声でイカせて-第1話 2980文字 ステファニー

声でイカせて-第1話

今をときめく声優たちの性遊生活を描く。

作家名:ステファニー
文字数:約2980文字(第1話)
管理番号:k105

クリスマスの渋谷スクランブル交差点。原宿側から渋谷駅に向かって待ち構える大群の中に、一際異様ないでたちをした女性がいた。夜だというのに大きなサングラスと不織布マスクで顔を覆い、つばの広い帽子を深く被り、地面につきそうな黒い長いコートで全身を隠している。職務質問をされてもおかしくない身なりだと言えよう。

彼女の名は花宮リラ。職業は声優。年齢は23歳。今をときめくアニメ『愛ライブ』の主人公を演じる売れっ子声優だ。
今晩もクリスマスライブだった。代々木第一体育館に満杯の客を入れて、めいっぱい歌って踊ってきた。

それでも若いリラはバテない。今宵、二つ目の目的地に向かって、人混みを掻き分け、歩を進めた。
信号が青に変わる。それとともにわんさと湧いた人々が各々の進行方向へと行進する。
小柄なリラは対向から来るおじさんをかわしながら、マークシティを目指す。

キラキラと輝くイルミネーションが美しい渋谷駅前。クリスマスイブということもあり、人手は一層、増している。ワイワイとおしゃべりをしている学生グループ。洗練された服装で颯爽と歩く女子会の一団。言葉少なに腕を組んだ若いカップル。

セクシーランジェリーショップ01

皆、一年で一番特別なこの夜を、何晩待ち続けたことだろうか。
そんな中の一人にリラもいる。つい数年前なら、お洒落を普通にしてクリスマスの街中を歩いていた。しかし今やスター。お忍びでないと、遊びにも行かれない。
声優といえど顔割れしないのは過去の話。最近ではグラビアやタレント活動も並行するのが常識だ。

だから、スクープ誌の記者に追われることも当然にある。売れっ子声優にもなれば、スキャンダルは写真週刊誌のトップを飾り、大きな話題となる。熱愛発覚報道が出たり、結婚発表をした後に、人気に陰りが出た声優も少なくない。そのため声優たちはその他芸能人たちと同様、恋愛事情を伏せることに必死だ。

スターの代償ってこういうことなんだ。
リラはしみじみ実感した。つい数年前まで当たり前に渋谷で友達とお茶をできていたけれども、つい数十分前までライブの舞台に立っていたのもまた事実なのだ。さらに言えば、文屋に追われるような身分になれたからこそ、こんな高級ホテルの敷居を跨げるのだ。

渋谷駅に直結した高級ホテルの22階でエレベーターを降りる。フカフカした絨毯を弾むように歩いて、リラはお目当ての部屋を探した。左手の一番奥がそこだった。
コンコン

ノックをするとドアがわずかに開いた。リラはその隙間に体をするりと入れ、すぐに閉めた。覗き穴から廊下の様子を念の為、確認する。人っ子一人見当たらなかった。
リラはコートを脱ぎ、帽子とサングラスを外した。

————

四年前。
都内某所にて低予算ゲームソフトの制作が進行していた。タイトルは『バージンラブ』。テーマは恋愛シミュレーション。というのは表向きの話。つまるところがエロゲーである。

ストーリーはいかにもありきたり。全寮制の女子高校の寮父となった主人公の青年が、5人の寮生たちとさまざまなハプニングを共にしながら、やがて恋愛関係になっていき、プレーヤー(主人公)が選んだ女の子の処女をいただき、彼女が歌うエンディング曲が流れて終了である。

キャラたちの声優として集められたのは、まだ駆け出しの役者たちだった。声優にはいくつかの階級があり、属する級によってギャラが決められている。ところが、そのヒエラルキーから外れた者も中にはいる。大物が故に青天井な者と、下っ端(新人、俗にジュニアと呼ぶ)が故に底値な者とである。前者のもらいは詳細が不明だが、後者は明らかである。15000円なのだ。それがひとつの仕事に対する対価だ。そのため、通常はチョイ役として起用されるにすぎない。

