当て付け不倫の相手は青い目-第1話 2570文字 バロン椿

当て付け不倫の相手は青い目-第1話

結婚して16年、39歳の高沢啓子が香川県高松市に単身赴任の夫を訪ねると、そこには井川遥に似た女がいた。
「あ、いや、い、今、説明するから」と狼狽する夫に「なら、抱いてよ。私だって3ケ月もしていないんだから!」と裸になって跨ったが、ペニスはだらんとしたままで勃起しなかった。
「ごめん。もう止めにしよう」と言われ、啓子は悄然として東京に帰ってきた。
そんな啓子に、心配した親友が「ヨガでもしたら」と誘うと、そこには「カール」というヨーロッパ系の顔だが、細身で髪を後ろで束ねた、いかにも「修行者」といった感じのする外国人の男性が現れた……

作家名:バロン椿
文字数:約2570文字(第1話)
管理番号:k120

夫の不倫

3月下旬、時刻は午前8時少し前、街路樹の桜が美しい東京駅日本橋口に到着した長距離夜行バスから、高沢(たかざわ)啓子(けいこ)は憔悴しきった顔で降りてきた。
昨晩、香川県高松市のJR四国高松駅から午後9時25分発のバスに乗り、10時間30分の長旅だったこともあるが、本当の理由は夫の裏切りだった。

結婚して16年、夫は43歳、啓子は39歳。これまで夫婦仲良くやってきたつもりだったのに、単身赴任先の高松に女がいた。
「そろそろ東京に戻れるんじゃないの?」
「人事のことだから、まだ分からない」

高松支店に転勤になって3年が過ぎていたので、春の人事異動で東京に転勤することを期待していたのだが、今年のお正月に帰ってきた夫の返事はそっけないものだった。

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昨年の夏休み、中学1年の長男と小学校5年の長女を連れていった時は、夫も1週間の休暇を取り、四国各地をドライブ旅行して遊んだが、不審なことは何もなかった。

それが、昨日、夫の住む2DKのマンションの鍵を開けた時、プーンと匂う化粧品の香り、そして、「あなた、お帰りなさい」という女の声、啓子は一瞬部屋を間違えたのかと思ったが、出てきた女は啓子の顔を見るなり、「あ、す、すみません…」と言うと、土下座して「ごめんなさい」と顔も上げずにひたすら謝り続ける。

料理の途中なのだろう、キッチンから鍋が焦げる臭いが漂ってきた。
「あなたは誰ですか?」
啓子は務めて冷静さを装い、ガスを止めて鍋を下ろしたが、女は先程と同じ、顔も上げずに「ごめんなさい」を繰り返すばかり。そこに、夫が帰ってきた。

「あ、いや、い、今、説明するから」
夫はそう言いながら、「佳子(よしこ)、今日は帰りなさい」とその女を逃がす様に帰していた。
35歳前後、髪が長く、女優の井川遥に似ている女だった。
腹が立って、腹が立って、「へえ、佳子さんって言うんだ」と突き放すように言うと、「あ、いや、今日はご飯を一緒に食べようって……おまえが疑うような仲じゃないよ」と夫はしどろもどろ。

昨年の夏に来た時には、がらんとしていた六畳の和室には女物のタンスと鏡、化粧品が置かれているのを見れば、一緒に暮らしていることは一目瞭然だった。
それに、寝室として使っている奥の和室にはコンドームの箱が置いてあった。

「コンドーム……そうなんだ、疑うような仲じゃない、なるほど」
「あ、あれはお前が来た時のためだよ」
夫はコンドームが嫌いだった。避妊のため仕方なく使っていたが、単身赴任してからは、それでは夫に申し訳ないと、啓子はピルを使っていた。

