現代春画考~仮面の競作-第22話 3380文字 バロン椿

現代春画考~仮面の競作-第22話

その話は、日本画の巨匠、河合惣之助の別荘に、悪友の洋画家の巨匠、鈴木芳太郎が遊びに来たことから始まった。
本名なら「巨匠が何をやっているんだ!」と世間がうるさいが、仮名を使えば、何を描いても、とやかく言われない。
だったら、プロのモデルじゃなく、夜の町や、それこそ家政婦まで、これはと思った女を集めろ。春画を描こうじゃないか。

作家名:バロン椿
文字数:約3380文字(第22話)
管理番号:k086

猫娘

ケンに「クラブ 茜」のママが陥落した日から1週間。午後の日差しが暖かく、梅は盛りを迎えている。明日には、沖縄に行ったナターシャが戻ってくる。
「おい、『嘗女(なめおんな)』って知っているか?」
岡田がアトリエに入ると、パソコンで遊んでいた鈴木画伯がニヤニヤしている。面白いことを企んでいる様子がありあり。こんな時は気の利いたことを言う必要はない。

「まさか、フェラでは……」とバカなことを言うと、画伯は「だからお前はダメなんだ」と笑ってコーヒーを啜り、「これだよ」と得意気にパソコン画面を岡田の方に向けた。
「嘗女は江戸時代の絵本読本『絵本小夜時雨』五之目録にある奇談『阿州の奇女』に登場する怪女。

昔、阿波(徳島県)のある金持ちの家に一人のとても美しい娘がいた。だが、その娘には、『ここだけの話だけど、何でも舐めちゃうんだ』と変な噂があって、『気持ち悪い』と縁談が纏まらなかった。
しかし、『色の白いは七難を隠す』というように、その美しさに惹かれ、ある若者が縁談に応じ、婿入りすることになった。

そして、いよいよ初夜。ワクワクしながら布団に入ると、噂通り、その娘は婿になった若者を抱き締め、顔から足の先まで全身を舐め回したのだが、その舌は猫の舌のように、ざらざらとし気味が悪く、婿はそうそうに逃げ帰ったという。それ以来、この娘は『猫娘』と呼ばれたという……」

ランジェリーブランドのモンシェリ一覧01

要するに一種の怪談話だが、画伯は何を言いたいのか、凡そ想像できる。岡田が「へえ、『嘗女』が『猫娘』か……」と惚けると、「お前は本当にバカだな」とでも言いたげに画伯はタバコに火を付けると、「ナターシャの相手役、ほら、葛飾北斎の『蛸と海女』の蛸の役、『海女』のナターシャを舐め尽くす女、『嘗女』が決まったんだ」と、そのタバコを旨そうにプカーと吹かしていた。

「いやあ、そんな女がいるんですか。さすが、先生ですね」と持ち上げると、「新宿のレズビアンバーのママ、康子(やすこ)に頼んでおいたら、さっき電話があって、『面白そうだから、いいわよ』って、了解してくれたって。ははは、やっぱり、あの子は『猫娘』なのか、堪らないなあ」
画伯はそう言ってニヤニヤ笑っていた。

岡田はマネージャーとして、画伯が贔屓にしている店は殆ど知っていたが、このレズビアンバーには行ったことがなかった。しかし、その「レズビアンバー」という言葉に続き、「ママの康子」、「嘗女」に「猫娘」と聞くと、妄想が次々に湧き上がる。
「今夜、パーティの後に行くから、お前も来い」と言われると、夜が待ちきれなくなる。
岡田は「それじゃあ、車の手配をしておきます」とスマホを取り出した。

新宿レズビアンバー「レインボー」

パーティを終え、鈴木画伯と岡田を乗せた車は新宿に向かっていたが、「いい筆遣いだ。あいつは伸びる。早ければ今年、遅くとも、来年にはフランスだなあ」と、画伯はパーティの主役の若手画家のことを繰り返し褒めていた。凡人の岡田の頭の中は、これから向かうレズビアンバーのことでいっぱいなのに、やはり巨匠は違う。

「寒そうだな」
窓の外を見て、画伯が呟いた。梅の花が盛りといっても2月。歩道を歩く人たちはコートの衿を立てている。しかし、歌舞伎町だ。午後10時を過ぎているのに、人通りが絶えない。

「おお、ここでいい」
画伯が車を停めさせたのは雑居ビルの前。上から下まで、「Bar」とか「Club」とか、ネオンサインが煌びやかに輝いているが、先に車から降りた画伯は地下にある「レインボー」と単にアクリル板に描かれただけの店の方に下りていった。

(え、ここが……)
「レズビアンバー」と聞いて、艶かしく、甘酸っぱいものを期待していた岡田はやや拍子抜けしたが、階段を下りて分厚い木の扉を開けると、「いらっしゃいませ」の声と共に、様々なコロンの混じった何とも言えぬ匂いに、「そうだよ、これだよ」と頬が自然に緩んでいた。

店は20畳ほどの広さに、カウンターとテーブル席の極めてシンプルな造り。お客は勿論、女性同士ばかり。
(参ったなあ……)
岡田が躊躇っていると、「こっちだ」と奥のソファーにどっしりと腰を下ろした画伯が手を上げていた。

