鹿児島浪漫紀行-第1話
ひろしは、最愛の妻と離婚した心の傷を癒すため、鹿児島の旅に出る。旅先で出会った3人の女性と逢瀬を重ねたひろしは、女性たちの尽きない淫欲の餌食となっていく。50歳を過ぎたひろしは、体力の限界を感じながらも、懸命に女性たちに自分の体を捧げるのだが・・・
作家名:城山アダムス
文字数:約2920文字(第1話)
管理番号:k123
僕の名前はひろし。
今、羽田発鹿児島行きの飛行機に乗っている。僕は、今日妻と正式に離婚した。
離婚を切り出したのは妻だった。長年夫婦として連れ添った妻から突然離婚を突きつけられるなど、予想だにしなかった。離婚届を提出した今も気持ちの整理がつかない。
僕は今年で55歳を迎える。昨年から都立高校の校長をしている。僕は、高校教諭、教育委員会勤務、教頭、そして校長と仕事一筋に生きてきた。結果的に家庭で過ごす時間は少なかった。
妻はそのことを理解してくれていると思っていた。しかし、妻はそのことをずっと不満に感じていたようだ。
昨年4月校長に昇進すると、サッカーや野球の試合の応援や様々な行事への出席が増え、休日も家を空けることが多くなった。ついに妻は我慢の限界を超えてしまったのだ。
3月のはじめ、妻が僕に離婚したいと申し出てきた。僕は青天の霹靂だった。妻が離婚を考えているなど全く考えてもいなかった。妻にもう一度思いとどまるように説得したが、妻の意志は固かった。妻から離婚の日を4月1日と言い渡された。
4月1日の今朝、区役所に離婚届けを提出した。そして、そのまま鹿児島行きの飛行機に乗ってしまったのだ。
今日から4月、入学式の準備で学校は一番忙しい時期だ。しかし、僕は離婚のショックで、仕事をする気力がなかった。入学式まで東京から離れた場所で心の傷を癒したいと考えた。
行先はどこでも良かった。とにかく東京を遠く離れたかった。春休みの旅行シーズンで沖縄と北海道行きの飛行機は全便満席だった。辛うじて鹿児島行きの飛行機に空席があった。僕はそのまま鹿児島行きの飛行機に乗ってしまったのだ。
午後3時に鹿児島空港に到着した。僕は空港から教頭先生に電話した。
「教頭先生。急に体調が悪くなり、今日から入院することになりました。」
僕は病気で入院すると仮病を使うことにした。教頭先生の声は慌てていた。
「校長先生。どこがお悪いのですか?病院はどちらでしょうか?これからすぐにお見舞いに伺います。」
「教頭先生。入学式までには退院しますので、心配しないでください。お見舞いは遠慮します。先生方が心配するといけないので、私の入院のことは内緒にしておいてください。」
教頭先生にそう伝えると僕は電話を切った。特に行先は決めていなかった。空港を出てバス停に出ると指宿行きの特急バスが止まっていた。僕はそのままバスに乗り込んだ。
バスに揺られながらネットで指宿のホテルや旅館の空室状況を調べた。春休みの旅行シーズンで、どのホテルや旅館も満室だった。一つだけ空室のある旅館を見つけた。
秀水館という旅館だ。1泊2食で2万円と値段も手頃だ。砂蒸し温泉の施設も整っているらしい。僕はすぐにネットで予約を入れた。
2時間ほどでバスは指宿に着いた。バス停を降りるとタクシーで秀水館に向かった。5分ほどで旅館に着き、チェックインを済ませると、仲居さんが部屋まで案内してくれた。
部屋は8畳の和室で、窓の外には海岸が見える。旅館のすぐ下の海岸を見ると、首まで砂を被って寝ている人たちがいる。
「あれが有名な砂蒸し温泉ですか?」
僕が仲居さんに聞くと、
「そうですよ。当旅館自慢の砂蒸し温泉です。ぜひお入りになってください。」
仲居さんが部屋を出ていくと、僕は浴衣に着替えて砂蒸し温泉に向かった。
脱衣場は男女に分かれていた。脱衣場に入ると、砂蒸し温泉の入り方を説明する係の男性がいた。