それなのに、口から出任せに、そんなことを言う。
ブチ切れた啓子は、「なら、抱いてよ。私だって3ケ月もしていないんだから!」と、着ていた物を脱ぎ捨て、その場に夫を押し倒して、お尻を向けて夫に跨ると、顔に性器を押し当て、「舐めてよ、早く舐めてよ!」と叫び、それと同時に、夫のズボンとパンツを引き下ろして、ペニスにしゃぶりついた。
これまで、そんなはしたないことはしたことがなかったが、いくら扱いてもペニスはだらんとしたままで勃起しなかった。

「ごめん。もう止めにしよう」
夫がそう言って、啓子の体を押し退けた時、悔しさと惨めさから涙が止まらず、脱いだものを身に付けると、啓子はマンションから飛び出した。
そして、もう、こんなところにいたくない!とタクシーで高松駅に向かうと、出発間際だった東京行きの長距離夜行バスに飛び乗ったが、様々な感情が入り混じり、啓子は一睡もできなかった。

(帰ってきちゃった。子供たちに何て説明しようかしら……)
バスターミナル、降り注ぐ朝日は眩しい。
「順にお渡ししますから、受け取りタグをご用意下さい」
手荷物係がせわしなく声を掛けている。

「受け取りタグは……はい、高沢さん、これですね」
「ありがとうございます」
荷物を抱えた啓子はタクシーを捕まえると、気が重いまま、自宅のある江東区に向かった。

一人寝の寂しさ

「パパはママとは違う女の人と暮らすことになったの」
啓子は子供たちに簡単に伝えたが、3泊4日の予定で出掛けた母親が翌朝には夜行バスで帰ってきた、中学2年生になる長男の芳樹(よしき)はそれだけで、子供には言いたくない事情があることを察し、何も言わずに下を向いていた。

しかし、まだ小学生の長女の彩花(あやか)は無邪気なもの。「それでママはどうするの?」と聞かれた啓子は堪えていた涙が止めなく目から涙が溢れ、「ママはずっとあなたたちと一緒よ!」と二人を抱き締めていた。

離婚に向けた調停はこれから始まるが、子供たちは多感な思春期、余計な波風は立てないようにと、夫が荷物を取りに来るまでは、家の中にそのまま置いておくことにした。
だが、一人で眠るベッドは寂しい。

23歳の時、処女で結婚。25歳で長男を、27歳で長女を出産したが、「セックスは子供を作るもの」と考えていたので、性的な悦びはあまり感じなかった。だが、30歳を過ぎ、特に長女が小学校に通うようになった33歳頃から、とても感じ易くなった。

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夫が単身赴任する前は、生理の時以外はほぼ毎日セックスをしていた。
単身赴任になった、この3年間は、夫と過ごせる時は甘え、抱かれれば狂ったように悦んだ。
先日も高松駅に着いた時から下着は濡れていた。それだけに夫の裏切りは許せない。

眠れぬ啓子はタンスからネットで買い求めたバイブレーターを取り出し、スイッチを入れると、黒いヘッドがブーン、ブーン、ブーンと音を立てて首を振る。
(ねえ、どうしてなの、どうして私を抱いてくれないの……)
心では夫を憎んでいるが、体には未練がある。

「あ、いや、いや、はうっ…ううっ、う、う、うっ……」
パンティを下ろした啓子はバイブレーターで性器をなぞると、早くも溢れ出た愛液が太腿を伝わり、シーツに染みを作る。そして、バイブレーターを膣に挿入すると、体が反り上がり、「そ、そ、そこよ、あ、ああっ……」と呻きが大きくなってきた。
隣りの部屋では子供たちが寝ている。

啓子は脱いだパンティを口に押し込むと、バイブレーターの回転を上げた。
「あ。う、うぅっ……」
低く籠った呻き、全身がわななき震える。
「はあ、はあ、い、い、逝く、逝く、いっ、逝っちゃう、逝っちゃう……」
ぐったりとベッドに横たわる啓子には、染みの出来たシーツを替える気力は無くなっていた。

(続く)

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