「どうした?」
「あ、いや、どうも落ち着かなくて」
「ははは、そうだよな、こんなところに男二人で来たんだからな。あははは」
当たり前のことだが、お客は女性カップルばかり。それに銀座のクラブとは全く勝手が違い、黒服の男もドレスを着ている女もいない。殆どのスタッフがジーンズのような普段着だ。

そこにママと思われるスーツ姿の女性が現れた。
「お連れさん?」
「ああ、岡田だ」
「康子です。よろしく」
「あ、どうも」

画伯のテーブルに腰を下ろした彼女はさっそく水割りの支度をするが、どう見たって、「男役」。絶対に「嘗女」の「猫娘」にはならない。
イメージが違うなあと岡田が首を捻っていると、「何をジロジロ見ているんだ」と軽く靴の爪先で脛を蹴飛ばした画伯が「あっちだ」と顎でカウンターの方を指し示した。見ると、そこには、割烹着を着た女性が働いていたが、年恰好は40代半ばか……「チーママの柳(やなぎ)京子(きょうこ)、お京ちゃんだ」と画伯が教えてくれたが、「お京ちゃん、ちょっと」とママが声を掛けると、その女性は「あ、はい、今、行きます」と笑顔を返してきた。

そして、割烹着を脱いで、カウンターから出てくると、「京子です。よろしくお願いします」と言って、ママの隣に寄り添うようにして座った。
美人ではないが、細面で物腰が柔らかく、それにママの手を握っているが、それを隠そうとはしない。

(なるほど、そういう関係か……)
岡田の頭の中に、全裸の二人がベッドで絡みあっている姿が直ぐに思い浮かんできた。
「どうだ、いいだろう?」
画伯は笑って水割りグラスを手にしたが、100点、120点だ。「ええ、ピッタリです」と岡田も笑顔でグラスを掴んだ。

「ありがとうございます」
「よろしくお願いします」
揃って頭を下げるママとチーママは気の合う「夫婦」。そんな二人を見て、画伯は「ママ、お京ちゃんを借りるけど、恨まないかい?」と気をつかったが、「何を言っているの、先生。私たち、そんなことでおかしくなる仲じゃないわよ」とママに笑われてしまった。
最初はレズビアンバーに違和感を感じた岡田だったが、こうした雰囲気がだんだん好きになっていた。

シースルーランジェリー一覧

ウォーターベッド

残る課題は舞台設定だ。「ヴィーナスの誕生」も「蛸と海女」も海での話。しかし、そんなところで全裸の女たちを絡ませたら、一発で御用となってしまう。かと言って、室内にそんなものを作ったら、お金がいくらあっても足りない。
悩んだ岡田が吉光に電話をすると、「水を入れたぷかぷかのベッドで絡ませたらいいじゃないですか」と、即座に返ってきた。

「暑いくらいに暖房を効かせて、周りには観葉植物でも置けば、ハワイなんか行かなくたって、そこは南国ですよ」
なるほど、言う通りだが、そんなラブホテルのようなベッドがどこにあるのか……
「しかし、ウォーターベッドなんか高いでしょう?」

「ははは、岡田さん、心配いらないって。うちの先生の別荘は、謂わば『隠れ家』なんですよ。『ちょっと絵を習いたくて』なんて、名前は言えませんが、テレビに出ているようなお偉いさんが時々遊びに来るんですが、そいつがスケベで、『あれが欲しい』とか、『これが欲しい』だの、まあ、うちの先生もスケベだから、大きなウォーターベッドもあるんですよ」

確かに、河合画伯の別荘は人里離れたところにあって、しかも風呂場が旅館のように広いから、そういうお偉いさんがこっそり遊びに行くにはもってこいの場所だ。
「あのナターシャも大きな風呂を見れば、『Wonderful!』って素っ裸で飛び込むでしょう。鈴木先生もうちの先生も、『ハラショー!(素晴らしい)』なんて、裸になって……ははは、想像出来ますね」

吉光が笑うが、全くその通りだ。きっと「Let’s join!」って、あのザミローチカも誘うだろう。まあ、それはいい。手帳を取り出した岡田は、「それでは、河合先生の別荘をお借りすることで、日程は明日にも固まりますから、また、ご連絡させて頂きます」と伝えた。
「了解です」
吉光はそう言ったが、「お互いに大変ですね」と笑っていた。
「ロシア美女対日本熟女」、いったいどうなるか、岡田の股間は早くも硬くなってきた。

(続く)

※本サイト内の全てのページの画像および文章の無断複製・無断転載・無断引用などは固くお断りします。
リンクは基本的に自由にしていただいて結構です。

▼セクシーランジェリー通販サイト
インナージュエリー
ベビードール
セクシーショーツ
セクシーブラ&ショーツ
セクシーコスプレ
メンズパンツ
セクシーテディ
網タイツ・ストッキング
ボディストッキング
ガーターベルト
無料で読める官能小説一覧

コメントの入力は終了しました。