浅川健太郎の告白-第3話
私、浅川(あさかわ)健太郎(けんたろう)は46歳。会社は中堅だが次長。一応名前の通った私立大学卒だが、自慢する程ではない。
こんな私にも、いくつかの女性遍歴がある。
内緒にして頂くことを条件に、こっそり貴女だけにお話するので、笑わずに最後までお聞き下さい。
作家名:バロン椿
文字数:約2040文字(第3話)
管理番号:k143
第二回 初体験
今回は初体験について。性の告白には欠かせぬ話ですな。
初体験は誰にも知られず、そっと済ますものですが、これから話すことは、まあ、巡ってきたチャンスと言えるのか、あり得ないタイミングだったし、相手も場所も意外としか言いようがない。だけど、思い出すと、チンポが硬くなる、それが初体験と言うものか。
自慢できるものではないが、時計の針を、16歳から17歳になったばかりの高校二年の夏休みまで、貴女と一緒にタイムスリップして、その場面を覗きに行くとしますか。
やってられねえよ、と辞めた部活
当時、私は東京のR高校の2年生。172センチとそれほど高くないが、足が速く、サッカー部で3年生を押しのけてレギュラーだったが、インターハイ予選の1回戦で負けてしまった。
こうなるともめ事が起きる。
「おい、コーラ頼むな」
下級生が上級生のパシリに使われるのは部活ではどこでもあることだが、負けて行き場のない苛立ちをこんな風にぶつけてくると、私はこういうのは我慢出来ない。
「えっ、またですか?」と顔だけでなく、言葉にも出てしまった。すると、「口答えするのか」と私からポジションを奪われていた3年生が「お前、生意気なんだよ!」とボールをぶつけてきた。
こうなれば、上級生もへったくれもない。「ふざけんなよ、バカ野郎!」とボールを蹴り返した。
部室は騒然となったが、私と同じく目の敵にされていた同級生が「もう、やってられねえよ」と叫ぶと、他の2年生も「俺も嫌だ」、「俺も」と続き、3年生は「嫌なら辞めろ」とボールやペットボトルを投げつける。もう売り言葉に買い言葉で、尻を捲った我々は「ああ、いいですよ」、「せいせいするわ。あんた達、コーラでも何でも自分で買ってきなよ」と次々に部室を飛び出し、そのまま全員退部してしまった。
しかし、そうなると夏休みは暇でしょうがない。家でゴロゴロしていた私はアルバイトを思いつき、雑誌で見つけた1ケ月間の牧場での食事付きのバイトに出かけた。
牧場の暮らし
休憩時間に乗馬を習って、それから牧場の娘と仲良くなって……そんなことを思い描いていて、私は群馬県にあるバイト先の牧場に行ったが、娘はいたものの、まだ小学生。
最初からあてが外れ、それじゃあと、宿舎に行くと、共同の4人部屋で、「よっさん」こと義男さんは50、「あべちゃん」こと安部さんは46、「みっちゃん」こと光男さんが43、私とは全然年齢が違うから、話は通じないし、テレビを観ても知らない番組ばかりで全く面白くない。
だが、牧場に憧れてここに来たのだから、そんなことはどうでもいい。牛舎の掃除、馬の世話、牧草集めなど、誰にも負けないように働いた。
すると、話が合わないと思っていたおじさんたちから「坊主、頑張るな」と褒められ、「これを飲めよ」と缶コーラを投げてもらったり、バイトの出だしは悪くなかった。
それに加え、毎朝、パートのおばさんたち(地元の主婦)が「おはよーございまーす」とやってくる。美人はいないが、Tシャツにジャージだから、ブラの線やパンティラインがハッキリして、一緒に働くだけでドキドキしてしまう。
でも、困るのが性欲処理。東京では自分の部屋があるから、毎日のようにオナニーをしていたが、プライバシーも何もない4人部屋だから、とてもできない。トイレや風呂でするしかないが、人のいないタイミングを見計らってだから、どうもうまくいかない。それで、とうとう4日目に夢精してしまった。
腹一杯食べて、働き、トイレに籠もって、こっそりオナニー。そんな日々だが、夜、風呂に入りながら、空を見上げると、満天の星。ここに来て良かったと、心の底から思った。
夜な夜な通う、スナック「灯り」
そんな日々が続いた、ある晩、「ちょっとくらいならいいだろう」と「よっさん」こと義男さんが近所のスナック「灯り」につれて行ってくれた。だが、なんて事はない。客は近所の牧場や養鶏場の従業員ばかりで、ホステスも地元のおばさん。「チーちゃん」と呼ばれていたおばさんなんか、50歳くらいだったし、「アッちゃん」と呼ばれていた、若い方のおばさんでも40歳代半ばかな。まあ、ママを含め、高2の私にとっては、みんな「おばさん」だった。
つまみはキュウリ等の地元野菜の漬物や枝豆、それに焼き鳥など。変わり映えの無いものだが、それらを肴にビールや酎ハイをガンガン飲みまくる。
私は部活の合宿などで、隠れてビールを飲んだりしていたが、「飲めます」なんて言えない。それで、「コーラ、お願いします」と言ったら、よっさんが「ビールくらい大丈夫だろう」と背中を叩く。だが、比較的常識人のあべちゃんが「よっさん、まあ最初はコーラでいいだろう」と否してくれた。
しかし、ただ飲みに来ただけではない。ビールをぐっと煽ったら「よし、『北酒場』だ」とカラオケが始まった。とにかく演歌、演歌、演歌・・・おじさんばかりだから当然だ。そして、「チーちゃん、踊ろうか」とみっちゃんがおばさんホステスを捕まえて、チークダンス。
(続く)
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