伝説の女性器-第1話 2830文字 ステファニー

伝説の女性器-第1話

挫折した箱根駅伝ランナーが次に追い求めるモノとは!?

作家名:ステファニー
文字数:約2830文字(第1話)
管理番号:k139

大音量で音楽を轟かせる店が立ち並ぶ大通りにて、大事な箇所を文字で隠した裸の女性の看板が掲げられた脇に、地下へと降りる階段がある。狭く暗く急勾配であり、気をつけないと足を踏み外しかねない。
左右を見回し、意を決したアオは、暗闇へと飛び込んだ。
老朽化した雑居ビルの埃臭さと薄暗さに慣れてきた頃、左手にガラス窓とカウンターが見えた。
「今はショーの最中だから入れないよ」
化粧っ気も生気もない太った中年女性がガラス越しに吐き捨てる。
アオは手にしていた小袋を金銭授受のために開けられた隙間に押し込む。
小袋に印字されたブランド名と、中身を確認した女は、釣り銭用のトレイに鍵を載せてアオに突き出した。
「この隣の扉を開けて、突き当たりまで進みな」
女は右側を指さしていた。そこには「関係者以外立入禁止」の文言が貼られている。

鍵を手に取ると、アオはすぐさま鍵穴に通し、指示のあった先へと歩を進めた。そこは今通って来た階段よりもさらに狭苦しく、しかもライトも乏しかった。数メートル間隔でドアがあるが、人気は感じない。女の言った通り、突き当たりに部屋がある。そこだけはなぜか、他とは違い、不思議と開けていい、と感じる何かがあった。
「どうぞ」
ノックをすると、艶っぽい返事が聞こえてきた。
「失礼します」
そこは小汚いこのビルに似つかわしくないほど、小洒落た内装を呈していた。薄暗さは相変わらずだが、ピンクと紫のライトで程よく照らされた室内は、目に心地よかった。またお香を炊いているのだろうか、リラクゼーション効果のあるような香りが部屋中に充満している。
中東の王族の寝床のように薄いショールのようなカーテンがかかったベッドから、ピンク色の髪をツインテールにした女性が姿を現した。
「いらっしゃい」

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これが噂のモモなのか。アオはピンクで全身を固めた初対面の女を凝視した。タイトなミニレースワンピースからのぞく細腕及び美脚とは打って変わって、その胸元は大きく隆起している。長く大きくカールした睫毛の下にはラメで彩られた瞼と CG ばりに見開いた瞳がある。さらに透き通った白肌にツンと上がる紅い口角が映える。
「受付に例の物は渡してきたのね?」
アオは頷く。
「わかった。じゃあ、座って」
テーマパークでしか見たことのないような、背もたれに重厚な飾りがついた椅子をモモは勧めてきた。セットになっている机は表面がターコイズ色のタイルでできており、手を置くとひんやりとした感触がした。
「あなた、何を占いたいの?」
「探し物があって、それが見つかるかどうかを知りたい」
「生年月日教えて」
魔女みたいに長くとんがった爪でペンとメモを摘んだモモは、サラサラとアオが口にした情報を書き記していく。
「そうね」

何やらよくわからない記号と計算式を見つめながら、モモは話し出した。
「悪くはないわよ。近いうちにあなたの希望は叶う。そう出てるわ」
パールピンクに染めシルバーストーンを先端に散りばめた指先で、モモはチョコレートトリュフを掴み、口に運んだ。貝殻型をした皿に並べられたチョコレートは、真ん中に高級ブランドのロゴが刻印されている。
あれは先程、アオが受付の女に渡した物であろうか。
そんなはずはないであろう。アオがあそこを通過してこの部屋に至るまで、数分しかなかった。その間にあの包みをここに運んで、モモが荷を解き、皿に盛るまでを成し得るとは思えない。しかもこの部屋はあの狭い廊下しか通ずる道はない。あの女はアオの先を歩いてはいなかった。
「ただね、すぐにではないみたいよ。少し紆余曲折を経る。そんな感じよ」
曖昧な結果に不満の色が出ていたのであろうか。モモは次の提案をしてきた。
「カード、選んでちょうだい」
机いっぱいにタロットカードを広げた。アオは最も真ん中にある 1 枚を裏返した。

「うーん、やっぱりこれも同じお告げ。正位置ではあるけれど、ゆっくりを意味してる」
こんなものなのか。こんな回答をもらうために十万以上を支払い、しかも一箱一万を超える高級チョコレートというおまけまで添えたのか。本当にこれが噂の凄腕占い師、モモなのか。
だが、状況から考えて間違いなかった。モモに会うためには、このストリップ劇場の受付で高級ブランドチョコレートと鑑定料を渡し、裏口から入室すると聞いていた。まさにその通りだった。よく見ると、モモの皿に載るチョコレートはアオが渡したのとは違うブランドだ。
先客が同様の手順を経た証であろう。
「占いは以上だけど、少し遊んでく?」
モモは髪の毛を弄びながら、上目遣いでアオを見た。パッションフルーツの甘酸っぱい香りがアオの鼻孔をついた。
アオが答えを出す間もなく、モモはアオの首に腕を回してきた。ふぅーっと、吐息をアオの耳に吹きかける。アオは背筋がゾクッとした。
そのまま椅子から立ち上がらせられ、なされるがままにアオはモモによってベッドへと運ばれた。

セクシーブラショーツ一覧03

柔らかい。こんなにフカフカした布団は初めてかもしれない。
妙に冷静な自分がいることに驚きつつ、アオは服を脱いでコトに備えた。
クィーンサイズのベッドにヒラリと舞い降りたモモは、ボクサーショーツ一枚になったアオの上に跨った。その肌は生暖かく、しっとりとしていた。
「気づいた?」
いたずらっぽくモモが歯を見せた。アオは負けないように気を張った。
「私はもう準備万端なのに、あなたはまだなわけ?」
モモはアオのボクサーショーツのゴム部分を引っ張った。急かされるのも無理はない。クレーン車の如く、アオの下半身は立ち上がっているのだ。
結局、下着はモモに引き剥がされた。それと同時にモモは上向きになったアオを塞いできた。
温かな抱擁がアオの患部を包む。
目の前にいる女は、決してアオの好みではない。本心を言えば、抗いたいし、発情したくない。だが、なかなか本能を制御することは難しい。女体を見れば、漏れなく疼いてしまうものだ。

戸惑うアオをよそに、モモは挑発の手を緩めない。嵌め込んだ欲棒を舐め回すように、女壺を上下させる。そのリズムに合わせ、ピンクのワンピースを脱ぎ捨てた。
丸く白い、見事な二つのボンボンショコラがアオの頭上で跳ねている。その麓に広がるウエストからヒップにかけての稜線も美しい。目にするだけで、五感が刺激され、興奮が増す。
「あなた、……すごく…いい……わよ」
ほのかに甘く香る吐息をモモはアオの耳に吹きかけた。アオの背筋はゾクッとしてしまった。
「もうっ、ダメっ…、イッ……、イク……」
薔薇が描かれたモモの三角洲が激しく前後する。アオは足裏をシーツに押し付け、踏ん張った。
速く、激しく。
絶頂を迎えたドラマーのように、モモはこれでもかと叩きつける。
やがてその動きを止めた時、二人に静寂が訪れた。
荒い息づかいだけが残る。
「サイコー。またリピしたいな」
舌舐めずりをしながらモモは言った。
「そうですか。ありがとうございます」
違う。この女では断じて、ない。
こちらとしては二度と御免だ、とアオは思い、ベッドを後にした。

(続く)

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