詩織の冒険・メモリー-第4話
詩織は、後に結婚することになる新田卓也と結ばれた夜のことを思い出していた。それは、彼のマンションであった。微かにスムーズ・ジャズが流れていて……。
作家名:キラ琥珀
文字数:約3420文字(第4話)
管理番号:k092
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詩織は理系の人間である。
子供のころ、友達がリカちゃん人形に夢中になっていたとき、彼女は電卓に没頭していた。
キーを押すごとに液晶画面で数字が変わるのが面白かったのだ。
その後、プログラムできる電卓があるのを知り、狂喜した。
液晶画面の数字がどんどん変わり、しかもそれを自在にコントロールできるのだ。
(この世にこんなに面白いものがあるのか!)
これがコンピュータ業界に入るきっかけになったのである。
理系の人間の特徴として、物事を冷静に見て、比較・検討することは得意であった。
だが、自分のこととなると、よく分からない。
新田卓也よりも先にオーガズムしてしまったのだ。
(感度がよすぎるのであろうか?)
これが分からないのだ。
さすがに、比較・検討したことはない。
もちろん、「君はすぐ濡れるね」といわれたことは何度もある。
だがそれは、男女の間の社交辞令かもしれない。
ともかく、新田卓也よりも先にイったのだ。
少しだけ罪悪感があった。
だから、すぐ後で射精のお手伝いをしたのである。
————
二人は、ソファで抱き合ったまま余韻に浸っていた。
「詩織さん」
「うん?」
「出ちゃった」
「そうね」
「早すぎたな」
「その前にアクメしたから、まあ、いいわ」
「僕の方はよくない。もっと詩織さんの中を楽しみたい」
「すぐ出来るの?」
「詩織さんが協力してくれればね」
「ばか」
新田卓也は、詩織を抱え上げて隣室のベッドへ運んだ。
彼女の隣に寝て、乳房を弄んだ。
「このオッパイ、いやらしいなぁ」
「いやらしいの好き?」
「うん、大好き」
詩織は、この男が愛おしくなった。
彼の耳元で囁いた。
「やってあげるね」
首筋にキスをした。
首からデコルテへ、乳首へ、腹へ、下腹部へと唇を向かわせていった。
その目の先に、フニャフニャの肉棒があった。
先程の男液が、まだ付いている。
これだ、これが自分の中に入ったんだ、という淫らな喜びが湧いてきた。
詩織は、彼の腹に跨り、肉棒を口に咥えた。
舌が舐め上げた。
新田卓也はうめき声を出した。
ゆっくりと吸い上げた。
彼の腰がせり上がった。
「ああああ……すごい、感じるよぅ……」
(うふふ……男にしては無邪気なあえぎだわね)
それがまたかわいい。
チュウ……チュウ……。
強く吸う。
素直に反応して固くなってきた。
吸いながら、舌で全体をベロベロと舐める。
唇で根元を締めた。
さらに固くなった。
(よし、90%だな)
さすが、理系の女である。
爛れた淫行の中でも、冷静に計算をしているのだ。
「うううう……ああああ……詩織さん……」
新田卓也は、上半身をあげ、詩織の腰を抱えた。
そのまま、自分の顔の前に引っ張ってきた。
目の前に尻穴があり、その先に淫土手があり、土手に囲まれた溝は濡れていた。
強烈な女の匂いが充満している。
新田卓也は尻穴を舐めた。
「ひっ」
詩織の身体がピクリとした。
穴の周囲をベロベロと舐めた。
「うっ、うっ、うっ」
詩織が悶えた。
穴の中に舌先を入れた。
「うううう……いやぁん……」
新田卓也は、詩織が動かないよう、尻をしっかりと押さえた。
ペロペロと、執拗に舐めた。
そして……そのまま……舌を移動した。
淫壺の土手にぶつかった。
土手は、土手の役目をはたしていなかった。
淫液で大洪水になっていたのだ。
新田卓也の顔はベチャベチャになった。
舌が花弁を捕らえた。
舌で花弁を弄んだ。
潮が噴き出てきた。
新田卓也は、尻を押さえたまま、横に動かした。
グルリと入れ替わった。
男が上になったシックスナインである。
頭をグリグリと淫部に押し付けた。
顔中がグッショリとなった。
それでも押し付け続けた。
グリグリ、グリグリ。
舌を淫壺に差し込んだ。
「あっ、あっ、あっ……」
詩織が声を上げた。
身体を電流が流れたのである。
冷静に肉棒の勃起度を観察している場合ではない。
また、頭の中が白くなってくる。
「ああああ……イきそうよぅ……」
「うむ」
新田卓也が、うめき声を出して上半身を起こした。
体勢を入れ替える。
詩織をベッドに押し付けた。
「今度は一緒だぜ……」
詩織の唇を吸い上げた。
腰を落とした。
肉棒を秘部に押し付けた。
