をするのよ」
その夜、遅く帰ってきた夫がレギンス姿の由香里のお尻に触れてきた。

「へへへ、お前も捨てたもんじゃないな」
「子供が聞いてますよ」
「とっくに寝てるよ」
スポーツ・ジムから帰ってきた由香里は着替えもせず、腑抜けになってしまっていた。

「ひょっとしてイケメン君に振られたか?」
ビールを手にした夫は笑っていた。
「ど、どうして?」
「ははは、明に口止めしたって無駄だよ。風呂で全部喋っちゃった」
「まったく…」

「へへ、いい女だね」
「からかわないでよ」
「からかっていないよ。惚れ直したんだよ」
「え?」
「『受験の女神様』なんて僕は嫌だね。いつも口を尖らせている、一本気で、怒りんぼの由香里が僕は好きだ」

もう15年以上も前、付き合い始めた頃、「どうしてそれじゃダメなのよ!」なんていつも怒っていた由香里を、「そんなことを言ったってしょうがないだろう」と宥めすかすのが夫の役目だった。

「あなた」
「いいなあ、そのレギンス」
「明が選んだのよ」
「そうか。あいつも見る目があるな、ははは。どうだ、久し振りに一緒に風呂に入るか?」
「いやーん、恥かしい」

夫に抱き寄せられた由香里はそう言いながらも腕の中で甘えていた。
チュッ、チュッチュッ……
「可愛いなあ、お前」
「ふふ、こんなおばちゃんでも?」
「ああ、大好きだ。ほれ」

チュッ、チュッチュッ……
「あーん、いやーん」
今夜の風呂は長くなりそうだ。

(終わり)

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