ところが、だ。この作品はなにしろ低予算である。知名度のある役者など、キャスティングできるはずがない。出演者はオールジュニア、という条件のもとオーディションを行い、見事勝ち抜いた6人の男女が、出演に至った。

主演(といっても名前も顔も出てこないのだが)を張るのは相庭航大、21歳。養成所を出たてのジュニア1年生で、これが初の主演作だ。
脇を固める女の子たちを務めるのは、これまた無名の役者たちだった。
恋愛シミュレーションゲームにありがちなキャラカテゴライズされた女子5人を順に紹介する。以下CVとは演じる声優を指す。

楓(CV:黒川 恵)
水泳部エース。活発で勝ち気な性格。物事をはっきりと口するタイプ。主人公に対してはトゲトゲしく当たるが、時とともに心を開いていくようになる。ショートカットで小麦色の肌。手足が長くボーイッシュな雰囲気だが、バストは意外とある。

ゆら(CV:麻生 洋子)
おっとりのんびりした癒し系。マシュマロボディの持ち主であり、5人の中でもっともお色気ハプニングを披露する。

エレン(CV:藤田 瞳)
アメリカ人とのハーフ。金髪のロングストレートに青い目の長身美女。成績優秀でしっかり者。生徒会長も務める。

雪(CV:乃々 さくら)
色白ウェーブヘアの美少女。引っ込み思案で物静か。趣味は読書。繊細で傷つきやすい。

ルナ(CV:花宮 リラ)
お転婆のムードメーカーで甘えん坊なロリータ娘。ツインテールがトレードマーク。身長が低く、幼児体型。勉強が苦手。

上記メンバーは皆、声優としては駆け出しだが、別の業界での経験がある者もおり、実力はそれなりに兼ね備えているといえよう。この作品への出演を足がかりに、さらなる飛躍を遂げたい、と考える意欲的な役者たちであることは間違いなかった。

だが、そんな彼女たちの気持ちを悪用する大人はいるものである。総合監督(とはいえ、指揮官はこの人一人だが)の足立がそのいい例である。
あろうことか足立は、エンディングシーンを実演で撮りたいと言い出したのだ。

主演の相庭をはじめ、出演者たちから驚きの声が上がったのは言うまでもない。だが、各々のマネージメントサイドは了承済で契約を結んでいたらしい。すでに他の撮りは終わった後に言われたため、ここで降りるなど到底出来ない状態だ。

戸惑う相庭をよそに女性陣は早々に腹を括ったらしく、アフレコ順もすんなりと決めていた。5人を相手にする相庭は、いくら若いとはいえ、やはりハード過ぎるため、二日間に渡って収録は行われることになった。

————

セクシーコスプレ01

一日目午前。一人目の収録者は黒川恵だった。
恵は21歳で相庭と同級生。高校時代に養成所に通っており、すでにデビューして数年が経過していたが、いまだ大きな仕事を掴めず、ジュニア時代が続いていた。当然、本人も焦っており、なんとかして掴んだこのチャンスにかける意気込みは人一倍であった。

普段は数名で入るアフレコに、たった一人、しかもバスローブ一枚で床に座り相庭は恵を待った。
ガチャリとドアが開き、恵がアフレコに入ってきた。相庭の心臓が高鳴った。

恵は役の楓と似た雰囲気を持つ。小麦色の肌に、引き締まったボディが美しい、ショートカットでボーイッシュな女性だ。
たじろぐ相庭をよそに、恵は自信に満ち溢れた表情だ。相庭の前に立ちはだかると、ガバッと音を立てて巻いているバスタオルを開いた。

見事な乳房だった。まるで柿がそこに貼り付いているかのように上向きで美しい。
それだけではない。彫刻で彫られたかのようにくっきりとカーブを描いたウエストは、トップモデル並に鍛えられている。そして当然の如くピンと張ったヒップもこんもりと食欲をそそる。

(続く)

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