「下着を脱いで、そこの浴衣に着替えてください。」
僕は下着を脱ぎ、全裸になると備え付けの浴衣を羽織った。
「その出口を出ると、砂蒸し温泉です。」
係の案内に従って出口を出ると砂蒸し温泉があった。男女とも浴衣を着ているので混浴だ。女性の脱衣場から浴衣を着た若い綺麗な女性が出て来た。浴衣の胸元と裾を手でしっかり握っている。この女性も浴衣の中は全裸なのだろう。
砂蒸し温泉には甚平姿の男性がスコップを持って立っていた。
「今、溝を掘りますから、しばらく待っていてください。」
甚平を着た男性は、砂浜にスコップで溝を掘り始めた。縦に並べて二つの溝を同時に掘っている。大人が一人横になれるくらいの深さと巾だ。僕とこの若い女性はこの溝に並んで横に寝ることになるのだろう。
こんなに若くて綺麗な女性のすぐ横で、砂蒸し風呂に入れることに少し興奮していた。浴衣の下半身がテントを張ったように盛り上がっている。下半身は正直だ。僕はそっと手で押さえた。
手際よく溝が掘られると、甚平姿の男性が、
「ここに横になってください。」
と僕と女性に指示した。僕は指示に従ってすぐ砂の溝に仰向けに寝た。手に持っていた手拭いを枕のように頭の下に敷いた。甚平を着た男性は、僕の身体にスコップで砂をかけていく。あっという間に首から下が重い砂に覆われた。砂の重みがずしんと体全体にのしかかってくる。綺麗な若い女性は、その一部始終を興味深げにじっと見守っていた。
「お姉さんもどうぞ。」
甚平服の男性が女性に促すと、女性も砂の溝に横になろうと溝に片足を入れた。その時、強い海風にあおられて女性の浴衣の裾が乱れた。一瞬白い太ももが露になった。女性は慌てて裾を抑えた。
女性の白い太ももを見て、僕の下半身は再び興奮したが、幸い重い砂に覆われてテントを張ることはなかった。
僕の隣に女性が仰向けに寝た。甚平姿の男性は女性の上半身に砂をかけていく。再び強い海風が吹いた。女性の浴衣の裾が風に煽られている。女性の上半身は砂で覆われているので、女性は裾に手を伸ばすことができない。
僕の目線からも、風に煽られた裾の間から、女性の白い太ももがはっきり見える。甚平を着た男性からはもっとよく見えているはずだ。男性の視線は明らかに女性の太ももに向いている。その目線に男性特有の嫌らしさが溢れている。ひょっとすると太ももの奥の方まで見えているかもしれない。僕は甚平を着た男性が羨ましかった。
女性は恥かしさのあまり目を固く閉じている。男性は右手で女性の浴衣の裾を摘まんで整えると、ゆっくり下半身に砂をかけた。女性も首から下が完全に砂に覆われた。
しばらくすると、砂の熱が体に伝わってきた。砂の下には温泉が湧いているらしい。その熱が砂から体に伝わってくる。あっという間に額は汗だらけになった。
隣の女性を見ると、やはり額に汗をかいている。僕は思い切って女性に声をかけようと思った。この砂蒸し温泉で隣同志になった仲だ。ひょっとしたら、これをきっかけにもっと親しくなれるかもしれない。
「熱いですね。」
僕が声をかけると、女性は僕に視線を向けた。
「熱いです。もう汗びっしょり。」
女性はニコッと微笑んだ。女性の反応は良好だ。すると今度は女性の方から話しかけてきた。
「どこからいらっしゃったんですか?」
「東京です。」
僕がそう答えると、女性は嬉しそうな表情で、
「私も東京です。大学の卒業旅行で鹿児島を旅して明日東京に帰るんです。おじさんはいつ帰るのですか?」
「僕は今日東京から来たばかりなので、まだいつ帰るかは決めていません。」
「鹿児島はいいところですよ。私は1週間回りましたよ。」
「どこかおすすめの場所はありますか?」
「霧島が良かったです。露天風呂が最高でした。」
(続く)
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