浅川健太郎の告白-第6話 1900文字 バロン椿

浅川健太郎の告白-第6話

私、浅川(あさかわ)健太郎(けんたろう)は46歳。会社は中堅だが次長。一応名前の通った私立大学卒だが、自慢する程ではない。
こんな私にも、いくつかの女性遍歴がある。
内緒にして頂くことを条件に、こっそり貴女だけにお話するので、笑わずに最後までお聞き下さい。

作家名:バロン椿
文字数:約1900文字(第6話)
管理番号:k143

誘われて・・

そんなこんなの牧場生活もあと僅か。
その夜もよっさんたちとスナックに出かけた。
「ママ、生ビール四つください」
すっかり慣れてしまった私が、いっぱしの大人みたくそう言うと、「バカ、あんたは高校生よ」とおでこをピンと指で弾かれてしまった。おじさんたちも、「ハハハ、そうか坊主は高校生だったなあ」と勝手なことを言う。そこに、「健ちゃん、ダンス」とアッちゃんからのお誘い。相も変わらぬ夜だった。
30分ほどして、「こんばんは」と奥さんが一人で入ってきた。
私はみっちゃんが歌う「北空港」をBGMにチーちゃんと踊っていたが、チーちゃんに気づかれないように、小さく手を振ると、奥さんはニコッと笑ってくれた。
目で追っていると、「気になる?」とチーちゃんにバレてしまった。
「えっ、あ、いや……」と誤魔化そうとしたが、「明美ちゃんがいいんだ」とからかわれ、「明美ちゃんも健ちゃんのこと好きかも」などと弄られた。だが、曲が終わると、「明美ちゃん!」と大きな声て呼んで、代わってくれた。

「いいぞ。ご両人!」
アベちゃんの冷やかしの声が聞こえてきたが、みんな酔っ払っているから、見向きもしない。
「こんばんは」
「うん。元気?」
「は、はい」
私たちは体を寄せ合って踊り出した。
「お酒、飲んじゃって」
「き、今日は飲んでいません」
「フフフ、本当かしら」
いい感じだった。
「明美さん」
「なあに」
「アハハ、名前で呼んじゃった」
「『おばさん』と呼ばれるよりいいわよ」
曲が「愛人」に変わり、チーちゃんやアッちゃんは相手を代えたが、明美さんは私を離さず、「好きになっちゃったみたい」と私を抱く手を強めた気がした。

見つめて、寄り添って、そして、抱き締めて・・・まるで歌のような展開に、私は顔が赤くなるのが自分でも分かったが、そんな私の耳元で「もうすぐ東京に帰っちゃうんでしょう」と明美さんの声が聞こえた。
「あと3日だよ」と軽く答えると、「そんなのいや!」と声が強まる。えっと思い、明美さんを見ると、「このままなんてダメ」と目を潤ませている。
でも、健ちゃんとなら、どうなってもいいかなと思っているのよ・・あの言葉が頭に浮かび、妙な感じになってきた。
曲が終わり、カウンター席に戻ると、「いや?」と明美さんが私の顔を覗き込む。チラチラとこちらを見ているママの視線が気になり、「そ、そんなことない……」と口籠もるが、明美さんは気にしない。私の手をギュッと握って、「待っているから、うちに来て」と言うと、そのまま店から出ていった。
「はい」
ママがグラスをくれた。飲むと冷たい。冷たい水だった。きっと聞こえていた筈。「あの子も思いきったことをするわ」とママがグラスのビールを飲むと、「しっかりしなさいよ」と笑った。

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初めてのセックス

夜9時を過ぎていたと思う。スナックから管理人宿舎までは10分ほど。
「後はうまくやっておくから」と、ママに後押しされた私は夜道を歩きながら、明美さんのことをあれこれ思い浮かべていると、顔が熱くなり、チンポは硬くなる。ところが、宿舎の灯りが見え、その玄関に奥さんが立っていることが分かると、ちょっと怖気づき、「あ、あの」と口籠もったが、ドアを開けた明美さんに私は手を掴まれ、「こっち」と中に引っ張り込まれた。
エアコンが効いてひんやりしている。
牛舎の掃除の後、シャワーを浴びたのは真っ昼間。家の中は明るく、何とも感じなかったが、夜、暗闇の中では、それだけで身体が震える。
ドアを閉め、ガチャッと鍵を掛けた明美さんも「ふぅぅ」と息を吐くと、放心したようにそのドアにもたれかかっている。手を繋ぐと、彼女も震えていた。

玄関を上がった私は明美さんに連れられ、奥の部屋に行くと、薄ら明かりの中、布団が敷いてあった。
「健ちゃん……」
私に抱き付いた明美さんが唇を合わせてきた。チュッ、チュッ、チュッ……「キスは初恋の味」等と言うが、味なんか分からない。真似事ながら吸い返すと、明美さんは猛烈な勢いで唇に吸い付いてきた。
吸って、吸って、舌を絡ませ、また、吸い付く。
私は一旦、唇を離そうとしたが、明美さんはけっして離してくれない。そのまま布団に倒れ込むと、ようやく唇を離した明美さんが上体を起こし、ワンピースを捲り上げて、それを脱ぎ捨てた。
淡いピンクの揃いの下着。目を見張る私のTシャツを掴んだ明美さんは、それを捲り上げ、続いてズボンのベルトを外す。「あっ、それは……」と抗ったつもりだが、今の明美さんには通じない。ズボンと一緒にパンツまで下ろされ、私は素っ裸に。そして、明美さんも躊躇うこと無く、ブラジャーを外し、腰を浮かせて自らパンティを引き下ろして素っ裸になった。

(続く)

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