淫壺の周囲に怒張したオスを擦りつけた。
ゆっくりと挿入した。
「あっ……うっ……」
詩織が悶えた。
彼女の動きを抑えるため、腰を押し付けた。
淫壺の奥まで怒張した肉棒が入った。
そのまま突き上げた。
詩織は身悶えした――。
否、身悶えしたかったが押さえつけられて動かせない。
動かせるのは足だけである。
両足を大きく広げた。
それに新田卓也の足が絡み、閉じられないようにした。
さらに腰を押し付けた。
「ああああ……いい、いいわぁぁ……」
身体の芯がビリビリと感電した。
新田卓也は、根元まで突き上げながら、バンバンと上下のピストンを繰り返した。
「あっ、あっ、あっ……」
そのリズムに合わせて詩織が声を出した。
男と女の身体は絡み合って快楽に酔っていた。
バンバン。
バスン、バスン。
寝室に、2つの腰がぶち当たる音が響いた。
新田卓也のピストンに合わせて、詩織も腰を突き上げた。
バスン、バスン。
「ああああ……いい、いいわぁ……」
「詩織、すごくいい。ああああ……詩織、詩織、お前は俺のモノだ……」
二人は獣の声を上げながら、お互いを求め続けた。
つながったまま、結合したまま、抱合したまま、腰を動かし続けた。
新田卓也の棒が洞窟をかき回した。
それに合わせて、詩織の洞窟が締まり、蠕動した。
「ああああ……イっちゃうよ、詩織、イっちゃうよ、そんなに締め付けられると……」
詩織の下腹部の筋肉が自動的に反応した。
新田卓也が突き上げると筋肉を縮め、肉棒を締め上げたのだ。
洞窟の伸縮運動で肉棒の快楽が高まった。
さらにグイグイと突き立てた。
「ああああ……もう、ダメ……。イクぅぅぅ……」
「あっ、ああああ……あたしも……」
発射寸前の肉棒をさらに捻じ込み、ガンガンと激しいピストン運動を続けた。
それに合わせて、詩織の肉体も激しく痙攣した。
「ギャァァァ……」
絶叫した。
新田卓也の肩に噛みついた。
それが引き金になって発射した。
詩織が痙攣を続けた。
新田卓也がうめき声を出した。
そして……二人は、力尽きた。
————
2つの身体は抱き合ったまま眠った。
熱くつながった身体を離すのが惜しいのだ。
詩織は、ふと目を覚ました。
(今、何時かな?)
よく分からない。
隣の部屋には薄暗い明かりがついたままである。
スムーズ・ジャズも流れている。
すぐ隣には男が眠っている。
詩織は、ジャズを聞きながらウトウトとした。
眠りに落ちようとした、その瞬間。
はっとした。
頭の中の霧が晴れたのだ。
新田卓也がピクリとした。
「おい、詩織」
「起きてるよ」
「分かったぞ」
「ミシシッピ?」
「うん」
「私も分かった」
二人同時に、コードネーム・ミシシッピのプログラムに使う新しいアルゴリズムを思い付いたのである。
二人は、裸のままパソコンの前に座った。
ちなみに、この時は午前3時であった。
それから2時間ですべてが完成した。
ざっとシャワーを浴びて晴海の第三開発室へ突進した。
そして、最終テストを繰り返したのであった。
* * *
「懐かしいなぁ……」
詩織は、大化メディカル産業の会議室で、あの夜の事を思い出していた。
あの夜の事で、詩織は新田卓也と結婚することを決意したのだ。
もちろん、セックスをしたからではない。
淫壺と肉棒の相性がよかったから?
これは、結婚した理由の30%である。
これから始まる結婚生活に安定感を感じたから?
これは、まあ10%である。
残りの60%は、同時にアイデアを見つけたことにある。
アイデアの相性。
これがなによりも大切だったのだ。
「懐かしいなぁ……」
詩織はアラサーである。
感傷にふけるほど年齢を重ねていないではないか、という声が聞こえてきそうである。
そんな声は無視すればよい。
時間の長さが感傷を産むのではない。
心の深さが問題なのだ。
ドアがノックされた。
勝呂祐樹が入って来た。
「あっ、あのう……退社時間ですけど」
「おっと、もうそんな時間か」
「それで、ヤるんですね?」
泣きそうな声である。
「えっ、ああ、そのことか。気が変わったよ」
夫との思い出に浸ったあとでは奴隷を虐める気にはなれない。
詩織は、ほっとした顔の勝呂祐樹を後に残して大化メディカル産業を出た。
タワーマンションに戻り、リビングルームに入った。
夕空のなかに富士山が見える。
富士山がよく見える角度にテーブルが置いてあった。
白い布がかけてある。
テーブルの上には遺骨があり、その脇の写真の中で新田卓也が笑っていた。
「あなた、ただいま」
(終わり)
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