一夜限り-第3話
もう50年も経ちましたが、その夜のことは今でも忘れられない思い出です。
相手の女性はとても素敵な方でしたが、名前が「雪乃(ゆきの)さん」であること、それしか知りません。
たった一夜の関係ですが、今、思い出しても股間が硬くなります。
どんな出来事だったのか、あなたにこっそりお話します。
作家名:バロン椿
文字数:約2450文字(第3話)
管理番号:k130
狙っていたのよ
事を終え、二人で部屋風呂に入ると、雪乃さんが「よかった?」と額の汗をぬぐってくれました。考えてみると、まともに顔を見たのは初めて。
香西かおりさん似の美人は頬が桜色に染まり本当に美しく、「うん」と頷くと、「ふふふ、ありがとう」と笑顔を返してくれました。
わずかに開けたガラス戸から吹き込む夜風が涼しく、「気持ちいい」なんて生意気なことを言っていると、「偶然じゃないのよ」と雪乃さんが頬を寄せてきました。しかし、私は何のことだか分からずポカンとしていると、「君を追いかけて来たのよ」と雪乃さんは恥ずかしそうに笑いました。
「眠れなくて、お風呂にでも入ろうかと部屋を出たの。そうしたら、君の姿が目に入って、そのままついて来たのよ」と言うのです。まさか、そんなこと、私は信じられませんでしたが、「最初にバスに乗った時から君のことをずっと狙ってたのよ」と告ってきたのです。
確かに、この3日間、毎朝、笑顔で「おはよう」と、バスで一緒にあちらこちらに行っては、「素晴らしい眺め」なんて話しかけてくれてはいましたが、そんな風に見ていたとは……
ハッと思って雪乃さんを見ると、「おかしい?」と小首をかしげる、その妖艶で何とも言えない顔は色気に満ち、私は気圧されるばかりで、「好きよ」と身を預けてくる彼女にスーと唇を合わされ、第2ラウンドが始まりましたが狭い湯船では何もできません。
私たちは唇を合わせたまま湯船から出ると、濡れた体をタオルで拭うのももどかしく、素っ裸のまま部屋に戻りました。
身も心も蕩けて
縺れ合うように布団に倒れ込むと、雪乃さんは私を仰向けにしてクルッと向きを変えると、顔の上に跨ってシックスナインでお互いの性器を舐め合うことをせがんできました。
それで、私は小陰唇にしゃぶりつき、ペロペロと割れ目を舐めたり、つぼめた舌先でその中を掻き回しました。雪乃さんは「あぅ、あっ、あ、あああ……」と大きな声を上げましたが、彼女も私のチンポを咥え、手で扱いたり根元まで咥えて、クチュッ、ジュポッと吸い込んだりしていました。しかし、多分、一時的な種切れだったのでしょう、私はどんなに扱かれても、舐められても、逝きたくなるような、あのモヤモヤ感は湧いてきませんでした。だから、今回は私が猛烈に舐め上げ、掻き回し、次第に、雪乃さんは咥えるのを止め、「あっ、あ、あああ、ダメ、ダメ、あ、あ、い、逝く、あ、あ、ダメ、ダメ……」と愉悦の喘ぎ声を上げるようになりました。
股間は濡れてぐっしょり、さらに私が舐め続け、偶然にクリトリスに触れてしまうと、「あっ、あ、あああ、ダメ、ダメ、あ、あ、い、逝く、あ、あ、ダメ、ダメ……」とお尻を捩って逃げ出しました。
どうやら逝ってしまったようで、「はあ、はあ、はあ……」と布団に横たわる雪乃さんは腰をピクンッピクンッピクンッとさせていましたが、私を抱き寄せると、「恥ずかしい……」と小声で言いました。そして、髪のほつれを直しながら、「あんまり逝かないんだけど、キミだからかな」と笑いました。
カチカチと時計の音しか聞こえない静かな部屋、時だけが過ぎていきますが、私たちには関係ありません。
隣に横たわった私をじっと見つめていた雪乃さんが、「ダメね、私ったら、本当に好きになってきちゃった」と言うや、伸し掛かるように再び唇を合わせてきました。チュッ、チュッ……吸っては、離れ、また吸い付く、キスの嵐ですが、告られ、心が通じ合ったせいか、私も気持ちが入って吸い返しているうちに、ブチューって感じの本当にねっとりしたディープキスになりました。
私たちは唇を合わせたまま布団の上を転げ、上になったり下になったり、私が雪乃さんのおっぱいを揉めば、雪乃さんは私のチンポを掴み、それならば、私も雪乃さんの性器を弄くり、そうこうしているうちに雪乃さんの息が上がって「はぁ、はぁ……」と悩ましい声を漏らすようになりました。
目を見ると、「入れて」と。体を起こした私は、足を開いて横たわる雪乃さんに覆い被さり、チンポに手を添えた雪乃さんが性器に迎え入れるように腰を突き上げ、私たちの体は一つに繋がりました。
後は私が腰を突き出し、「あん……」と呻く雪乃さんが私を強く抱きしめる、その繰り返し。雪乃さんは「ああっ、あっ、あっ、あっ、うっ、うっ、うっ、ああっ、あああっ」と首を振って喘ぐようになってきましたが、私も一時、弾切れになっていた精液が十分に補充できたのでしょう。あのモヤモヤ感が湧き上がり、「あっ、あっ、あ、あああ……」と呻くようになりました。
そして、もう出てしまうと思った時、「はあ、はあ、はあ……」と急に息が荒くなった雪乃さんが私の腰に両足を巻きつけ、「あっ!」と逝った私をギュッと抱きしめ、「い、逝く、逝っちゃ、逝っちゃうーーー」と同時に昇りつめてくれました。
身も心も解けてしまった私たちは精根尽き果て、しばらく起き上がれませんでした。
一夜限りの関係・・
「邦夫、起きろよ!」
気がつくと、みんなは着替えを済ませ、旅行バッグの整理をしていました。
「もう飯を食う時間もないから、早くしろよ」
「えっ、もう、そんな時間かよ」
私が時計を見ると、確かに出発まで後10分しかありませんでした。
「蹴飛ばしたって起きねえんだから、夜中にどこに行ってたんだよ?」
「ほんとだよ。隠れて酒でも飲んでたのか?」
友だちは呆れていましたが、本当のことは言えません。「あ、いや、風呂で寝ちゃって」とごまかし、大急ぎで着替えを済ませ、何とか時間に遅れずにバスに駆け込むことができました。
彼女は私だけに分かるように、小さく手で合図し、「おはよう」の代わりにニコッと微笑んでくれました。そして、途中のドライブインで、「連絡ちょうだい」とメモをくれました。
でも、今と違い、スマホはおろか携帯なども無い時代です。一度電話しましたが、「もしもし」と男の声が聞こえ、慌てて切ってしまいました。それきりです。
だけど、いいのです。明け方まで体を求め合ったのは事実ですから。
(終わり)
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